サボテンの最低越冬温度や耐寒性、そして地域ごとの冬越し対策と寒さ対策について解説しています。
目次
サボテンの耐寒性
サボテンは耐寒性がどのくらいあるのでしょうか?
実は意外と寒さに強いものが多く、他の多肉植物と比べるとやや寒さに弱い多肉植物と同じぐらいの強さです。多肉植物にはカランコエやコーデックスなど特に低温に弱いものがありますが、それらよりはサボテンの方が寒さに強いです。
とはいっても決して寒さに強い訳ではなく、多くは0~5℃以下が限界とされています。サボテンはアフリカや北米や南米など色々な地域に自生しているので、種類によって耐寒性が異なります。そのためサボテンと一口にいっても比較的強いものと弱いものがあります。そこでおおまかな種類による最低越冬温度を以下に解説しています。
ひとつ注意点があり、サボテンは属ごとに何度とは一概にいえず、同じ属のなかでも強いものと弱いものがあったりします。そのため参考程度の情報となります。
それぞれの属の耐寒温度
- エキノプシス属(-5℃)
- パロディア属(0℃)
- ツルビニカルプス属(0℃)
- コリファンタ属(0℃)
- カーネギア属(カルネギア属)(0℃)
- エキノケレウス属(0℃)
- セレウス属(0℃)
- エスポストア属(0℃)
- パキケレウス属(0℃)
- テフロカクタス属(0℃)
- ギムノカリキウム属(3℃)
- マミラリア属(0~3℃)
- オプンティア属(0~3℃)
- コピアポア属(3℃)
- エピテランサ属(3℃)
- フェロカクタス属(0~3℃)
- テロカクタス属(0~3℃)
- ペレキフォラ属(3℃)
- エリオシケ属(旧ネオポルテリア属)(0~3℃)
- ユーベルマニア属(3℃)
- ロビビア属(3℃)
- アストロフィツム属(3~5℃)
- アリオカルプス属(3~5℃)
- ロフォフォラ属(5℃)
- メロカクタス属(0~5℃)
- ホマロケファラ属(5℃)
- エキノカクタス属(3~5℃)
- ミルチロカクタス属(5℃)
- ディスコカクタス属(5~8℃)
サボテンには冬越し対策が必要
サボテンは多くの場合3~5℃で寒さ対策が必要になりますが、日本の各地域で多くの場合5℃を切ります。暖地でも冷え込む日は普通に3℃を下回り、0℃になることも珍しくありません。そのため沖縄県を除くほとんどの地域で、サボテンは寒さ対策が必要だということになります。
サボテンの冬の状態と寒さ対策の意味
それではサボテンは何度の所に置いたらよいのでしょうか?
通常サボテンは冬に休眠期を迎え、生育を停止しています。そのためほとんど水を吸わずに最低限の活動で春を待っている状態です。そのような状態では、枯死を防ぐプラスアルファの余裕程度の気温があれば充分です。その温度は5℃~10℃です。5~10℃を保てばサボテンは枯れることなく休眠して越冬します。
それでは0℃を耐えられるサボテンは0℃ぎりぎりでよいのでしょうか?実は枯死しないぎりぎりのラインで育てるのと、少し余裕を持って冬越しするのでは、春以降の生育のスムーズさが変わってきます。そのため0℃を耐えられるサボテンも無理して0℃まで耐えさせず、5℃~10℃の所に置いたほうがよいです。
それでは、暖房が整っているできるだけ暖かい部屋に置いたほうが良いのでしょうか?実は、生育を早めたいためにできるだけ高温に温めるというのはNGで、日差しの弱い中で温度だけ上げると、ひょろ長く軟弱に伸びる「徒長」を起こしてしまいます。そのため枯死を防ぎゆっくり穏やかに休ませる程度の低い温度を保つのがよいといえます。
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暖地・関西~関東
気象状況
暖地・関西・関東の中で一番寒い関東では、以下のような気温になっています。
関東(東京都都心)の気象 | |
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11月 |
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1月 |
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2月 |
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- ※1.「最低気温」はその月の最低気温の平均の9年平均です。(2012~2020年)。毎年その月は1日の気温が平均的にこの温度まで下がります。
- ※2.「9年最低気温」は過去9年に実際にあったその月の9年間の観測史上の最低気温です。(2012~2020年)。数年に一度ですが、ここまで下がることがあります。
- ※3.「最高気温」「9年最高気温」についても同様です。
通常の冬越し方法
過去9年間での気温は上の表のようになっています。そのためサボテン(最低越冬温度5℃)では、寒さ対策が必要な時期は概ね11月下旬~3月初旬になります。冬の置き場所には
- 簡易ビニール温室
- 簡易フレーム
- 室内への取り込み
の3つが考えられます。
まず考えられる方法が簡易ビニール温室での栽培です。簡易ビニール温室とは、暖房設備のないビニールで覆われた棚のことで、雨よけ用のビニールが全体に被さっており、前部分など一部が取り出しや通気のために開けられるようになっています。
ここに入れることで雪が被るのを防ぐ効果があるほか、寒風を防いで日没後の数時間程度は保温もできるようになっています。ただ薄いビニールのため保温効果は弱く、深夜から朝方までは外気温と同じまで下がってしまいます。しかし寒風を抑える効果は強く、平野部ではこれでほとんどの日(寒波が到来しない日)で越冬することができます。
次が簡易フレームです。簡易フレームは木材やプラスチック、ガラス、ビニールなどで作る簡易の栽培室のことで、木枠にガラス窓を置き、通気用の工夫をするほか、寒い場合はガラスを二重張りにしたり発泡スチロールなどで覆ったりするものです。こちらも暖房設備は持っていません。
冬以外の季節に栽培室として使えるほか、冬は雪や寒風を防いだり、保温効果が簡易ビニール温室より長く続くメリットがあります。簡易ビニール温室は1mm以下の薄いビニールのため日没後、保温効果が比較的早く低下してしまいますが、簡易フレームでは木材や発泡スチロール、二重張りでの空気の層のため保温効果が長く続きます。
特別寒い場合
暖地や関東以南でも山間部で冷え込みが激しい、地理的に冬の寒さが厳しい、平野部でも大寒波が到来する、など特別寒い場合は、寒冷地並みの寒さ対策が必要になります。そこで考えられるのが室内への取り込みです。
最後が室内への取り込みです。関東以南では、暖房設備のある温室を設置している個人の方はとても少ないと思います。(管理人もその一人です)。その場合、特別寒い日など臨時の際は、室内への取り込みが現実的かと考えられます。
室内に取り込むといっても2つのケースがあります。一つは終日窓辺などにサボテンを並べて日光を取り入れつつ、寒さ対策もするという方法です。これなら手っ取り早く準備も不用で、温度調節などの心配もないため安心ですが、日の当たる窓辺がないと難しいというデメリットがあります。
もう一つが、夜間だけ室内に取り込む方法です。関東以南で昼間に最低気温が3℃以下になることは稀なので、寒波の来る日の夜のみ室内に入れます。この場合、昼間外でよく日を浴び、夜は日照時間の心配がないため、暗い部屋などにも置いておけて場所を選ばないメリットがあります。
寒冷地(東北~北海道)
気象状況
寒冷地でも一番寒い、北海道の場合は以下のようになっています。
北海道地方(北海道札幌市)の気象 | |
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10月 |
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11月 |
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12月 |
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1月 |
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2月 |
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3月 |
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4月 |
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- ※1.「最低気温」はその月の最低気温の平均の9年平均です。(2012~2020年)。毎年その月は1日の気温が平均的にこの温度まで下がります。
- ※2.「9年最低気温」は過去9年に実際にあったその月の9年間の観測史上の最低気温です。(2012~2020年)。数年に一度ですが、ここまで下がることがあります。
- ※3.「最高気温」「9年最高気温」についても同様です。
冬越し方法
過去9年間での気温は上の表のようになっています。そのためサボテン(最低越冬温度5℃)では、寒さ対策が必要な時期は概ね10月下旬~4月中旬になります。冬の置き場所には
- 暖房設備のある温室
- 室内への取り込み
の2つが考えられます。
一つ目が暖房設備のある温室に取り込む方法です。方法は火を焚くもの、電熱を使うもの、床の保温マットなどを使うものなどがあり、それぞれガス・電気・灯油などを使います。それぞれメリットとデメリットがありますが、暖房設備のある温室では、保温だけでなく加温をすることで外気温に関係なく一定温度を保つことができます。
加温といっても秋や春のような暖かさを保つ必要はなく、最低越冬温度である5℃程度を維持できるようにすれば問題ありません。
二つ目が室内への取り込みです。大規模に栽培でもしていない限り、東北や北海道などの寒冷地でも、暖房設備のある温室を持っている方は少ないと思います。その場合、やはり暖地と同じく室内への取り込みが現実的だと思われます。
室内に取り込むといっても暖地とは若干異なります。同じなのは、終日窓辺などにサボテンを並べて日光を取り入れつつ、寒さ対策もするという方法です。これなら手っ取り早く準備も不用で、温度調節などの心配もないため安心ですが、日の当たる窓辺がないと難しいというデメリットがあります。
もう一つが、夜間だけ室内に取り込む方法です。しかしこの方法は、昼間もマイナスを下回るような寒冷地では難しいです。
暗い部屋しかない場合
それでは、窓辺にサボテンを置くスペースのない家庭では、冬はサボテンを育てられないのでしょうか?
実は良い方法があります。それはLEDなどの植物育成ライトを使う方法です。植物育成ライトは太陽光の替わりをしてくれる強力な電灯のことで、暗い部屋でも直射日光が当たったような効果を得ることができます。
室内を5℃以上に保てていれば、後必要なのは日差しだけなので、この方法なら誰でも現実的に、暖地でも寒冷地の冬でも多肉植物やサボテンを長期間栽培することができます。
デメリットは電気代が若干かかるということでしょうか。LEDですので基本的には消費電力は低いです。最大のものでも100Wを超えず、1台につきおよそ60W程度使うと考えると白熱球なら1個分、蛍光灯なら2台分程度の電気代がかかります。ただ、戸外に暖房設備のある温室を持つ方が燃費は大きくなるので、それほどデメリットにはならないと思います。
管理人も寒さ対策として室内に取り込む方法を行っていますが、人工的に光を補うことで、窓のない部屋にサボテン・多肉植物を置けるのでとても便利で、また健康に栽培できています。
植物育成ライトを使った室内長期栽培の詳細は以下のページで解説しています。
室内での注意点
室内は日照不足になりがちです。サボテンを健全に育てるには、少なくとも半日は日に当たる環境でないと難しいので、植物育成ライトなどを使って日照不足を補うようにします。
窓辺に置く場合、昼間は暖かいのですが、夜になると場合によっては0℃になってしまう地域もあります。そこで夜間は室内の中央に寄せるなど、工夫が必要になります。ダンボール箱をかぶせたり、新聞紙やプチプチシートで覆ったりするのも若干効果があります。常に温度計を設置し、夜間はできれば記録式のデジタル温度計があれば、寝ている時間の温度も測れて安心です。
サボテンや多肉植物を置く部屋は、暖房の効きすぎに気をつけましょう。人のいる部屋は常時暖房を付けており、20℃を超える場合も少なくありません。こうなるとサボテンは春と間違えて生育を始めてしまう危険もあるので、できる限り5~10℃、最高でも15℃程度に抑えたいものです。また暖房の効いている部屋は乾燥が激しくなっていることが多いので、湿度計も設置しておきましょう。湿度によっては適度に葉水(スプレーで球体に霧吹きをする)や加湿器を運転するなどの対策が必要な場合もあります。
耐寒性を上げる工夫
冬場のサボテンは生育を停止して休眠しています。そのため水分はほとんど必要がありません。また水やりを控えることで体内の水分が少なくなり、耐寒性が上がり、より低温に耐えられるようになります。
同じ気温でも、寒風に吹きさらされたり雪に当たったりするのと、簡易ビニール温室の中に入れて防いでいるのではかなり傷みの度合いが変わります。もし簡易ビニール温室は保温がほとんどできないからそのままサボテンを裸でおいているのであれば、一度簡易ビニール温室に入れて越冬されることをおすすめします。
サボテンも生き物です。梅雨空けに急に強い日光に当てると日焼けするのと同じように、暖かい所から急に外に出すと普段なら耐えられる温度でもダメージを受けてしまうことがあります。そのため昼間外に出して徐々に戸外の時間を長くするなど、少しずつ慣らしていく方が安全です。
以下のページでは、管理人の栽培地点での実測最低気温・最高温度を記載していますので、適宜お住まいの地域に読み替えていただければと思います。