多肉植物によく使われる土にはどのような種類があるでしょうか?基本用土と改良用土について種類や性質を紹介します。
目次
土の種類は普通の植物と同じ
実は多肉植物の栽培で使われる土の種類は、普通の植物の土と何ら変わりません。メインとされる赤玉土や腐葉土、軽石などごく一般的なものです。
- 赤玉土
- 鹿沼土
- 軽石
- 腐葉土
など
馴染みのある土も多いのではないでしょうか?
配合が異なる
しかし一般の植物と異なる点があります。それは配合割合です。
多肉植物に使われる土は、普通の植物用より水はけがよく、保水性や保肥性が低く、通気性がよいという特徴があります。そのためには例えば軽石を増やしたり腐葉土を減らしたりなど…
詳しい多肉植物の土の配合については以下のページで紹介しています。
粒サイズが複数ある
また土には同じ種類の土でも粒サイズの違いがあります。洋服にはS・M・L・LLなどがあるように、土にも細かさによって分けて販売されています。
- 細粒
- 小粒
- 中粒
- 大粒
この中で多肉植物の培養土としてよく使われるのは細粒~中粒です。大粒の土は鉢底に敷いて鉢底石として使うことがあります。
基本用土に改良用土を加えて使う
植物の土を作る際は、基本用土をメインに、適宜改良用土(改良材)を加えて性質を調節していきます。
配合の詳細は以下のページで詳しく解説しています。
基本用土
基本用土は土の土台部分になるもので、全体に占める配合割合が多く重さがあります。赤玉土や軽石、日向土、鹿沼土、川砂などがこれに当たります。
赤玉土
赤玉土(あかだまつち) | |
---|---|
重さ | 重い(800g程度) |
酸度 | pH6程度(弱酸性) |
特徴 |
排水性 ★★★★ 保水性 ★★★★ 通気性 ★★★★ ※1 |
サイズ | 細粒・小粒・中粒・大粒 |
価格帯 | 2L 150円~ |
※1 小粒の場合の目安です。★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
赤玉土(あかだまつち)は多肉植物はもちろん、一般植物でもごくごく基本となりメインで使われる用土です。火山性の土で、関東ローム層の中層から取り出してサイズごとにふるいにかけたものです。排水性、保水性、通気性がよく、雑草の種や病原菌がほとんどない清潔な土です。ある程度の重さがあり植物を立たせる効果もあります。
成分にケイ酸、鉄、アルミを含み肥料分は含んでいません。またこの鉱物成分の作用で、肥料分のひとつである「リン酸」を掴んで離しにくいため、植物の根に届くようリン酸をしっかり補うことが大切です。
赤玉土には水やりを繰り返すと次第に粒が崩れてみじん(小麦粉のように粉々になった土)となりやすいというデメリットがあります。みじんになると排水性が低下し、通気性が悪くなります。
このデメリットをカバーするために通常より崩れにくい「焼き赤玉土」という商品もあります。これは600~900℃の高温で加熱して粒を崩れにくくしているものです。
サイズは細粒(極小粒)・小粒・中粒・大粒に分けられて売っていることが多いですが、小粒でも写真のように様々なサイズが混ざっている商品もあります。
鹿沼土
鹿沼土(かぬまつち) | |
---|---|
重さ | やや重い |
酸度 | pH4~5(弱酸性) |
特徴 |
排水性 ★★★★ 保水性 ★★★★ 通気性 ★★★ ※1 |
サイズ | 細粒・小粒・中粒・大粒 |
価格帯 | 2L 150円~ |
※1 小粒の場合の目安です。★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
鹿沼土も赤玉土と同様火山性の土で、関東ローム層の赤土の下にある層から産出する土です。正確には土というよりは軽石の仲間です。有機物や肥料分を含まず弱酸性を表します。通気性、保水性がよく、弱酸性を好む植物にも使えるといった特徴があり、多肉植物でもよく用いられています。
ケイ酸とアルミが豊富で、その他鉄、マグネシウム、カルシウム、マンガン等も含みます。赤玉土よりも酸性が強く、酸性の土を好む植物に利用されています。
デメリットは赤玉土と同じく、みじんが出やすいことです。赤玉土よりは崩れにくいといわれますが、実際に使ってみると経年劣化でかなりボロボロ崩れてきます。鹿沼土には粒を崩れにくくするために改良された「硬質鹿沼土」も販売されています。
鹿沼土は水に濡れると色が変わる特徴があります。そのため鉢底石や表土などに利用すると、鉢の下や表面から土の乾き具合を確かめやすく便利です。サイズは細粒・小粒・中粒・大粒に分けて販売されていることが多いです。
軽石
軽石(かるいし) | |
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重さ | やや軽い |
酸度 | pH5.5~6.5(弱酸性) |
特徴 |
排水性 ★★★★★ 保水性 ★ 通気性 ★★★★★ ※1 |
サイズ | 小粒・中粒・大粒 |
価格帯 | 2L 150円~ |
※1 小粒の場合の目安です。★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
火山性の砂礫(されき)で通気性や排水性がよいのが特徴です。火山ガスを含んだ溶岩が急速に冷えて気泡と共に硬化したもので、軽く水に浮く土です。多孔質で軽くまた強度があるため、水はけの悪い土に混ぜ込んで通気性・排水性を高めるのによく使われます。
保水性、保肥性は弱いため、多肉植物だけでなくサボテンや山野草の土としてもよく使われます。赤玉土や鹿沼土は使い続けるうちにみじん化してしまいますが、軽石は崩れにくいです。
主に小粒・中粒・大粒にわけて販売され、多肉植物では小粒のものが使われることが多いですが、大粒のものを鉢底石として利用することがあります。
日向土(ボラ土)
日向土(ひゅうがつち) | |
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重さ | 重い |
酸度 | pH5~6(弱酸性) |
特徴 |
排水性 ★★★★ 保水性 ★★ 通気性 ★★★★ ※1 |
サイズ | 小粒・中粒・大粒 |
価格帯 | 2L 220円~ |
※1 小粒の場合の目安です。★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
宮崎県の桜島・霧島山火山系から産出する石で軽石のひとつです。ボラ土とも呼ばれ「ボラ」は役に立たない・腑抜けなどの意味をもちます。
二酸化ケイ素、アルミを多く含み軽石と同様気泡が多く多孔質の形状で、通気性と排水性が強い特徴があります。またその分保肥性・保水性は低く、肥料や水をとどめておく力は弱いです。
多肉植物でも水はけ・通気性を改善するのによく用いられ、ある程度重みがあることから株のぐらつきを防ぐのにも用いられます。赤玉土と同じようにサイズは大粒、中粒、小粒に分けられて売っていることが多く、サイズが大きいものは鉢底石にもなります。
川砂
川砂(かわずな) | |
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重さ | かなり重い(1,600g程) |
酸度 | pH6.0~7.0(中性) |
特徴 |
排水性 ★★★★★ 保水性 ★ 通気性 ★★ ※1 |
サイズ | 細粒・小粒・中粒・大粒・無選別 |
価格帯 | 2L 150円~ |
※1 小粒の場合の目安です。★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
花崗岩などが細粒化し角が取れたもので、川底や河川敷に積もっている砂です。保水性と保肥性が弱いため、別途肥料を加える必要があります。川砂は重いのが欠点ですがこれは長所にもなり、軽すぎる土に適度な重みを持たせるのに役立ちます。
また保水性が少ないので多肉植物やサボテンだけでなく、山野草の土としても用いられています。以前は多肉植物によく使われていた土ですが、重すぎるため最近はあまり使われなくなってきました。
注意点は極細かい粒(みじん)が多いことです。他の土と異なり使う前に下処理(バケツなどに川砂を入れ水で2~3回洗い濁った水を捨てる)が必要です。
改良用土
改良用土は改良材ともいわれ、基本用土に混ぜ合わせて使い、植えたい植物に応じて保水性、排水性、通気性などを調節するのに使います。腐葉土、ピートモス、パーライト、バーミキュライト、くん炭、ゼオライトなどがあります。
腐葉土
腐葉土(ふようど) | |
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重さ | 軽い |
酸度 | pH6~7(弱酸性~中性) |
特徴 |
排水性 ★★★ 保水性 ★★★ 通気性 ★★★ ※3 |
サイズ | – |
価格帯 | 2L 150円~ |
※3 ★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
腐葉土は改良用土の一つで、広葉樹の落ち葉を熟成させたものです。通気性、保水性、保肥性を兼ね備えています。また植物に欠かせない微量要素も含んでいます。土の質を良くする効果もあり、土作りには欠かせない存在です。
ただ腐葉土自体は肥料分(チッソ・リン酸・カリ)をほとんど含まず、肥料としての効果はありません。ですが保肥性を高める効果があるため、与えた肥料をしっかり留めておいてくれます。
注意点はメーカーによって質の善し悪しがある点です。未熟な腐葉土は多肉植物の根を傷めるため避けましょう。よい腐葉土はしっかり成熟して葉の形などが確認できず、フカフカしてよい匂いがします。
袋の上からでも葉や茎などの形が分かる、落ち葉を集めたように見える、ニオイが強いなどの腐葉土は未熟な可能性が高いです。あまりにも安い腐葉土はその傾向が強いことが多いので、激安のものは避けた方が安全です。
ピートモス
ピートモス | |
---|---|
重さ | 軽い |
酸度 | 元々は酸性、pH調節済みのものもあり |
特徴 |
排水性 ★★★ 保水性 ★★★ 通気性 ★★★ ※3 |
サイズ | – |
価格帯 | 2L 150円~ |
※3 ★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
ピートモスは水ゴケが堆積し腐植化した泥炭を脱水、粉砕、選別したものです。水苔は湿地から採ったコケ植物を乾燥させたもので、水を良く含み保水性、保肥性が高い性質を持ちます。
ピートモスも通気性、保水性、保肥性が高く、有機酸を含むため元々は強い酸性の性質をもちますが、石灰を加えて中和し中性にしたpH調節済みの製品もあります。細かく無菌のため多肉植物の土の改良材としてもよく使われます。
腐葉土と似た性質ですが、異なる点として微量要素をほとんど含まず土壌改良の効果が薄いこと、酸性である点があげられます。そのため無調整のピートモスなら、基本用土の10%~20%以内にとどめておきます。
パーライト
パーライト | |
---|---|
重さ | 非常に軽い |
酸度 | pH7.5-8.5(弱アルカリ性) |
特徴 |
排水性 ★★★★★ 保水性 ★ 通気性 ★★★★★ ※3 |
サイズ | |
価格帯 | 2L 150円~ |
※3 ★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
ガラス質の火成岩である真珠岩・黒曜石を高温処理したもので、多孔質の構造を持ち内部に多数の気泡をもっています。空気をたくさん含み非常に軽く、また非常に排水性がよいのが特徴です。
似た改良材にバーミキュライトがありますが、バーミキュライトはパーライトより保水性が高いです。
パーライトは約1,000℃で加熱され無菌で衛生的な改良材です。そのため細粒のものはさし芽や種まきにも使用することができます。
パーライトは土作りなど作業時に微粒子が舞うので、吸い込まないようにマスクをしましょう。また目に有害なため、ゴーグルなどで目に入らないように注意しましょう。
バーミキュライト
バーミキュライト | |
---|---|
重さ | 非常に軽い |
酸度 | pH6-7(ほぼ中性) |
特徴 |
排水性 ★★ 保水性 ★★★ 通気性 ★★★ ※3 |
サイズ | |
価格帯 | 2L 170円~ |
※3 ★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
蛭石(ひる石)を800~1,000℃の高温で加熱処理し砕いて適切なサイズにしたもので、非常に軽く銀色~金色の層の構造をしています。多孔質の構造であることから保水性や保肥性、通気性もあり、ハンギング仕立てなど軽い土が必要な時によく使われます。
似た改良材にパーライトがありますが、使い分け方としてはパーライトは排水性・通気性がよくしたいとき、バーミキュライトは土を軽くしつつ、適度な保水性・保肥性も持たせない場合に用います。
高温で処理されており無菌で清潔な土のため、種まき用土、さし芽用土として使うこともあります。バーミキュライトは使い続けるうちに粉々になって通気性が悪くなる点に注意が必要です。
籾殻くん炭
籾殻くん炭(もみがらくんたん) | |
---|---|
重さ | 非常に軽い |
酸度 | pH8~10(強アルカリ性) |
特徴 |
排水性 ★★★★ 保水性 ★★★ 通気性 ★★★★ ※3 |
サイズ | |
価格帯 | 2L 220円~ |
※ ★が多いほど排水性が高い、保水性が強い、通気性が高いとなります。
籾殻くん炭はもみ殻を蒸し焼きにして炭化させたものです。非常に軽くさらさらしていて通気性、保水性、保温効果にすぐれています。土壌改良の効果も高く、多孔質の構造に微生物が住み着き、植物によい影響を与える、病気になりにくい土壌が作られます。
酸性のピートモスと逆でアルカリ性が強く、酸性に傾いた土を中和するのにも使われます。土作りの際は基本用土の10%以内に収めるようにします。
ゼオライト
ゼオライト | |
---|---|
重さ | やや重い |
酸度 | pH6-8(中性) |
特徴 |
排水性 - 保水性 - 通気性 - |
サイズ | |
価格帯 | 2L 330円~ |
ゼオライトは①根腐れ防止効果(水質浄化効果)、②防臭効果、③吸放湿・吸水の3つの効果があります。
多肉植物で利用する上では、この1番の水質浄化効果が特に重視されます。土に少量混ぜることで根腐れを防止し、高温多湿の時期の多肉植物の腐りを予防するのに効果的です。またハイドロカルチャー(水耕栽培)の水を清潔に保つのにもよく使われています。
ゼオライトは肥料分を掴んで離しにくいという作用を持つため、たくさん配合すると肥料の効きが悪くなってしまいます。そのため基本用土の5~10%以内にとどめておくようにしましょう。
どれを買い揃えるべき?
土はブレンドする派の方にとっても、全部の土を買い揃える必要はありません。
多肉植物の土を配合するのに最低限必要なのは以下の4つかと思います。(これは管理人の個人的な意見で、公式ではありません。)
- 赤玉土
- 軽石
- pH調節ずみピートモスか腐葉土
- パーライト
赤玉土はメインの成分になり、軽石は水はけ、通気性を改善するのに使います。またピートモスか腐葉土で水持ちを調節し、パーライトは土に空気を含ませ通気性を良くし、また土を軽くするのに最適です。
まず最初はこの4つを持っておくことで、エケベリア、サボテン、コーデックス、メセンなどに向いた性質の土を作ることができるのではないかと思います。またできれば細粒と小粒をもっていたほうが調節が利きます。
もちろん、鹿沼土、籾殻くん炭、バーミキュライト、ゼオライトなどもあればより細かい調節ができますが、いっぺんに揃えるのは大変なので、必要になった時適宜追加していくとよいと思います。