チランジア(エアプランツ・ティランジア)の水やり方法を基礎から解説!水やりの方法や季節ごとの頻度、水をあげる時間帯、種類による違いや水やりで失敗しないためのコツについても解説しています。
エアプランツも水やりが必要
空気中の水分だけで育つは×
霧吹きしたてのエアプランツ達
エアプランツ(チランジア、ティランジア)にも水やりが必要です。
エアプランツは水のいらない植物といわれることがありますが、正しくは土のいらない植物で、水やりは必要です。
またエアプランツは空気中の水分を吸収するから湿度の高いところに置いておけば、水やり不要とされることもありますが、こちらも正しくはありません。
エアプランツといえども、実は空気中から直接湿気を吸収することはできず、葉の表面に付いた水分から吸収します。原産地では霧が大量に発生したり雨が降ったり、夜露が発生したりすることで、葉や株全体が濡れてそれによって水分を吸収します。
そのため、霧吹きやシャワー、ジョウロなどでしっかり株全体を濡らして水分を与えてあげないといけないのですね。
どこで水を吸収する?
テクトラムのトリコーム
ティランジアは主に葉から水分を吸収します。もっと正確には葉にあるトリコーム(trichome)という微細な器官から水分を吸収します。トリコームと葉の細胞はつながっており、トリコームから葉の細胞へと水分が移動し、葉の内部に水を取り込むようになっています。
トリコームの形や量はティランジアの種類によってさまざまで、トリコームの多い白く見える種類ほど乾燥に強く、トリコームの少ない種類(緑葉種※下で解説、など)ほど頻繁な水やりが必要になるとされています。
トリコームの形は緑葉種のように小さいものから、お椀形のもの、テクトラムのように毛足の長いものまで色々な形があります。しかしどのような種類でも、葉が乾いている時はウイングと呼ばれる羽のような部分が立って白っぽくみえ、霧吹きなどで水をやると葉の表面に密着して株全体が緑色っぽくみえるようになります。
いつ水を吸収するのか
基本的には夜間に水を吸収します。
これはティランジアは夜に気孔を開き、夜間に水分を体内に取り込む植物のためです。普通の植物のように昼間に気孔を開いてしまうと蒸発量が多く、貴重な水分を逃してしまいがちです。水分が貴重な地域に生まれた植物の知恵なのですね。
原産地では夜間に大量の霧が発生したり、夜露がたまったりや降雨があるため、夜に水を吸収するのに適しています。
そのため日本でも、エアプランツへの水やりは気孔の開く夕方から夜にかけて行い、スプレー容器で霧吹きをかけるかホースやジョウロ、シャワーなどで株を濡らすようにします。※ただし冬のみ冷害を防ぐため、暖かい昼間に水やりをします。
水やりをしすぎるとどうなる?
それでは水をやりすぎるとどうなるのでしょうか?
これは置き場所がどこかによって異なります。
戸外であればホースやシャワーでジャブジャブ水をやっても乾いてしまい、水のやりすぎはそれほど問題になりません。ただ梅雨の間に雨に当てっぱなしにするような、2日以上株が湿っている状態にすれば腐ることもあります。
室内の場合、水やりのしすぎは腐りに直結します。室内ではどうしても無風状態になり、株の乾きが非常に遅くなります。洗濯物も外で干すのと部屋で干すのでは、乾き具合に大きな差が出ることをご存じと思います。
それと同じように、エアプランツも室内だと水のやりすぎにならないように、気をつけてよく乾かす工夫をしないと、腐ってしまう心配が大きくなります。
水やりの基本
色々な水やり方法がある
チランジアはいくつかの水やり方法があり、使い分ける必要があります。
詳しくは下で解説しますが、
- ミスティング(霧吹き、スプレー、葉水)
- ソーキング(水に数時間浸ける)
- ディッピング(水にごく短時間浸す)
- シャワー(ホースで直接かける)
があります。
これは置き場所(外か部屋か)、株の乾燥し具合、管理しているエアプランツの数などによって使い分けます。
外であれば乾燥が早いため、たくさんの水分を与えられるシャワーを行い、乾きづらい室内では霧吹きにして、輸入したて・購入したてなど極度に乾いてしまった場合はソーキングを行うなどが考えられます。※具体的なやり方は下で解説します。
種類(銀葉種、緑葉種)による違い
一般的にトリコームの多い銀葉種(見た目が白っぽい)は乾燥に強く水やりも少なくてすみます。逆にトリコームの少ない緑葉種(水をやらなくても緑色をしている)は乾燥に弱いため水やり回数が多めになります。
ただ銀葉種は全部同じ扱いというわけではなく、たとえばウスネオイデス(スパニッシュモス)のように比較的水を好むものもあれば、テクトラムのように極力水やりを好まない種類がある、など一口に銀葉種だから何日に1回がよい、とは言い切ることができません。
緑葉種も同様で、種類により差があるというのが実情です。
季節や置き場所で水やりは変わる
外に置くのと室内に置くのでは水やりの量がかなり変わりますが、季節によっても量や頻度はかなり異なります。
外栽培と室内栽培
この外栽培、室内栽培の違いは非常に大きく、全く同じ種類を育てているのでも、全く違う水のあげかたをしないといけません。
戸外は風がありとにかくよく乾きます。室内では水やり後に扇風機を回してやらないといけないほど、乾かすのに苦労します。外なら毎日シャワーをじゃぶじゃぶ与えてよい種類も、室内なら3日に1回霧吹きだけでよいということも普通にあります。
生育期と緩慢期
また、季節によって水やり頻度と量はかなり変わります。
生育期の夏を中心に15~30℃の春・夏・秋はたっぷり与えます。しかし10℃を切る冬が近づいてくると徐々に頻度を減らし、週3回以上あげていた水も、1週間に1回などとなり、5~10℃になれば月に1~2回程度と極端に減らしていきます。
生育期はチランジアは成長し、体も大きくなり代謝も活発なので水も多く必要とし、寒さで休眠する冬にかけてはほとんど株の動きもなくなる上に、冷害で枯れてしまうリスクもあるため、水やりはかなり減らさないといけません。
夜に水をあげるべき理由
夕方から夜にかけて水やりするべき理由は、ティランジアがもつ特徴(夜間に気孔を開き水分を補給する)のためです。
そしてもう一つ、夏は真昼に与えてしまうと、強い日差しで水が温まり、まるでお湯を与えたように煮えて枯れてしまうのを防ぐため、という別な理由もあります。
水を与えると、水が蒸発するときに気化熱としてティランジアから熱を奪い、株を冷やす効果もあります。
これは暑い季節にはよいのですが、秋・冬・春の寒い時期には逆効果になります。
エアプランツは寒さに弱い種類が多く、冬に夜間に水をやると株が気温より更に下がり、冷害を起こすことがあります。そのため10℃を切るような寒い時期は、夜間ではなく昼間の暖かい時間に水やりを行うようにします。
水やり後は水切りがとても大切
水切りしているブラキカウロス(緑葉種)
エアプランツは水やりが必要ですが、それと同じくらい重要なこととして、水やり後の「水切り」があります。
水切りとはスプレーなどをした後、余分な水分を落とすことで、特に室内栽培の時に重要になります。
室内栽培では、水やり後に葉の中央部分に水が溜まりがちで、いつまでも残ると生長点が腐る心配があります。俗に言う芯抜けの現象で、こうなると腐って枯れてしまいます。
そこで水をやった後は、エアプランツを逆さまにして網の上に置いたり、逆さまに吊したり、優しく振ったりして余った水分を落としてやります。特に湿気の多い梅雨の時から蒸し暑い夏にかけては、水やり後サーキュレーターや扇風機などを回してやることもあります。
毎日水やりするのは危険?
室内では外ほど株が乾燥しないため生育期でも毎日水やりするのは危険です。しかし戸外では毎日水やりをしないといけないケースがあります。
たとえば緑葉種は乾燥に弱いです。そのような種類は生育期ならむしろ毎日水やりが必要です。乾燥させて枯れてしまうのを避けないといけません。
一方銀葉種や乾燥に特に強い種類は、毎日の水やりは不要で、緑葉種のような要領でやっていると腐るリスクがあります。
毎日水をやるのやるかどうかは、株がしっかり乾いていて水を必要としているかをチェックしてあげることが大切です。※乾き具合の確認方法は下の方で解説しています。
銀葉種と緑葉種を楽に管理する方法
まず購入した株を銀葉種か緑葉種か調べます。次に葉の細い乾燥しやすい種類かチェックします。大まかに乾燥に強いグループのカゴと乾燥に弱いグループのカゴに分けて入れ、乾燥に強いグループのカゴは4日おきに水やり、弱いグループのカゴは3日おきに水やりなど、とすると管理が楽になります。
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水やりの種類
ミスティング(霧吹き・葉水)
キセログラフィカの霧吹き
ミスティング(霧吹き・葉水)は特に室内栽培で基本の水やり方法です。
といっても方法は簡単で、濡れても良い大きなプラスチックかごなどにエアプランツを置き、横、上、下から丁寧にくまなくスプレーします。適当なプラスチックかごがなければ、大きめの段ボール箱にゴミ袋をかぶせたものを受け皿にすると、床を濡らさなくて済みます。
裏側もくまなくスプレーします
エアプランツは銀葉種を中心に水に濡れると緑色に色が変わるので、白いままの所がなくなるよう、くまなく吹きかけます。ポタポタ雫が垂れるほどしっかり濡らしたら、やさしく振って余分な水を切りましょう。
後は逆さに吊すか、網棚などに置いて5時間以内に白さが戻る程度がちょうど良いです。もし乾かないようであれば、サーキュレーターや扇風機を回しましょう。
基本的に長時間湿っているほど、水分を吸収する時間が確保でき、体重も増えますが、前夜霧吹きして翌朝まで残っているようであれば、長時間濡らしすぎていると判断したほうがよいでしょう。
葉の中心に水が溜まりやすい種類は、中心部だけ霧吹きで水をかけるのを控えるというのも一つの方法です
ウスネオイデスのミスティング例 | ||
---|---|---|
1日目 | 2日目 | 3日目 |
16.6g | 17.7g | 18.1g |
ミスティングで注意したいのが、一口にスプレー容器といっても商品によって出る水分量が異なる点です。たくさん水滴が出るいわゆる500ml程度の大きめの霧吹きや、細かい霧が出る100ml程度の小型のスプレーなど差があります。たとえば霧が出るスプレーでは毎日霧吹きが必要でも、大きめの水滴が出るスプレーなら3日に1回でよいこともあります。
※このページでは水やり後に大きな水たまりができる500ml程度の霧吹きを想定しています。
なお、戸外で栽培するチランジアは霧吹きでは水不足になりがちなので、ホースでシャワーするなどもっとたっぷり水を与えられる方法を検討します。
ソーキング
ソーキングは、乾かしすぎてしまった株に大量の水を吸わせるための水やり方法です。
店頭に長く置かれカサカサに乾いてしまった株や、輸入直後の軽くなってしまった株などのリカバリー時に役立ちます。ミスティングのように常時行うものではなく、あくまで緊急用のやり方です。
方法はエアプランツがすっぽり浸かる大きないれものに水を張り、そこに30分~6時間程度浸します。
時間は乾燥具合により調節しますが、12時間は超えないようにします。水に浸している間は呼吸ができなくなるので、長く浸したままにしていると窒息して枯れてしまうことがあります。
浸したら水揚げし、逆さまに吊すか金網などに逆さまに置いて水切りをします。
ソーキングしないほうがよい種類
ソーキングはしないほうがよい種類があります。具体的にはテクトラム(テクトルム)はソーキングはNGで、トリコームがはげたり退化してしまうため、霧吹きで水やりするのが一般的のようです。
水の温度
ソーキングでは水に浸すわけですが、ここで注意したい点が水の温度です。冬に冷たい真水でソーキングすると寒さで枯れたり傷んだりします。できれば冬はソーキングは避けたいですが、どうしても必要な場合は、植物用ヒーターマットの上にソーキング容器を置いて加温し、水温を20℃程度に保つようにしたいものです。
ソーキングの実験結果
鍋にぬるま湯を張り、保温マットに置いた上で1日1時間ほどずつ合計3日間ソーキングしました。
ベルゲリのソーキング例 | ||
---|---|---|
1日目 | 2日目 | 3日目 |
7.2g | 8.0g | 8.9g |
まだまだハリシーの外側の葉はカールしています。(水分が足りていないです)
ハリシーのソーキング例 | ||
---|---|---|
1日目 | 2日目 | 3日目 |
32.1g | 33.2g | 34.2g |
ディッピング
ディッピングはソーキングのごく短時間バージョンで、水を軽くくぐらせる水やり方法です。
乾燥が強い株にミスティングよりしっかり水を与えたい場合や、エアプランツの数が多すぎて霧吹きでは追いつかない場合などに有効です。
方法は水を張った容器にエアプランツを浸してすぐに水揚げし、逆さまに吊すか金網などに逆さまに置いて水切りをします。
シャワー
シャワーは戸外でエアプランツを栽培するときに行われる水やり方法です。
ホースの口にシャワーヘッドを取り付け、エアプランツ達にそのまま水をかけます。一度に大量の水を与えられるほか、霧吹きの手間を省けるのでたくさんの株を管理しているときに手軽な方法です。
株元に水を蓄えるタイプのタンク型のティランジアや、壺型の種類には水が溜まりますが、外では簡単に乾いてしまうので、いちいち株を逆さまにしたり水切りしたりする手間が省けるとされています。
室内栽培での水やり方法と頻度
具体的なやり方とタイミング(時間帯)
室内栽培では、ミスティングで主に水やりを行います。
- 春と秋(3月頃、4月、5月頃と9月~10月頃)は、銀葉種は週に2~3回、緑葉種は週3回~毎日行います。
- 夏・梅雨時(6月、7月、8月頃)は、銀葉種は週に2~3回、緑葉種は週3回~毎日行います。夏は水切りを徹底し、濡れたままの状態で日差しにあてないようにします。
- 冬(10月から11月、12月、1月、2月、3月から4月まで)は銀葉種は週に1回程度、緑葉種は週1~2回程度行います。10℃以下では週1回以下、5℃以下では水やりは避けてください。
例外的にパレアセア、テクトラムなどかなり乾燥に強い種類は銀葉種の回数を更に減らします。
※これはあくまでも目安であり、地域や株の大きさ、状態などで様子を見ながら調節してください。
※ソーキングは通常の水やりで水分が保てているのであれば、無理に行わなくてOKです。
外栽培での水やり方法と頻度
具体的なやり方とタイミング(時間帯)
外栽培では、シャワー・ジョウロで主に水やりを行います。
- 春と秋(3月頃、4月、5月頃と9月~10月頃)は、銀葉種は週に2~3回、緑葉種は週3回以上~毎日行います。雨に当てていれば水やりはする必要がありません。
- 夏・梅雨時(6月、7月、8月頃)は、銀葉種は週に2~3回、緑葉種は週3回以上~毎日行います。梅雨時は長い日数雨に当てないようにします。
- 冬(10月から11月、12月、1月、2月、3月から4月まで)は銀葉種は週に1回程度、緑葉種は週1~2回程度行います。秋雨が続く時は軒下などに退避します。
テクトラムなどかなり乾燥に強い種類は銀葉種の回数を更に減らし、雨ざらしの戸外栽培はしないようにします。
※これはあくまでも目安であり、地域や株の大きさ、状態などで様子を見ながら調節してください。
株の乾き具合を確かめる方法
水やりの量や頻度は株の乾き具合をみながらとありますが、初心者のうちはどのぐらいあげたらよいか見当が付かなくて困ってしまいます。重さは目には見えず、また1グラムの増減は手で持ってみて判断するのは難しいです。
その場合、毎日エアプランツの重さを量って記録を付け、軽くなってきたら水やりをするという方法で、株の乾き具合を確かめることができます。(0.1g単位で量れる量りがおすすめです)
何もずっと毎日重さを量り続ける必要はありません。おおまかな頻度を掴めてきたら、時々重さを量って極端に増えていないかあるいは減っていないか、チェックするとよいですね。
着生は水やりのコツを掴めてからに
そのためには、最初からバークチップのような着生材に着生させずに、そのまま直置きして、純粋な株の重さが量れるようにしておいたほうがよいと思います。
季節が変わると必要な水分も増減するので、そうしたらまた頻回に重さを量って水やりの量・頻度を調節するとよいと思います。
ちょっと面倒ですが、マメな管理をすることで自分の環境下での自分なりのタイミングが掴めて、水やりのしすぎや乾燥のさせすぎでダメにしてしまうリスクを減らせると思います。
水やりで失敗する原因と注意点
以下の3点に気をつければ、水のやりすぎで失敗するリスクを減らすことができます。
①長く濡れたままにしない
長く株を濡れたままにしないようにしましょう。
水をやると株が緑色になるため、表面の色をみながら5~6時間程度ですっかり元の白い色に戻っているかチェックしましょう。夜与えた水が翌朝まで残っているのは、明らかに水のやり過ぎか通風不足です。
室内で乾きづらい場合、サーキュレーターや扇風機の風が遠回しに当てて空気が動くようにすると早く乾きます。ただある程度は水に濡れた状態でないと水分を吸収する時間がないので、その辺りは細かな調節が必要になります。
②葉の中央に水を溜めない
室内では葉の中央に水を溜めないようにしましょう。
戸外なら自然に乾くので問題ないですが、室内では葉の中央に溜まった水が乾燥しづらくそこから腐ることがあるので、逆さまにしてしっかり水を切れるようにします。
③水の溜まらない所に置く
チランジアを置く台は水の溜まらない所に置きましょう。
簡易ビニール温室の網に乗せる、底にたくさん穴の空いたカゴに入れる、針金で吊す、ハンギンググッズで吊すなど、床や棚などにべたっと置かないようにします。