エアプランツ(チランジア、ティランジア)は根を生やしてバークチップやコルクなどに着生させて育てることもできます。そうすればもっとみずみずしく元気に育って子株もたくさんでてきます。どんな素材に着生できるのか、その方法やコツについて解説します。
目次
着生させる理由とメリット
エアプランツは名前の通り、根を生やさず鉢植えする必要がない植物です。
しかし自生地では本来根を生やし、樹木や岩石などにしがみついて生活しています。根は体を支えてさらに大きく育つ以外に、他の植物と同じように水分や養分を吸収する力もあります。
そのため本当は根を出させて何かに着生させてあげるほうが自然なのですね。着生させるメリットを以下にまとめてみました。
- より自然な姿で育てられる
- 葉からだけでなく根からも水分や養分を吸収できる
- 生育が良くなりたくさんの子吹きも期待できる
- チランジアを直接手で触る機会を減らせる
適した着生材(素材)と特徴
エアプランツを着生させられる素材は複数あります。
いずれも自然のものでそれぞれ特徴があり、メリットやデメリットもあります。またインテリア向き(見た目重視)の素材や着生が目的であるなど、使い分けていきます。
バークチップ
バークチップはエアプランツの着生にごく一般的な着生材の一つです。
バークチップは赤松や黒松など松の木の樹皮を砕いたもので、角に丸みがあり、割れや欠けが少なく棘ができにくく害虫が湧きにくいという特徴があります。また朽ちにくく比較的長持ちする素材です。電気ドリル(キリ)で穴を空けるなど加工もしやすく見た目もインテリア性に富み、軽いので吊り下げることの多いエアプランツに最適です。
サイズは1cmから10cm程度までさまざまで、小さなものはエアプランツを鉢植えするときに土の代わりに使ったり、多肉植物の化粧砂代わりに使ったりします。大きなものはエアプランツの着生材として利用できます。
サイズはSS、S、M、Lなどがあり、価格帯は1Lあたり100円~300円程度、エアプランツを着生させるのに使う大きめサイズは1枚当たり200~300円程度で購入できます。
SSやMは小さすぎるため、着生に使うのにはL(6cm)以上のものが適しています。Amazonや楽天市場などではLサイズがせいぜいでエアプランツに適したものがなかなか見つからないのですが、メルカリでは着生に適した大サイズ(8~10cmなど)のものが取り扱われています。
バージンコルク
バージンコルク(コルク)もエアプランツの着生によく使われる素材です。
コルクとは、コルク樫などの樹皮を砕いたもので、やわらかく弾力があり凹凸があるため根が張りやすく、また水分を適度に保持する効果があります。水やりの時水に濡れてもカビたり腐ったりしにくく、また軽いことからエアプランツの着生に最適な着生材です。
私たちに馴染みのある、ワインの栓などに使われるコルクも同じコルク樫から取れるものなのですが、着生で使われるバージンコルクは樹皮の採取の1回目だけに採れるごつごつした凹凸のあるタイプをさします。
バージンコルクは通常大きな板のような状態で入手します。それを必要な大きさに切り取って利用します。(元々手頃なサイズに割ってある商品もあります。)
価格はかなり大まかですが、Mサイズ(200g程度でサイズは20~30cm程度)で1,200円ほど、Lサイズ(500g程度でサイズは35~50cm)で3,000円ほどで、細かく割ってあるコルク小片(5~10cm程度)が複数入ったもので1,200円程度です。
アマゾン、楽天市場などで購入できるほか、園芸店やホームセンターなど実店舗やメルカリなどフリマアプリでも取り扱いがあります。
ヘゴ板
ヘゴ板はかつてエアプランツの着生によく使われていた着生材です。
ヘゴ板とは、木生シダの出す気根(空中発根し地面に向かって根を下ろしていく)を適したサイズにカットしたものです。根が複雑に絡み合った素材であることから、適度な保水性と通気の良さと活着のさせやすさを併せ持ち、チランジアの他シダやランの着生に最適な素材です。また長期間使い続けても朽ちにくいというメリットもあります。
デメリットは質の善し悪しによって崩れやすいことがある点です。高品質のヘゴ板は密度が高く崩れにくいですが、安価なものは穴を空けたり着生させたりする時に崩れたり切れたりしてしまいます。特に吊るす針金を通した部分に強い力がかかり、割れてしまうケースがあります。
ところでこのヘゴ板ですが、現在ではヘゴ科の植物はワシントン条約(CITES II)に掲載されているため、輸入ができなくなり手に入りにくくなっています。※ワシントン条約とは絶滅危惧種の動植物の国際取引に関する条約です。
そのため他の着生材よりかなり高価です。20×10cm程度で2,000円台、30cm×20cm程度のサイズで7,000円になるなど、希少な素材になっています。今後はさらに入手しにくくなっていくと予想されるため、コルクやバークチップで代替することになっていくと思われます。
流木
流木もチランジアの着生によく使われる素材の一つです。
流木は川や海に流れ込んだ樹木の一部が海岸や川岸に打ち上げられたもののことです。通常エアプランツの着生では、拾い上げた流木をクリーニング、煮沸、あく抜きをし完全に乾かしてから利用します。
流木のメリットはエアプランツとの相性の良さ、そしてインテリア性です。流木のくぼみの上にエアプランツを乗せてそのままでも楽しめ、水苔などと一緒に固定すれば根を伸ばし着生もします。
デメリットとして重さと下処理の必要性が挙げられます。まず流木はコルクやバークチップと異なり水に沈められるほど重いものがあります。重いと画びょうや虫ピンなどで壁にかけると落ちる心配があります。
また流木は拾ってそのまま使うことはできず下処理が必要です。流木にはアクや汚れがあるためあく抜き、煮沸消毒、そしてしっかり洗う必要があります。あく抜きをせずに使うと水やりの時アクが出て、エアプランツを傷めてしまうことがあります。
ただエアプランツ用に売られているものはあらかじめ下処理されていて手軽なものもあるので、面倒な方はすぐ使えるタイプを選べば良いですね。
価格は実にさまざまです。5cm程度の小さなものから100cmを超える巨木まで、形もユニークなものや直線的なもの、自立するものなど色々あります。自分の気に入った形でチランジアを着生させやすい形のものを購入するとよいでしょう。
カクタススケルトン(サボテンの骨)
カクタススケルトンは穴が多数空いているため、チランジアの着生に適しています。
カクタススケルトンはサボテンの骨ともいわれるもので、柱サボテンが枯死し中が空洞になり残った骨格部分のことです。エアプランツの着生だけでなく、爬虫類の飼育やアクアリウムなど用途は多岐にわたります。
エアプランツの着生にとっては適度な保水性があり、穴が多数空いており通気性が良く、軽くて吊すのにも向いているというメリットがあります。デメリットとしてはワシントン条約で規制されており(CITES II掲載)輸入ができなくなり価格が高騰している点が挙げられます。
また販売店も限られており、楽天市場やアマゾンなどでの流通は少なく、ヤフオクやメルカリなどフリマなどでしか入手できなくなっています。価格は長さ15cm程度・太さ5cm程度で1,500~2,000円程度です。
その他の着生材
上で挙げたもののほか、石、有孔ボード、ワインコルク、100均素材などに着生させる方もいます。
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着生方法
基本的にはチランジアはバークチップやバージンコルク、流木に着生させていくことになります。次は着生の方法です。
必要なものの詳細
- いずれかの着生材
- 電気ドリル(キリ)
- ワイヤー(針金、テグス、など)
- ホッチキス
- ペンチ、ニッパ
着生材について
着生させたいエアプランツのサイズや姿、ディスプレイ方法に応じて、コルク・バークチップ・流木などを用意してください。吊り下げるならコルクやバークチップ、置くタイプにするのであれば流木やバークチップなどを選びます。
道具について
穴を空けるためキリか電気ドリルを準備してください。コルク・バークチップ・ヘゴ・カクタススケルトンはやわらかくキリがあれば簡単に加工でき、電気ドリルは不要です。流木はかなり硬いのでキリだと疲れます。電気ドリルがあったほうが楽です。
またホッチキス、ペンチ、ニッパなどはご家庭にあるものをお使いください。ない場合はアマゾンなどで購入できます。
チランジアを固定するワイヤーは着生させたいチランジアの種類や大きさ、根の有無、着生材などにより準備してください。
ワイヤーは素材により加工のしやすさが異なります。
①金属製のもの
通常は錆びにくいアルミのものを使います。
ステンレスは強度があり重いエアプランツを固定するのによい反面、太いと曲げたりカットしたりが大変になります。銅や鉄は錆びやすく水やりが必須なエアプランツに向いていません。
アルミはやわらかく曲げやすく軽いので小~中サイズのエアプランツに最適です。サイズ(太さ)はチランジアの重さによって1mm~2mm程度のものを使います。カラーはブロンズやシルバーのものが目立ちにくいです。
②非金属のもの
ナイロンテグスやシリコンゴムワイヤー、麻紐など金属製ではない糸を使う場合もあります。
ナイロン製テグスは伸び縮みせず、細いにもかかわらず強度があります。
シリコンゴムワイヤーはポリウレタンでできており、伸縮性があります。ここでシリコンゴムワイヤーは2つのタイプがあり、ポリウレタンの糸を何本も束ねたオペロンゴムと、1本のポリウレタンからできているアンタロンゴムがあります。オペロンゴムは透明でなく白い糸で、アンタロンゴムは透明性のある糸です。
糸(テグスやシリコンゴム)はあまり細いものだとエアプランツに食い込むので、0.2mm~8mm程度のものを使うようにしましょう。
麻の紐を使う方もいますが、これは長い間かけて水に濡れることで徐々に黒ずんでちぎれることがあります。エアプランツが自分の根で活着してくれればそれでよいのですが、いつまでも根を張らない場合は劣化で紐の交換が必要になる可能性があります。
なお着生材やワイヤーなど素材の購入場所は一番下で紹介しています。
おおまかな流れ
流木、バークチップの場合はまず最初にアクを抜く下処理をする必要があります。
まずバークチップ・流木を水に浸けます。その後茶色い水が出なくなるまで1時間程度熱湯で茹でます。煮た後は金網などに並べて3日~1週間ほどじっくりと乾燥させます。
次に着生材に穴を空けます。吊すタイプなら吊るす用の穴を1つ、チランジアを固定するためのワイヤーを通す穴を2つ空けます。
吊すタイプはまずハンガー部分を作ります。アルミワイヤーを写真のような形に加工して、飾りたい位置に合わせてワイヤーを切ります。
根が出ていないものはワイヤーで本体の株元を固定します。写真のようにワイヤーをUの字に曲げて着生させたいチランジアを通します。
枯れた根が残っている場合は、それで本体を固定することもできます。その場合、大きめの穴を一つ空けてそこに枯れた根を通し、着生材の裏側でホッチキスを使って留めます。
活着に必須の生きた白い根が出ている場合は、着生材の方向に向かせるように、マスキングテープでゆるく誘導してあげましょう。
素材別・タイプ別の着生方法(別ページ)
書いていたら長くなってしまったため、着生材別にページを分割しました。使いたい着生材を選んでお読みください。(置くタイプとぶら下げるタイプの2つを実践しています。)
失敗する原因と成功のコツ
着生は必ず成功するとは限りません。なかなか根を出してくれなかったり、出ても枯れてしまったりなど。そこで失敗しやすい原因とその対策方法を紹介します。
失敗の原因
白い根が出ていない
エアプランツは買ったときから茶色い根が出ているものがありますが、これは枯れており生きている根ではありません。少しずつ先端から切っていくと茶色く空洞になっているのが確認できるかと思います。
着生させるためには白い生きたやわらかい根が出ることが必須です。
どうすれば白いやわらかな根が出てくるのか、これはティランジアを元気に生育させることで出せます。概ね4~10月の生育期にしっかり水をあげて日光・ライトに当てていれば新しい根は出てきやすいです。
また白い根はいつまでも元気な訳ではなく、そのまま放置していると茶色い硬い根に変わってきます。こうなると着生する力はないため、白い根が出てきたらすぐに着生に取りかかりましょう。
強く巻き付けてしまった
動かないようにするため、金属のワイヤーなどで強く巻き付けていると根が出てこない場合があります。
かといいグラグラではせっかく出た根が折れたりずれたりして活着しません。特に置くタイプを作る時、エアプランツのおしりを強く着生材に押しつけすぎないようにすることが大切です。場合によってはエアプランツと着生材の間に水苔を噛ませて作るケースもあります。
安静にしていなかった
グラグラする状態で固定したり、着生させたあとあちこちへ移動させて安静にしていないとせっかく根が出ても着生してくれない場合があります。
着生後はなるべく動かさないようにすることが大切です。またシリコンゴムワイヤーで固定する場合、次第に糸がのびてグラグラになってくることがあるので注意が必要です。
根が出にくい状態で着生させた
根を出す部分である株元に枯れた葉が重なって付いていると、根が出づらいことがあります。着生処理前に枯れた葉や古い根などはトリミングして、根を出やすくさせてあげることも大切です。
避けるべき着生方法
ホットボンド(グルーガン)で固定する
ホットボンドは溶かしたプラスチック樹脂で素材をくっつける道具で、エアプランツの固定に利用されることもあります。
しかしこのホットボンドは溶かした熱い樹脂をエアプランツに付けなければいけないので、たとえ数十秒でも熱でエアプランツを傷める心配があります。下の方の枯れた葉なら安全かもしれませんが、べったり結合させると根が出る隙間がなくなってしまいますし、通気の悪さから蒸れるおそれもあります。
できれば針金やテグスなどでくっつけるほうが安全です。
接着剤(木工ボンドなど)を使う
ボンドを使って接着するケースもあるようです。
特にワイヤーや糸で固定しにくい形状や場所に付けるとき効果を発揮することがあります。しかし根の出る部位に塗ってしまったり、通気が悪くなったりなどのデメリットもあります。やむを得ない場合は、瞬間接着剤より木工ボンドを使うとよいでしょう。
着生させやすいチランジア
基本的にほぼ全部のチランジアが根を出します。根を出さないのはウスネオイデスだけといってもよいほどです。
しかしチランジアは種類によって根の出させやすさが異なります。そこでうまく着生させるには根の出やすい種類を選ぶとよいですね。
根を出しやすい種類
イオナンタ
フックシー
根を出しにくい種類
キセログラフィカ
テクトラム
まだ情報が充分でなく申し訳ないのですが、分かり次第追記していきたいと思います。
着生させた後の管理方法
着生させた後は今まで通り水をやり、日光に当てて育てます。通気も大切ですが、強風が吹くと着生材との間がずれることがあるので、しっかり活着する(根付く)まではやさしい風にあてるようにしましょう。
着生材は霧吹きするとき水に濡れても何ら問題はありませんが、いつまでも湿っていると着生させている部分に湿気が溜まってしまうので、水やり後は特に風通しに注意しましょう。
着生に使う材料や道具の売っている所
バークチップ |
メルカリ |
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バージンコルク |
Amazon |
サボテンの骨 |
メルカリ |
流木 |
Amazon |
ヘゴ板 |
メルカリ |
アルミワイヤー 1.5mm・ブロンズ |
Amazon |
アルミワイヤー 2.0mm・ブロンズ |
Amazon |
ナイロンテグス 0.28mm |
Amazon |
キリ |
Amazon |
ハンド電気ドリル | |
ペンチ、ニッパ |
Amazon |
できる限り通販ショップで購入できる商品を紹介させていただくことがよいと思いましたが、現実にはメルカリでないと入手できないものもあります。その場合はメルカリでの購入を検討せざるを得ない場合があります。
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