夏越し対策とは?
夏越し対策は日本の真夏の猛暑を乗り切るための対策です。多肉植物にとって湿気が多い環境は苦手ですが、更に日本では酷暑になり枯らさずに秋を迎えるにはコツが必要になってきています。特に40℃を超える日が出てくる最近の災害級の暑さで、地域によっては冬越しより大変な事態になっています。
夏越し方法は概ね関東地域に合わせて書かれていますが、関東以南の関西や九州、沖縄ではより注意して育てないと種類によっては全滅することもあります。また関東以北の寒冷地では、現在でも冬越し対策も重要です。
夏型なら対策は要らない?
多肉植物には夏に生育する夏型がありますが、夏型なら夏越し対策はいらないのでしょうか?
実は夏型にも対策が必要です。というのは夏型とはいっても多肉植物の中で比較的暖かい温度(20~35℃程度)でよく生育するグループなのですが、直射日光が当たれば葉がやけどしてしまうこともあるためです。直射日光で40℃以上などはとても耐えられません。
では近年の夏の気温はどれくらいになるのでしょうか?
まず温度は2つの種類があり、正確には日陰で測ったものを気温といいます(百葉箱のイメージ)。もう1種類が直射日光下で測ったもので温度といいます。近年の夏は40℃を超えることがありますが、これは実は日陰を測った気温で、日なたの温度を測ると50℃、60℃にもなることがあります。
遮光下では40℃程度でぎりぎり大丈夫でも直射日光が当たる所に置いていると、多肉植物は50℃~60℃にも熱されてしまいます。これではいくら多肉植物でも葉ヤケしたり、溶けて枯れてしまうはずです。そのため夏はもはや夏越し対策は重要課題といえます。
明るい日陰(半日陰)で管理する
関東以南では、夏に多くの種類は遮光下(半日陰か明るい日陰)で管理する必要がある。
それでは具体的に日光を遮る(遮光)する方法を見ていきましょう。
明るい日陰と半日陰、そして50%遮光は同じような日光の量で、明るいものの直射日光の当たらないところをさします。木陰や軒下、建物の陰などがそれにあたります。また朝だけ日が当たるところも可能です。一方、人工的に明るい日陰を用意するためには以下のような方法があります。
遮光ネットを使う
一番簡単なのが遮光ネットをかけることです。遮光ネットは30%、50%、70%など任意の遮光率で日光を遮るシートで、白色(ホワイト)、銀色(シルバー)、黒(ブラック)などがあります。遮りたい多肉植物の種類に応じて遮光率違いのシートを使い分けるようにします。置く場所は多肉植物からやや離れた上側と前側(光の差し込み方向、南側)、または横側(西側)で、多肉植物の上には直接かけないようにします。遮光ネットは太陽光を受けてかなり加熱するため、それが多肉植物にかかると熱くなってしまうためです。
使う上での注意点は、シートをかけると風通しが悪くなってしまうことです。夏の暑い時期は特に通風を確保するのが大事なので、風が当たるとシートがゆれるぐらいがよいでしょう。
50%×2枚
50%のシート1枚なら遮光率は50%で2枚なら100%かと思いますが、実は以下のようになります。
100%×0.5=50%
50%+50%×0.5=75%
70%シート2枚であれば
100%×0.7=70%
70%+30%×0.7=91%
となります。
無遮光の環境に50%のシートをかけると遮光率50% ※1になります。残った日なたである50%に更に50%をかけると25% ※2になります。※1と※2をを足したものが遮光率になります。
遮光シートを使う以外の方法では、新聞紙で日よけをしたり、ビニール温室の上にエアコンの暑さ対策に販売されている室外機カバーをつける、といった方法が考えられます。
置く場所別の注意点
夏場は西向きの白壁の前に鉢を並べたり、遮光されていない南向きの所、室外機の前などに置くことは避けましょう。またできるだけ雨が当たらない所に置くのが望ましいです。
夏は非常に温度が上がってしまうことがあるので、ビニール温室の前部分は全開にしておき、熱気がこもらないようにしましょう。また風通しの面からもできるだけ開けられるところは開けておきます。もちろん冷房設備のある業務用のビニール温室なら問題ありません。簡易ビニール温室は面積が小さいほど温度変化が激しくなる点に注意しましょう。
床がコンクリートの場合が多いですが、コンクリートの上に直接置くと鉢が高温になりやすいので台などに乗せたほうがよいでしょう。狭いですが室外機の前には置かないようにする。10階以上の高層マンションの場合は、思いのほか強風が強いので簡易ビニール温室を設置するなら強風対策も忘れずにしましょう。
風通しがよく明るい日差しの入る窓辺などに置きましょう。暑いですが冷房の風を直接当てることは避け、扇風機で人工的に風を送ったりします。直射日光が当たる所は非常に高温になることがあるので、夏の間は置くのは避けるようにします。
水やりのタイミングと風通し
夏の高温下での水やりは難しい作業で、間違うと1回の水やりで全滅させてしまうことがあります。
コツはできるだけ涼しい時にさらっと少量を与えることです。具体的には、比較的涼しい日の夕方に鉢の表面から少し下までを濡らすくらいの量が安全です。このときばかりは鉢底から流れ出るまで与えたらやりすぎで、何割かの鉢がだめになってしまいます。断水の指示が出ている種類は、水をやらないで我慢します。
水やり以外でも蒸れ対策はいくつかあります。まず風通しを良くすることと長時間土が湿った状態が続かないようにすることが先決です。空気がよどんでいると蒸れに弱い種類がカビや根腐れを起こして枯れてしまいます。そうでない種類も暑い時期に長期間土が湿っていると、同じように急にしおれてシナシナになってしまうことがあります。そうすると回復することはできません。
温度計・湿度計を設置しよう
多肉植物を育てるのには、温度計や湿度計を設置しておく必要があります。人間の感覚は時によって変わってあまり当てにならないので、初めての方はもちろんのこと、初心者でない方も温度計や湿度計はしっかり設置しておきましょう。
また温度計測ロガー(自動で温度などを測り記録してくれる温度湿度計)があると日中の最高気温や夜の気温なども測れて便利です。