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センペルビウム属の写真
巻絹 | シルバーカノール | センペルビウム |
ラブリーレディー | ||
巻絹(出典:Wikipedia) | 巻絹(出典:Wikipedia) | センペルビウムの開花(出典:Wikipedia) |
栄(サカエ)(出典:Wikipedia) | テクトルム(出典:Wikipedia) | wulfenii(出典:Wikipedia) |
センペルビウム属(Sempervivum)の特徴
科 | ベンケイソウ科 |
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属 | センペルビウム(センペルビブムとも) |
生育型 | 春秋型 |
育てやすさ | 育てやすい |
成長速度 | 普通 |
増やし方 | 株分け、さし芽 |
原産地 | モロッコ、イラン、イベリア、アルプス、カルパチア山脈、バルカン山脈、トルコ、アルメニア山脈、サハラ砂漠の北東部、コーカサス |
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
センペルビウムとは?
アフリカやメキシコなど標高が低い地域の乾燥地帯に多い多肉植物ですが、センペルビウムは珍しくヨーロッパからロシア、コーカサス地方、高い山脈地帯に自生している多肉植物です。山岳地帯に自生する耐寒性の抜群な多肉植物で、-5℃を下回っても枯れません。「巻絹」など日本でも古くから栽培されている品種もあり、日本の環境でも育てやすいです。原種は40種、園芸品種は1000も開発されているそうです。
特徴
葉がバラの花のような形(ロゼットという)に固く巻いて育ち、株元から次々とランナーを出して子株がどんどんできていきます。そして2~7月頃、ロゼットの中心付近から花茎を伸ばして花を咲かせます。そして花を咲かせるとその株は枯れてしまうという特徴をもちます。秋から冬にかけては紅葉して美しいです。草丈は2~8cm程度と1つ1つは小さいです。
育て方
日本では春と秋に生育する「春秋型」として育てます。乾燥した寒い地域が原産地なので日本で栽培する場合、冬は外で全く問題ありません。気をつけるのは日本の高温多湿の夏の時期です。株が群生すると通気が悪くなり、蒸れて腐りやすいです。夏は水やりを少なくして風通しに注意して育てます。
育て方のコツ
- 蒸れに弱いので特に夏は風通しをよくする
- 7~8月は50%程度遮光(半日陰)するがそれ以外は直射日光に当てる
- 年間を通して雨の当たらない所に置く
- 夏の水やりはごく少量、秋冬春は乾いたらたっぷりと
年間栽培カレンダー
「生育期」は春と秋で、具体的には3~5月と10~12月頃を指す。
夏(6~8月)は休眠期、冬(1~2月)はやや生育が鈍る。
季節はおおむね、春は3~5月、夏は6~9月、秋は10~11月、冬は12~2月をさしている。
生育期 | 3~6月と10~12月 |
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休眠期 | 7~8月、1~2月 |
緩慢な時期 | – |
水やり |
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置き場所 |
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植え替え |
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増やす |
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肥料 |
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開花 |
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センペルビウムの主な種類名
巻絹 (マキギヌ) | Sempervivum arachnoideum |
玉光 (ギョクコウ) | Sempervivum arenarium |
ガゼル | Sempervivum ‘Gazelle’ |
スプリット | Sempervivum ‘Sprite’ |
ミズリーローズ | |
ロブスツム | |
オディティ | Sempervivum ‘Oddity’ |
ガゼル | Sempervivum ‘Gazelle’ |
グラナダ | Sempervivum ‘Granada’ |
ジャンヌダルク | Sempervivum ‘Jeanne d’Arc’ |
ジュビリー | Sempervivum ‘Jyupilii’ |
シルバータウ | Sempervivum ‘Silver Thaw’ |
ストレイカ | Sempervivum sp. f.variegate |
スプリット | Sempervivum ‘Sprite’ |
テクトルム・アルブム | Sempervivum tectorum var. alubum |
ラズベリーアイス | Sempervivum ‘Raspberry Ice’ |
レインハード | Sempervivum ‘Reinhard’ |
レッドチーフ | Sempervivum ‘Redchief’ |
綾桜 (アヤザクラ) | Sempervivum tectorum var. calcaareum |
綾椿 (アヤツバキ) | Sempervivum ‘Ayatsubaki’ |
栄 (サカエ) | Sempervivum calcareum ‘Monstrosum’ |
紅夕月 (ベニユウヅキ) | Sempervivum ‘Commancler’ |
紅蓮華 (ベニレンゲ) | Sempervivum ‘Benirenge |
大紅巻絹 (オオベニマキギヌ) | Sempervivum ‘Ohbenimakiginu’ |
百恵 (モモエ) | Sempervivum ossetiense ‘Odeity’ |
麗人盃 (レイジンハイ) | Sempervivum ‘Reijinhai’ |
多肉植物の日本での栽培は自生地の環境と異なります。そのため日本の寒さや暑さに耐えられなくなると生育が鈍ったり成長が止まったりします。その時期のことを「休眠」といいます。時期は種類によって異なり、夏に休眠するタイプと冬に休眠するタイプがあります。休眠期は生育が鈍るので肥料や水やりを控え、挿し木や株分けなど株へ負担をかける作業を控えます。
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育て方のポイント
水やり
基本は乾燥に強い植物なので控えめを心がけます。しかし全くやらないと枯れてしまいます。
生育期の3~6月、10~12月は土が乾いたら10日に1回ほど、鉢内をしっかり湿らせる量を与えます。7~9月は休眠するので月1回ほど表土から5cmくらいが濡れる水やりをします。冬の1~2月も休眠するので月1回ほどの水やりをします。6月は夏に向けて少しずつ水やり回数を減らしていきます。
夏と真冬は水やりに注意が必要で、夏は涼しくなった夕方に、冬はこれから暖かくなる朝に水やりします。そうすると、蒸れや凍結をある程度防ぐことができます。
置き場
日本も自生地のひとつなので基本は年中戸外で育てることが出来ます。ただ高温多湿には弱いので屋根のあるベランダや軒下で雨がしのげるところがよいでしょう。庭植えも不可能ではありませんが、水はけの良い土を作り真夏の直射日光が避けられるところを選びましょう。
3~6月は直射日光の当たる日なたに、真夏の7~8月は日差しが強すぎるので午前中だけ日に当たるところか、なければ50%遮光するか明るい日陰に置きます。9~12月は再び直射日光のあたる日なたに置きます。センペルビウムは1~2月もマイナス15℃以下にならなければ、戸外で栽培可能で外の陽だまりに出しても問題ありません。
冬に室内で育てる場合は水を極力控えめにしないと徒長してしまいます。また室内では1日最低4時間は日の当たるところを確保するようにしましょう。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
春秋に生育するタイプですが、耐暑性はやや強く、雨ざらしを避けて水やりを間違わなければ比較的簡単に夏越しできます。直射日光下では30℃程度までが安全ですが、日よけ(遮光)していれば実測値40℃程度は耐えられます。
センペルビウムは乾燥に強い反面過湿に弱いです。梅雨時から8~9月にかけては蒸れて腐ってしまうのを防ぐために風通しを良くするように努めましょう。この時期はランナーが伸び子株がたくさん出るので蒸れやすいです。
越冬最低温度と冬越し方法
多肉植物の中ではかなり低温に強い部類で、平均して-5℃に耐え、-15℃に耐えられる品種もあります。日本産のものは耐寒性が強く、北海道などの寒冷地でも外で越冬できます。冬は葉が中に硬く締まって外からみると枯れているように見えますが、その中でも株はちゃんと生きています。雪が積もってもその下で休眠したまま越冬します。春を迎える頃には、生育期に備えて外側の枯れ葉を取り除いて植え替えをします。
センペルビウムは耐寒性があるものの、生育期は穏やかな気候の春秋型なので冬は冬眠していてあまり水が要りません。
増やし方
センペルビウムは挿し木か株分けで殖やせます。
適切な時期は3~6月、10~11月でベストな季節は4~6月の生育期です。真夏や冬は休眠するので繁殖には向いていません。
春か秋の3~5月または10~11月にランナーを切り取り用土に挿しておくと簡単に増やせます。センペルビウムは花が咲くとその株は枯れてしまうので、あらかじめ子供を殖やしておきましょう。方法は切り取った子株を乾いた用土に挿して10日~3週間ほど待ちます。発根は遅い方のなので気長に待ちましょう。根が出る前に水をやると腐るので水やりは控えます。
群生している株は株分けもできます。株分けは鉢から株を抜き取って傷んだ根を整理し小さい房に分けて植え戻します。株分け前は7日ほど水やりを控えて土をサラサラにしておきましょう。原種は種まきでも増やすことができます。
植え替え:
植え替えは生育期に入る少し前の3~6月、10~11月(できれば4~6月)に行います。植え替えする際は前7日から水やりを控え土をカラカラにしてから行うと根へのダメージを減らせます。
鉢から苗を抜き出して外側の土をざっくり落とします。茶色くカラカラした枯れ葉が外側にたくさんついているので、それは全部丁寧に剥がし取ります。根を整理して鉢の下の方に巻いている根や枯れて茶色い根はハサミなどで切り落とします。白くて太い根は今後の生育に大切なので切らないように注意しましょう。植え替え作業で根を切っているので、2~3日そのまま乾燥させその後植え付けて水やりをします。
植え替え作業は不要な作業のように思えますが、センペルビウムは外側に枯れ葉が溜まりカビや蒸れの原因になるため、それを取り除くためにも大切な作業になります。また乾燥気味に育てるので根ジラミがつきやすく、植え替え時は根を点検するよい機会になります。
土
土は他の多肉植物と同じように排水性が良い土を選びます。もともと山の岩盤や岸壁を覆うように自生するので、保肥性の少ないさらさらした土が適しています。
多肉植物用の土を使ったり、自分で作る場合は赤玉土やボラ土、くん炭やピートモス、パーライトなどを同割合で混ぜ合わせると良いです。
(例)赤玉土2:鹿沼土2:ピートモスか腐葉土2:川砂1:くん炭1
肥料
肥料はほとんどいりませんが、生育期の3~6月、10~11月に月1回ほど、薄めた液肥(1000~2000倍のハイポネックス)を与えると生育が良くなります。肥料をやるときは1回の水やり代わりにたっぷり与えます。固形肥料は繰り返し水やりすることで溶けて土に染み込み吸収されます。そのため植え替え時に土に少量混ぜて元肥にすることも可能です。ただし元々肥料の少ない地域で育つのでやりすぎは禁物です。与えすぎると紅葉しなくなったり葉が開きすぎたりするので、少量から試していきましょう。
病害虫
センペルビウムはあまり病害虫の心配はありません。しかし乾燥気味に育てるため、カイガラムシがつきやすいです。ロゼット(葉の巻いているところ)の中心部や葉の裏に白い虫がついていたら、殺虫剤をかけるか爪楊枝などで丁寧にこすり取ります。根にはネジラミ(サボテン根コナカイガラムシ)がつきやすいので、生育が悪いと思ったら掘り起こして根を点検し、付いていたら根を洗い流すかその部分を切り捨てます。
また高温多湿の時期は病気ではないが、根腐れすることがあるので必ず外で風が当たるように育てましょう。
センペルビウムによくあるトラブル
- センペルビウムを殖やすときは土に指したあとすぐ水をやっていいのか?・・・腐ってしまうのですぐは水を与えません。2~3週間水をやらなくても枯れないので大丈夫です。
- たくさんの子株を育てたいけれどどうしたらよい?・・・センペルビウムは葉挿しができません。そのためランナーや子株が出るまで気長に育てるしかありません。
- 葉が開いてだんだん反ってきてしまった・・・カット苗を育てていると最初はどうしても葉が次第にそってきてしまう。また水のやりすぎや日光不足で葉が開くので栽培環境を見直してみましょう。
- 茶色い皮(古い葉)は取らないといけない?・・・古い皮はカビの原因や蒸れの原因になりすいので春先植え替え時に取り除きましょう。
- 乾燥にも強く耐寒性も、割と耐暑性もあり半分ほったらかしでも育ち、初心者にも育てやすい
- コロッとかわいく育てるには水やり回数を控えめに
- 数年育てていると9月~11月頃花が咲くが、花が咲くとその株は枯れてしまうので花芽を摘み取るか子株を殖やしておく
- センペルビウムはラテン語で永遠にsemper+生きるvivusという語からなるように常緑でとても強健な性質をもつ