エアプランツ(チランジア)は育て方や環境が合わないと枯れたり元気がなくなってしまいます。このページでは枯れる原因や、状態別に原因や対策について解説しています。
目次
チランジアが元気ない・おかしい時の原因
チランジアは空気中の水を吸うので水をやらなくても枯れない、あるいは手間がかからず丈夫な植物といわれることがありますが、むしろ園芸が初めてな方にとっては扱いがやや難しい種類です。
そこでよくあるエアプランツを枯らす原因とその予防方法を紹介します。
芯が抜けてバラバラに
バラバラになったジュンシフォリア
エアプランツはある日突然バラバラになって元の姿の影もなくなってしまうことがあります。
これは一般に「芯が抜ける」といわれる現象で、チランジアの株元の芯が腐ることで、葉を束ねる力がなくなり分解されてしまう状態です。こうなると、もうリカバリーすることはできず残念ながらそのまま腐っていきます。
写真のジュンシフォリアは購入時から調子が悪く全く水を吸収せず、体重が日に日に減っていっていました。なんとか水を吸わせようとソーキングを繰り返した所、ある日触っただけで突然バラバラになってしまいました。
ジュンシフォリアの芯
よく観察すると株元の葉の色が茶色に変色しています。芯は黒~茶色に変色しており、回復できない腐りを表していました。
このようにエアプランツは株元の葉の密に生えている所に水が溜まりやすく、ここが腐りやすいので、水やり後はしっかり乾かすことが大切になります。また、冬の冷たい冷水でのソーキングのしすぎは直接枯れにつながりますので、注意が必要です。
根元が黒~茶色になる
葉先から枯れ込むのは水分不足、乾燥などが原因で湿度や水やり回数などを調節することで改善できますが、株元から黒~茶色になってくるのは、芯が腐ってきている可能性があります。
芯が腐りかかってくると、先ほどのように突然バラバラになる可能性が高いです。
といってもティランジアの特に緑葉種(トリコームが少なく緑っぽい見た目をしている)は元々株元が黒ずんでいることもあるため、黒っぽくなっているからといって即、アウトということはありません。
触るとやわらかい
株元が黒っぽく茶色に変色しているもので、健康な株との見分け方の一つになるのが、株のやわらかさです。そっと変色した部分を押してみて、ぎゅっと硬く詰まっていれば、問題無いことが多いです。
問題は柔らかい場合です。ブヨブヨとして表面にシワがよっているようであれば、内部で腐りが始まっている可能性があります。
その場合は、水を与えず、ミニ扇風機などを回すか、日陰でよく風の通る所に置いて何日間か様子をみます。
茶色や黒の斑点ができる
葉に茶色から黒っぽい色の斑点が出たらいくつかの原因が考えられます。
傷み・折れ
まず考えられるのが、輸送過程や管理上で起こる痛みや葉の折れです。
エアプランツを通販で購入した場合、第四種郵便や宅配便などで配達されますが、緩衝材を入れていてもどうしても箱の中で動き、葉に傷が付いたり折れたりしてしまいがちです。
そのような折れたり傷んだりした跡はちぎれない限りすぐには見た目では分かりませんが、数日かけて茶色や黒っぽい色に変色していきます。また完全に折れた場合は、その先が茶色く枯れます。
購入時にすぐに写真を撮り、傷みが出てきたときに写真を見比べる方法が考えられます。
日焼け
次に考えられるのが葉焼け、日焼けです。
強い日光に当てたり、室内から急に外に出したりすると、葉がヤケドしてしまうことがあります。一般に緑葉種は銀葉種より日光に弱いので、遮光を強めにし、春に外に出す場合もだんだん外に置く時間を延ばすなど、ゆっくり環境に慣らしていきます。
カビ
黒い点々のようなものが現れ、かび臭い場合は、カビが発生している可能性が高いので、その葉を切り捨てるか切り捨てられない部分に出ている場合は綿棒などでこすり落とすようにします。
株が赤くなる
株が赤くなるのは、開花時期に株が発色する現象である可能性が高いです。
種類により、開花時期になっても発色しないものもありますが、イオナンタやカピタータなど身近な色々な種類が開花時期に赤色に染まります。
その他に強い光に当てると葉先が赤っぽくなる種類があります。
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エアプランツ(ティランジア)の枯れる原因と対策
水のやり過ぎ(腐れ)
まず一番に考えられるのが水やり(霧吹き=ミスティング、ソーキング)のしすぎによる腐れです。
エアプランツは水が不要といわれた時期がありましたが、現在その反省から水が必要と認識され、水やりをちゃんとする方が増えました。
ところが、まだ乾燥しないうちに水をやってしまう、室内なのに外栽培と同じ要領で水をやってしまう、ソーキングをしすぎるなどで過湿になり腐らせてしまうことが、残念ながら増えています。
しかし水やりは本来生育期では、週3回以上、場合によっては毎日でも行う必要があるものです。それなのになぜ水やりのしすぎが起こるのでしょうか?
それは株が乾いたか判断を誤ってしまうためです。冬は休眠期なのでたくさんの水は必要としません。また冷たい水を吹きかけるだけで株にダメージを与えることもあります。
生育期でも室内の無風の環境では、戸外の栽培と同じにはできません。戸外ではジャブジャブとホースで水を与えても風ですぐに乾いてしまいますが、室内でそれをやったら到底乾ききりません。
エアプランツの水やりにまだ慣れていないうちは、毎日エアプランツの重さを量りで量り、記録を取って株が乾いているかチェックするとよいでしょう。この際、量りは小数点(0.1g単位)で量れるものがよいです。
通風不足(蒸れ)
過湿(水やりのしすぎ)と並んで枯れる原因になるのが、通風不足による蒸れによる枯れです。
室内で栽培している場合、ほぼ無風の状態になります。自生地では常に風が吹く環境のため、無風で栽培すると蒸れてしまいます。また特に夏場に室内で栽培している時、水やり後しっかり風を通さないといつまでも湿っている状態となり、蒸れてしまいます。
過湿と無風と蒸れはセットになっていると考えた方がよいでしょう。
なお、エアプランツ以外の多肉植物(エケベリアやメセン、アガベ、サボテンなど)も夏に閉めきった室内に1ヶ月も置けば、蒸れて白いカビが生えたり腐ってブヨブヨ~ドロっとなったりする可能性が高いです。
水不足(乾燥)
水不足もエアプランツを枯らしてしまう原因の一つです。
水不足になるとティランジアは平たかった葉をVの字のように丸めます。さらに乾燥が激しくなるとさらに内側にカールして棒のようになってしまい、元々の種類と分からないぐらいクルクルになってしまいます。
乾燥させすぎたベルゲリ
ソーキングで葉を開いたベルゲリ
更に乾燥状態を続けると、葉の艶が失われ、カラカラになり緑っぽい茶色のミイラのようになってしまいます。
ただもともと葉がVの字の形をしている種類もあるので、必ず全ての種類がVの字になったからといって、水分が足りないことを表している訳ではありません。
判別方法は、図鑑などを見て、ティランジアのプロがお手本として育てている写真を見ることが考えられます。
またこれは葉の縦方向の状態ですが、横方向にも葉をカールさせる種類があります。
代表はストレプトフィラです。ストレプトフィラは水分が適切だと葉をピンと張りますが、乾燥させるとくるっと株元に丸まり、更に乾燥させると、葉がクルクルに丸まってしまいます。
適度に水を与えている場合のストレプトフィラ(Instagramより引用させていただいています)
乾燥させすぎたストレプトフィラ(Instagramより引用させていただいています)
ただ、外側の葉(株元の古い葉)が徐々に枯れていくのは正常な新陳代謝の過程で、枯れる以上の速度で新葉が増えていれば、問題ありません。
日光不足(徒長)
エアプランツはそれほど強い光を好む種類ではありませんが、日光不足になる場合もあります。
全く日光の入らないリビングにインテリアとして飾ったり、冬の間長期間窓のない室内に置いたり、植物育成ライトの光が弱すぎたり、などで日光不足になり徒長することがあります。
5~8月頃の一番日差しの強い時期、戸外では多くの種類で半日陰に置くか、50%程度の遮光ネットを張って直接日光が当たらないようにしますが、冬は室内の窓辺でレース越しに日を当てるようにします。
全く窓がない部屋や、窓辺が確保できない場合は、植物育成ライトを使えば日光を補えます。植物は可視光線をエネルギー源とするので、太陽光のように紫外線や赤外線が入っていないLEDのもので全く問題ありません。
日差しの強すぎ(葉焼け)
日差しの強すぎは葉焼け(やけど)の原因になり、重症だと枯れてしまうことがあります。
エアプランツは葉が銀色のトリコームが多い銀葉種と、トリコームが少なく緑色にみえる緑葉種があります。トリコームの多い銀葉種は強い日差しに比較的強く、緑葉種は弱いとされています。
葉焼けの症状は葉の色の変色です。日が強すぎると茶色いシミのようなものができます。そのままにしているとシミの中心から枯れてきます。
また、シミができずに全体が変色してしまうこともあります。
エアプランツ全身が葉焼けしてしまった場合、光合成や呼吸ができなくなり枯れてしまう危険があります。真夏の直射日光に当てれば即アウトになることも多いですので、そのような状況にならないように、遮光ネットは外れないようにしっかりと張って、横や正面からの光にも気をつけるようにしてください。
一度葉焼けをすると、なってしまった部分は元に戻すことができません。そのため予防が大切です。遮光下であっても太陽光に当てるときは段階的に慣れさせ、また緑色の葉の種類は白・銀色の種類より弱めの光を当ててやるようにします。
冬の寒さ
日本の冬の寒さはチランジアにとって生死を分ける大敵となります。
日本には四季があり、一年を通して温度変化が激しいです。それに対し、ティランジアは環境の変化に弱い植物です。
特にティランジアは寒さに弱いものが多く、耐寒温度が10℃以上のもの、5℃以上のもの、3℃以下を耐えられるものなど、種類によって異なります。
全体的に高山性(高い山=冷涼)の種類は寒さに比較的強いですが、0℃を耐えられる種類はそう多くはありません。多くは5℃~10℃で室内に取り込み室温で保温する必要があります。
過度な寒さに当てると葉が黄色くなります。更に寒さが強いとぐしゃっとやわらかくなります。こうなると復活は厳しいです。
そうならないためには、暖地で10月下旬に10℃を切り始めたら室内へ入れ、3月一杯まで室内で育てる必要があります。寒冷地では10月初旬~4月中旬など、1年の半分以上を室内で過ごさせなければならない場合があります。
その場合は、併せて日照不足対策も必要になりますね。
夏の暑さ
夏の暑さも株を枯らせる原因となります。
ティランジアの原生地であるブラジル、アルゼンチン、エクアドル、ペルーなどというとものすごく暑い印象を受けますが、実際には涼しい所(30℃以下)が基本で、日本の夏の40℃近い暑さは苦手とします。
耐暑性は種類によってさまざまで、高山性のもの(自生地が概ね1,000m以上ある高標高地域のもの)は寒さに強いですが、暑さには弱い特徴を持ちます。
熱帯雨林に着生するものや低標高の地域に生えるものは、比較的夏の暑さに強い特徴があります。
外栽培するのであれば、温度を下げる方法はないためできる限りの対策となりますが、できるだけ半日陰で風と通しがよく涼しい所(コンクリートの壁の前や地面に直置き、西日の当たるところなどを避ける)に置きます。
室内に避難させられるなら、エアコンをかけてヒトにとって快適な温度(26℃程度以下)に下げられるので、暑さでダメにする心配は減らせます。
枯らさない方法は?
チランジアの栽培には光・水・風の3セットが適切であることが必須となります。
外栽培では
外栽培では光に関しては生育期の夏には半日陰に置き、秋と春には遮光を若干弱めることで対応できます。
風に関しては外栽培では全く気にしないでOKです。外栽培で難しいのは水やりの量で、適切な水を与えられるかがポイントになります。
緑葉種では、戸外では水不足になり乾燥で弱らせがちです。そのためジョウロやホースなどで頻度を多めに。葉の細い種類も同じです。銀葉種は乾燥に強いためそれほど神経を使うことなく育てられるはずです。
室内栽培では
室内栽培では光に関しては5,000ルクス程度の照度を確保できるところに置くか、植物育成ライトを使用します。室内では明るすぎることは珍しく、それよりは暗すぎ(照度の確保)のほうが問題になります。
風に関しては最大の懸念事項で、いかに風通しを確保できるかが問題となります。冬室内が15℃もない場合は比較的安全ですが、夏暑くて無風だと蒸れから腐りがちです。サーキュレータや扇風機を直接当たらない程度に回します。
水に関しては、戸外より乾燥が弱いのでジョウロやホースなどで大量には与えず、霧吹きでミスティングを行います。夏は種類に応じて週に1~3回程度ですが、冬場など休眠中は少なめにします。
風通しの重要性
室内では特に風通しを軽視しないでください。
植物には常に風が当たる環境が当たり前で、それがないと健全に生育することができません。観葉植物やエアプランツなどがしばしば枯れるのはこの「風通し」が欠けているためです。
それはミスティングした水分が適度に蒸発させるためというのはもちろんですが、もっと根源的な理由があります。
それは植物が生きていく上で欠かせない「蒸散」と「呼吸」に空気の流れが必要だからです。植物は蒸散によって植物体内から水分を出し、呼吸によって酸素・二酸化炭素を出し入れしています。
蒸散・呼吸ができないことは、ヒトに例えればトイレよりも小さい気密性の高いプラスチックケースに閉じ込められることと同じです。
普通の植物にあるような根がなく根腐れの心配もなく、土がいらないため土にカビが生えることもないエアプランツにも風が必要なのは、植物体自体が風通しを必要とするからです。