多肉植物にも肥料が必要です。肥料と活力剤の違いや、多肉植物によい肥料を選ぶポイント、買ってはいけない肥料を解説し、色々な市販品の一覧を紹介、多肉植物へのおすすめの肥料、活力剤も紹介しています。
目次
肥料と活力剤は異なる
実は肥料と活力剤は成分も役割も異なります。それは肥料は主に植物の体を構成するのに必須の栄養素(元素)であるのに対し、活力剤は必要であるものの微量でよいものという点です。
とはいっても肥料と活力剤は完全に別々にものなのではなく、活力剤成分入りの肥料があったり、ごく薄めた肥料成分が入っている活力剤があったりと、実際の製品ではよく確かめないと分かりづらいものもあります。
一つ大切なことは、植物を育てるには「肥料」と明記されているものを必ず与えないといけないということです。活力剤はいわばサプリメントのようなもので、肥料の代わりにはなりませんので、多肉植物を育てる上でも、必ず「肥料」と書いてあるものを与えるようにしましょう。
肥料の役割
肥料とは、植物が生きていくのに欠かせない要素のうち大量に必要とされる成分のことです。植物が健全に育つためには、15種類の元素が必要とされていますが、必要な量に応じて、多い順に3要素、中量容素、微量要素に分類されています。
肥料と呼ばれているのはこのうち三要素(チッソ、リン酸、カリ)と中量容素(カルシウム、マグネシウム、イオウ)です。
つまりチッソ、リン酸、カリとカルシウム、マグネシウム、イオウの含まれるもの(一定濃度以上含まれているもの)が肥料ということができます。
三要素の役割
窒素(チッソ)は「葉肥」とも言われ、葉や茎を成長させ養分の吸収を助けるなど、植物の基本的な生育を担当します。
リン酸は花肥、実肥などといわれ、花や実のつきをよくする他、葉や茎、根の伸びを助ける作用があります。
カリ(カリウム)は根肥ともいわれ、株を強くする、寒さ暑さへの抵抗力をつけるなどの効果があります。
中量要素の役割
カルシウムは株を強くし根や新芽の生育を促す効果、マグネシウムにはリン酸の吸収や体内への移動を助ける効果、葉の色を良くする効果、硫黄には根の発達を助ける効果や植物体内の調整をする効果があります。
活力剤の役割
活力剤とは、植物が生きていくのに欠かせない要素であるものの微量でよいものを補うものです。先のように植物には15種類の元素が必要ですが、そのうち微量要素と呼ばれる成分を補います。
具体的には、マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、塩素を微量要素といいます。
しかし活力剤はこの7つ全ての元素が入っている訳ではなく、ラベルなどを確認して、どの微量要素が入っているか確認することが大切です。また肥料成分が入っている活力剤もありますが、その量は肥料取締法という法律で規制されている濃度以下のため、肥料代わりに与えることはできません。
そのため、活力剤とは成分・濃度が異なり、活力剤をいくら与えても、肥料代わりにはならないことが分かります。
多肉植物に良い肥料を選ぶポイント
多肉専用である必要はなし
まず、肥料は多肉植物専用のものである必要はありません。肥料の成分は多肉植物も普通の植物も共通で、成分さえちゃんと入っていれば、普通の植物や花、野菜用のものを流用しても構いません。
買ってはいけないもの
買ってはいけない肥料もあります。
- 肥料取締法という法律のラベル表示に従っていないもの
- どのような成分が入っているか分からないもの
- カビが生えたり水がついたりしている肥料
このような肥料はきちんと成分が入っていなくて効果がなかったり、あるいは強すぎたり、成分に偏りがあったりして安心して多肉植物に使うことができません。
また有機肥料などでは保存状態が悪いお店で販売されているもの(カビが生えたり水がついたりしているもの)は購入しないようにしましょう。
以下は正しく記載されているラベルの例です。
N-P-Kの割合や量
肥料成分であるチッソ、リン酸、カリはそれぞれN-P-Kといい、配合量を6-10-5などと表します。この例では、チッソが6、リン酸が10、カリが5入っているということが分かります。
多肉植物では、チッソ分があまり多すぎなければ、それほど種類を選びません。
N-P-Kが同率で配合されているN-P-K = 8-8-8でもよいですし、リン酸が多めのN-P-K = 6-40-6、N-P-K = 6-10-5のものもよく使われます。
ただあまり成分の濃いものは肥料焼けなどの副作用を起こしやすく使いづらいので避けたほうがよいでしょう。またN-P-K = 42-0-0のような1種類しか成分が入っていない肥料も使いづらいので、避けたほうがよいです。
肥料の用途
肥料には、土に混ぜて植え込んだり(元肥)、既に植えている多肉植物に追加で与える「追肥」の用途があります。
またすぐに効果が現れる即効性の肥料や、徐々に効果が出る緩効性肥料、しばらくたってから現れる遅効性肥料など種類があります。
またタイプも液体で薄めて使うものや、固形のものでパラパラと土に撒くもの、ひとつずつ置くものなど様々な形態があります。
液体肥料はすぐに効果があらわれますが、固形のものは水やりで溶けて土に染みこむことで効果を発揮します。ここで多肉植物は水やり回数が少ないという特徴があります。そのため、固形の肥料は通常の植物より効果が出るのが遅い点(効く時間も長くなる)に注意が必要です。
そこで元肥には緩効性の化成肥料、追肥には液体肥料または小粒の緩効性肥料を選ぶ場合が多いです。
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色々な市販の肥料
市販している様々な肥料の成分の割合と特徴を表にまとめてみました。
市販肥料 | N-P-K比率 | 特徴 |
---|---|---|
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6-10-5 |
【液肥・速効性・化成肥料】 チッソ、リン酸、カリ以外に植物に必要な15種類の要素を配合しており、活力剤で補う成分も入っている。6-10-5とそれほど強すぎず使いやすい。 レビュー Amazon |
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8-10-5 |
【液体・即効性・化成肥料】 ハイポネックス原液よりチッソが多めになっている。その他微量要素・ビタミンも配合している。 レビュー Amazon |
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6-40-6 |
【顆粒・緩効性・化成肥料】 チッソ、リン酸、カリ以外にマグネシウムを配合している。リン酸の配合が多め。 レビュー Amazon |
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6.5-6-19 |
【液体・速効性・化成肥料】 カリ・カルシウムが多く含まれており、株を丈夫にし日照不足や暑さ・寒さへの抵抗性を高める。 レビュー Amazon |
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5-6-5 |
【固形・緩効性・化成肥料】 チッソ、リン酸、カリ以外に微量要素も配合。 Amazon |
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8-8-8 |
【固形・速効性・化成肥料】 N-P-Kが8-8-8とバランスが取れた基本の配合で、元肥だけでなく追肥にも使える。 |
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6-6-6 |
【固形・緩効と緩効性・化成と有機肥料】 有機肥料と化成肥料を併せた6-6-6と基本バランスの取れた肥料。有機成分にはアミノ酸、核酸、ビタミンが含まれている。 |
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4-4-2 |
【固形・遅効性・有機肥料】 ミネラルやビタミンが豊富で効き目が穏やかな有機肥料。配合量も4-4-2と少なめに抑えてある。 |
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7-5-6 |
【固形・緩効速効・有機化成肥料】 すぐ効く化成肥料に、ゆっくり効く有機肥料を50%配合した有機化成肥料。 |
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10-10-10 |
【固形・緩効性・化成肥料】 N-P-Kが10-10-10とバランスのよい配合でやや濃いめの配合。IB肥料と呼ばれるチッソがゆっくり効くタイプ。 |
色々な市販の活力剤
市販の活力剤 | 主成分 | 特徴 |
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コリン、フルボ酸、アミノ酸、各種ミネラル | 中容量素であるカルシウムや鉄・銅・亜鉛・モリブデンなど微量要素を含み植物の持っている生長力を引き出す。 レビュー Amazon |
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二価鉄イオン | 根の生長に焦点を当てた活力剤で、挿し木や植え替えなどの時に使う。 レビュー Amazon |
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スギ・ヒノキ・マツ・オオバコのエキス | 土壌から肥料を吸収する力を強める、土壌微生物を活性化させる。 Amazon |
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薄めた肥料 | 観葉植物用の活力剤で、N-P-K=8-5-3の肥料を700倍に薄めたもの。 |
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カルシウムなどのミネラル分 | カルシウムで株を強く、ミネラル分で葉の色をよくして活力を与える。 |
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マグネシウム・カルシウム・鉄など | サボテンや多肉植物の花付きをよくして色鮮やかに育てる。 |
おすすめの肥料と活力剤
ハイポネックス原液
特徴
ハイポネックス原液は養分が水に溶け出しているので速効性があり、すぐ効きますが、反面流れやすい(失われるのも速い)という特徴があります。
また希釈式なので水の量を調節すれば、濃度を自由に変更することができます。N-P-Kが6-10-5と同割合ではありませんが、少なめで割と均一になっているので、強すぎずに使いやすいです。
一方液肥のため元肥には向いていません。あくまで追肥として既に植えてある多肉植物に1回の水やり代わりに与える方法で使います。
成分比率
肥料分のメインである窒素・リン酸・カリが、N-P-K=6-10-5の割合で入っています。またそれ以外に15種類の微量要素が配合されているため多肉植物に不足しがちな成分が全部摂れるようになっています。。
使い方
多肉植物は薄めでよいため、通常より薄めの2,000倍~1,000倍を与えることが多いです。例えば、5L分の希釈液を作るのであれば、水を5リットル+ハイポネックス原液をフタの2分の1から、4分の1程度の量になります。
与え方
その多肉植物の生育期の2ヶ月間に、回数は種類により月に1~3回、1回分の水やりの代わりに与えます。ここで注意点があります。それは量は表面を濡らす程度ではなく、1回の水やりの代わりの量を与えることです。根に届くように鉢底から流れ出るまで与えましょう。
(例)春秋型の多肉植物に2,000倍を3~5月に月1~3回ずつ与える
マグアンプK 小粒
特徴
マグアンプK小粒は顆粒状でゆっくり効く緩効性タイプで、水をやるごとに次第に溶けて徐々に体内に吸収されていきます。
チッソ、リン酸、カリの3要素に加え、中量要素のマグネシウムを強化する配合になっています。
普通の植物の場合の水やりの頻度で2ヶ月間効くように調節されています。中粒と大粒の種類もありますがこちらはそれぞれ1年、2年の効果があるので多肉植物にはやや不向きです。
注意点
マグアンプKのような緩効性肥料の効く速さと期間は水やりの回数で決まるという点です。
毎日水をやる普通の植物は水やりごとに溶けて毎日吸収されていくので効きが早いです(これを基本に2ヶ月の効き目などと表示しています)。多肉植物は1週間に1回の水やりなど少ない回数なので、溶ける速度が遅くなり、効果が出るまで長い時間がかかり長続きもします。
成分の内訳
肥料分のメインである窒素・リン酸・カリが、N-P-K = 6-40-6の割合で入っています。プラス、中量要素であるマグネシウムが配合されています。リン酸が40とかなり多いですが、リン酸は多少多くても過剰症は現れにくく、また窒素肥料のやり過ぎのように徒長させる心配もありません。
使い方
ゆっくり効くので多肉植物の植え付け時に土に混ぜ込んでおきましょう。また追肥として使うこともでき、2ヶ月目以降に土の上にばらまいてもOKです。
(例)元肥として2.5号鉢(直径7.5cm)の土の量に3つまみ程度混ぜ込む
(例)追肥として2.5号鉢の表面に3つまみ程度ばらまく
メネデール
特徴
メネデールは二価鉄イオンを主成分とする植物の活力剤です。肥料ではなく鉄を補うサプリメントのようなものです。
発根を促進する効果があるとされており、多肉植物では挿し木、株分け、植え替えなど根を切る作業をした場合に使います。メネデールには茎の切り口に膜を形成したり、水分や養分の吸収を良くしたり、光合成を活発にする機能もあるとされます。
肥料ではないため、与える回数などに制限はなく、毎日水やり代わりに与えても問題ないとのことです。(以上公式サイトによる)
使い方
希釈して使うタイプで通常100倍(場合により50~200倍)に薄めて使います。1Lのメネデール水を作る場合、10cc(キャップ1杯)のメネデールが必要になります。この希釈液を植え替え後の多肉植物にかけたり、種まきの場合は種を一晩浸したりします。苗にかける場合は大さじ1杯など少量ではなく、普通の水やり代わりの量を与えます。
液体のため効果がなくなるのも早く、通常1週間に1回与えます。多肉植物の場合は休眠期は水を与えられないので、生育期に与えるとよいでしょう。
なお、農薬とは混ぜられません。また薄めた液は保存が利かないので、すぐに使い切ってください。
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