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正しく使えば安全
農薬は危険だと思われがちですが、農薬取締法に則りまた国の試験をクリアしており、きちんとラベルを読んで正しく使えば安全に使うことができます。逆に適当に使ってしまうと自分の体や周囲の人、ペットや生態系、果ては散布する植物にも悪影響を及ぼす危険があります。しっかり確認して責任ある使い方をするよう心がけましょう。
ラベルの確認方法
まずラベルを確認します。ラベルには植物名と対象の病害虫、希釈倍率、使用回数、使用時期などが書いてあります。
ここでは「ベンレート水和剤」を例にみてみると
「パンジー」の「根腐れ病」には「2,000倍」を「育苗期」に成分「ベノミル」として「2回まで」「灌注」すれば良いことが分かります。※灌注はじょうろで水がわりに与えること
薬剤名 | ベンレート水和剤 |
---|---|
対象作物 | パンジー |
適用病害虫 | 根腐れ病 |
希釈倍率 | 2,000倍 |
使用液量 | セルトレイ |
使用時期 | 育苗期 |
総使用回数 | 2回 |
使用方法 | 灌注 |
実際の散布方法
用具を揃える
農薬用マスク | ゴム手袋 | 防護服 |
保護めがね | 帽子 | |
薬剤 | ペットボトル | スプレー |
農薬の種類によって異なるが、散布液を浴びたり吸い込んだりするのを防ぐため
- 防塵マスク(農薬用マスク)
- ゴム手袋
- 帽子
- 防護メガネ
- 防護服(ない場合は長袖長ズボン)
などを用意します。
その他必要なもの
- 散布する薬剤
- スプレー容器
- スポイト
- かき混ぜ棒
- 空きペットボトル
- スプレー
散布液の希釈倍率
必要な薬の量 | 水500ml | 水1L | 水2L |
---|---|---|---|
500倍 | 1.0ml | 2.0ml | 4.0ml |
700倍 | 0.71ml | 1.43ml | 2.86ml |
800倍 | 0.62ml | 1.25ml | 2.5ml |
1,000倍 | 0.5ml | 1.0ml | 2.0ml |
1,500倍 | 0.33ml | 0.75ml | 1.33ml |
2,000倍 | 0.25ml | 0.5ml | 1.0ml |
3,000倍 | 0.17ml | 0.33ml | 0.67ml |
4,000倍 | 0.13ml | 0.25ml | 0.5ml |
※液剤の場合はml(ミリリットル)で、粉剤の場合はg(グラム)で読み替えてください。
※計算式 作りたい水の量÷倍率=必要な薬の量
水と展着剤を混ぜる
水1Lを用意する | 展着剤を入れる | 水は茶色になる |
水和剤(粉末のようになっているもの)は展着剤(葉に薬剤がくっつきやすくするもの)をいれてかき混ぜます。所定の水に所定の濃度の展着剤を入れます。
展着剤は薬剤を病害虫や葉につきやすくし、したたり落ちにくく付着してから広がりやすいようにする効果があります。さらに液の中で薬剤を均一にする効果もあり、薬剤の効果を安定させやすくすることから、水溶剤や水和剤を使う時は必ず入れるようにしましょう。
展着剤の添加量は商品名「ダイン」の場合、薬がくっつきやすい植物では1Lあたり0.05~0.1ml、果物や野菜などではじきやすいものでは、1Lあたり0.1~0.3mlを入れます。
薬剤を作る
(例)ベンレート水和剤 | 封を切る | 混ぜ合わせると白濁する |
500mlのスプレー容器に詰め替える |
水で薄めるタイプの薬剤は対象の作物の倍率を守るようにします。薄すぎても濃すぎても薬害が起きたり効果がなかったりするので、自己判断で濃度を調節しないようにします。また作った液はあまっても排水溝や水路などには流せず、また保存もきかないので必要な量だけ作って使いきるようにします。
水和剤・水溶剤の入れる順番は水⇒展着剤⇒入れたい薬剤
乳剤・液剤の場合は水⇒(展着剤)⇒入れたい薬剤
混合剤(複数の薬剤を混ぜる)の場合
害虫と病気の被害が出ているなど、殺菌剤と殺虫剤を混ぜたいことがあります。その場合は、それぞれの添付文書に混ぜて良い薬剤が書いてあるので、それを確認し、またそれぞれの薬剤が植物に適用しているか確認することで混ぜることができます。
ここでは
- ベンレート水和剤(殺菌)
- サプロール乳剤(殺菌)
- ベニカ水溶剤(殺虫)
の3つを混合します。
単独の場合は
- 水和剤・水溶剤の入れる順番は、水⇒展着剤⇒入れたい薬剤
- 乳剤・液剤の場合は水⇒(展着剤)⇒入れたい薬剤
だったのですが、粉剤と液剤を入れるときは、
水⇒展着剤⇒乳剤・液剤⇒水和剤・水溶剤の順に入れます。つまり
- 水⇒展着剤⇒液剤⇒粉剤
となります。
ここではベンレート水和剤とベニカ水溶剤は粉で、サプロール乳剤が液体の形をしているため
- 水⇒展着剤⇒サプロール乳剤⇒ベンレート水和剤かベニカ水溶剤
となります。
この3剤を入れる | 展着剤を入れた水 | サプロールを入れる |
ベンレートを入れる | ベニカを入れる | 混ぜ合わせる |
散布する前の注意点
日取りや時間帯など
体調が悪い日や疲れている日は散布を避けましょう。
また雨が降りそうな日はせっかく薬剤をまいても雨で流れてしまうので、散布は避けます。風が強い日は自分や周囲に散布液がふりかかってしまうので散布しないほうが安全です。高温の時間(昼間)は薬害が発生しやすく植物へのダメージが大きいので朝夕の比較的涼しい時間に散布するようにしましょう。
周囲への影響を抑える
子供やペットが薬剤を誤飲するのを防ぐのはもちろんのこと、散布液をまくときには周囲の人やペット、赤ちゃん、子供などに悪影響を及ぼさないようにします。マンションなどでは、周囲に飛散しにくい粒剤を選んだり、庭で散布する場合は隣近所に散布液が飛ばないようにしたり、洗濯物をほしたりしないようにします。自宅の窓は閉め、必要であれば周囲の家の方にも窓を農薬を散布する旨を伝え窓を閉めて貰うなど配慮を心がけるようにしましょう。
また乳剤やエアゾール剤は自動車や壁などに付着すると塗装はげや変色を起こす可能性があるので、カバーをかけるなどして被害を防ぎます。
実際の散布
実際の散布では、風向きを考えて自分に降りかからないようにし、前から後ろに後退していく感じで散布します。散布を始めたらてきぱきと進め、途中でご飯を食べたり水を飲んだりしないようにします。
また浸透移行性の粒剤の場合は根から吸収されて、植物全体に行き渡りますが、背の高い植物には不向きで、1メートル以内の植物にまくようにします。まく時は株元から少し離れたところにむらなく、また多すぎないように注意します。
散布後の処理
散布が終わったら、うがいと手洗いを行い眼を水で洗うようにしましょう。すみやかに洋服を脱ぎ、他の洗濯物とは別に洗います。使った器具は水で3回以上洗い、洗浄で出た水は排水溝ではなく土の上に捨てるようにします。
余った場合
万一散布液が余ってしまったら、土に捨てることになります。土に浅く穴を掘り、そこに流し込み土を埋め戻します。農薬は土壌の微生物によって分解されます。