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パキフィツム属の写真
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パキベリア属の写真
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パキフィツム属・パキベリア属の特徴
科 | ベンケイソウ科 |
---|---|
属 | パキフィツム属(Pachyphytum) パキベリア属(Pachyveria) |
生育型 | 春秋型 |
育てやすさ | 育てやすい |
成長速度 | 遅い |
増やし方 | 葉挿し〇、挿し木〇、株分け〇 |
原産地 |
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
パキフィツムとは
むっちりしていて茎が太く全体に白い粉をまとう多肉植物です。メキシコの高さ600~1500mほどの地域に自生しています。原種はたった20数種類しかなく、国内でも流通している種類数もそう多くはありません。しかし星美人や月美人、オビフェルムなど人気の高い品種が多いです。名前のPachyphytumはギリシャ語の「厚いpachys」と「植物phyton」という語から来ています。近年も人気がありますが、実は明治時代から栽培されている歴史のある多肉植物です。
特徴
パキフィツムは成長がかなり遅い方で一年に数枚しか葉が出ず、成長が止まっているように感じられます。葉挿しで育てるにも時間がかかり1年間で2cmくらいにしかなりません。寒くなる紅葉して白い粉を通して肌が赤色~紫などに変わって美しいですが、粉は取れてしまうと再生しないので植え替え時などにうっかり触らないように注意しましょう。
育て方
日本では春と秋に成長する「春秋型」として栽培します。栽培上の注意点は大きく分けて2つあります。1つ目は多湿に弱いことです。日本の夏は湿気が多いので水やり回数は減らし風に良く当て蒸れ・根腐れを防ぎます。2つ目は置き場所です。雨ざらしにすると水分で徒長するほか、パキフィツムの粉の美しさが台無しになってしまいます。夏は葉がもげやすくなっているので丁寧に取り扱いましょう。
パキベリアについて
パキフィツムは自然界にもともと生息している「原種」です。いっぽうパキベリアはパキフィツムとエケベリアを人工的に交配して作られたもので「交配種」といいます。パキベリアは親のどちらかがパキフィツムなので、性質がパキフィツムと似ており、ほぼ同じように育てることができます。
育て方のコツ
- 真夏・真冬は水やりを月2回など少なめにする
- 春秋の生育期は土が乾いたら1週間に1回程度たっぷり水を与える
- 冬は3℃を切ったら室内などに取り込む
- 一年を通して雨ざらしにせず、風通しを心がける
年間栽培カレンダー
生育型 | 春秋型 |
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生育期 | 3~5月と9~11月 |
休眠期 | 12~2月 |
緩慢な時期 | 6~8月 |
水やり |
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置き場所 |
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植え替え |
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増やす |
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肥料 |
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開花 |
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主な種類名
パキフィツムの品種
星美人 (ホシビジン) | Pachyphytum bracteosum |
月美人 (ツキビジン) | Pachyphytum oviferum cv. |
月花美人 (ゲッカビジン) | |
グラウクム | |
紫麗殿 (シレイデン) | |
フーケリー | |
桃美人 (モモビジン) | |
青星美人 (アオホシビジン) | |
ガンゾー | Pachyphytum ‘Ganzhou’ |
ベビーフィンガー | Pachyphytum rzedowskii(?) ‘Baby Finger’ |
フレーベル | Pachyphytum glutinicaule |
ウェルデマニー | Pachyphytum werdermannii |
キムナッチー | Pachyphytum ‘Kimnachii’ |
コエルレウム | Pachyphytum coeruleum |
ビリデ | Pachyphytum viride |
千代田松 (チヨダノマツ) | Pachyphytum compactum |
パキベリアの主な品種
立田(タツタ) | Pachyveria scheideckeri |
霜の朝 (しものあした)(オビフェルム × カンテ) | Pachyveria ‘Powder Puff’ |
都踊り (みやこおどり) | Pachyveria ‘clavifolia’ |
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育て方のポイント
水やり
パキフィツムは多肉植物の中でも乾燥に強いタイプなので水やり回数はとても少ないです。しかし植物ですから全く与えないと枯れてしまいます。そこで土が鉢の中までカラカラくらいになり鉢を持った感じもとても軽くなったら水をやるようにします。
生育期と休眠期の水やり
生育期の3~5月、9~11月は10日に1回ほど鉢内が充分湿るぐらい水を与えます。鉢底の穴から水が出てくるほどやって構いません。梅雨時の6月からは蒸れやすくなるので水やり回数を2週間に1回くらい減らします。そして7~9月は暑すぎて生育が鈍るためあまり根が水を吸わなくなり、月に1~2回ほどに回数も量も減らします。9月からまた水やりの回数を増やします。冬の12~2月は休眠期なので水をほとんど吸わなくなるので月1回程度にします。
水やりの注意点
30度を超える猛暑の間と5度以下になる厳冬時は、1回の水やり量も鉢内を軽く湿らせる程度に減らします。高い気温で多すぎる水をやると葉が突然割れ深い溝ができてしまうことがあります。また冬と夏は水やり時間もタイミングがあり、夏は涼しくなった夕方に、冬はこれから暖かくなる朝に与えます。凍るような寒い日や35度を超えるように時は無理に水やりは行いません。パキフィツムは少々シワがよっても枯れることはありません。
置き場
パキフィツムは日本より気候がおだやかで温度変化の少ないメキシコ生まれの多肉植物のため、日本では置き場所の工夫が必要です。原生地は雨がとても少ない所なので年間を通して雨ざらしにはしないようにします。そして風通しにも気をつけます。
3~5月は屋外の日なたに置き、日光を良く浴びせます。しかし6~9月は日差しが強すぎるため50%遮光(明るい日陰)に置きます。この時期は特に蒸れないよう風通しに注意します。再び10~11月は屋外の日なたに、12~2月も基本屋外の日なたに置きます。ただ0~5℃を下回る場合は温室か室内の窓辺に取り込みます。
外に置く場合はほとんど意識しなくてよいのですが、冬などで室内に置く場合は風通しに気をつけましょう。またあまり暖かすぎると徒長(ヒョロヒョロになる)するので暖房が効いた部屋にはなるべく置かないようにします。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
耐暑性は中くらいです。35℃以上の高温にさらされると葉が落ちやすくなり、実際にポロポロと取れてしまうことがあります。しかし現在の日本の環境で夏35℃を超えさせないようにするのは難しいです。そこで遮光ネットを張って株の温度を下げ、直射日光を遮ります。そうすれば40℃程度はまずまず耐えることができます。
越冬最低温度と冬越し方法
寒さにはやや弱く、最低越冬温度は3~5℃程度です。できれば5℃以上を保ち、低くても3℃以下にならないようにしましょう。霜に当てたり茎が凍結すると枯れることがあります。枯れなくても株に傷みやダメージが起こり、春の生育がスムーズにできなくなってしまいます。
増やし方
パキフィツムは挿し木、葉挿し、株分けで殖やすことができます。時期は生育期の3~5月、9~11月が適しています。他の季節ははできないわけではありませんが、休眠中は根が出ないなどのトラブルが起きやすいため避けた方が無難です。
挿し芽の方法:
挿し木は親株から5cm程度茎をカットし下の方の葉をもぎとり切り口を3~4日乾かします。乾いたら乾燥した用土に挿します。発根するまで2~3週間かかるので気長に待ち、根が出そうになったら水やりを開始します。いきなり鉢底から流れ出るまで与えたりせず、徐々に増やしていきます。カットした親株には2ヶ月程度で新しい芽が出てきます。
葉挿しの方法:
葉挿しは親株から下の方の葉をもいでそのまま土の上に置いておきます。もいだ葉は直射日光が当たらない明るい日陰に置きます。根や芽が出るまでは室内でもよいです。発根・発芽まで1ヶ月以上かかり、そこから葉が5mm程度まで育つまで4ヶ月以上かかる場合が多いです。最初の水やりはもぎとった葉がカラカラに乾いたときです。そのため最初の半年間は水をやらないことになります。
詳細はパキフィツム「月美人」の葉挿しページへ
株分けの方法:
数年間育てて群生した株は株分けで殖やすこともできます。土から掘り出して古い根を整理し子株ごとにわけて植え付けます。植え付けてから3~4日後から水やりを始めます。株分け前は1週間ほど水やりを控えて土をサラサラにしておきます。
また原種では種まきもできます。
植え替え:
植え替えも株分けと同様に生育期の3~5月、9~11月に行います。事前に水やりを控えて土を乾燥させておきます。真夏などに植え替えると株にダメージを与えるので生育期に行うようにします。根が張りやすいので小さいうちは1年に1回、大きい鉢になってきたら2年に1回ほど一回り大きな鉢に植え替えます。
土
土は排水性のよいもので肥料分が少ないものを選びます。他の多肉植物と同じように市販の「多肉植物の土」を使っても良いです。原産地ではごつごつした山の岩肌に生えているので、砂のような土をイメージすると良いでしょう。自分でブレンドする場合は、くん炭やピートモス、ボラ土、赤玉土、鹿沼土(いずれも小粒)を混ぜ合わせます。土には種類により特性があります。全部鹿沼土などではなく3種類以上の土を混ぜ合わせるのが理想です。
(例)赤玉土2:鹿沼土2:ピートモスか腐葉土1:川砂1:くん炭1:パーライト1 など
肥料
パキフィツムは乾燥地帯に育つため、普通の植物のような大量の肥料は要りません。しかし鉢植えでは微量要素や肥料が不足する場合があります。
そこで植え替え時に土に緩効性肥料(マグアンプKなど)を混ぜ込んだり、生育期の3~5月、9~11月に月2回液肥を与えます。ハイポネックスなら1000~2000倍に希釈して1回の水やり代わりにたっぷり与えます。ただ肥料のやり過ぎは問題で、与えすぎると茎ばかりヒョロヒョロと伸びて株が軟弱になってしまいます。またあまりにも与えすぎると秋から冬にかけての紅葉が弱くなってしまいます。
病害虫
パキフィツムはあまり病害虫は心配ありません。しかし庭などでは他の植物についた害虫が飛んできたり、病気がうつってしまうことがあります。
比較的つきやすいのがカイガラムシ、ネジラミ、ナメクジなどです。葉の裏の付け根に白いものが付いていたらカイガラムシなので爪楊枝などで1つずつ取り除きます。生育が悪いと思ったら根にネジラミ(サボテン根コナカイガラムシ)がついていることがあるので鉢から抜き取って土をほぐし根を点検してみましょう。オルトランなどの一般的な殺虫剤が効きます。病気は特に心配ありませんが、根腐れや茎腐れに注意します。
パキフィツムの花
パキフィツムは冬に花芽がつき、春に花を咲かせます。だいたいエケベリアと同じような感じですが、12月~2月に成長点に近い部分から突然花芽がでてきて、じっくり時間をかけてつぼみを膨らませ、3~4月頃開花します。
詳細はパキフィツムの花のページへ
育て方のコツ
- 月美人が紅葉しない・・・水と肥料のやりすぎ、気温が高すぎ、風通しや日当たりが少ないと紅葉しなくなることがあります。
- 葉がポロポロ落ちてしまう・・・もともと葉が取れやすいタイプですが、夏はますます生理障害で葉が落ちやすくなります。気温を下げることは難しいですが、遮光などによってなるべく涼しいところで管理します。
- 葉挿しの葉からなかなか根・芽が出てこない葉挿しは100%成功するとは限りません。根だけ出て芽がでないということもあります。葉をもいでから3ヶ月以上根・芽が出ないものは諦めます。
- 粉がはげてしまった。再生させるには?・・・パキフィツムだけでなく、どの多肉植物でも1度取れた粉は再生できません。ただ育て続けると新しい葉が中心から出てきて粉はげの葉は下葉になるのであまり気にならなくなります。
- 生育は遅いがほったらかしで育てられ病気の心配も少なく手軽
- 種類は少ないが月美人など美人シリーズが人気
- 斑入り種は斑なしより耐寒性や耐暑性が弱い、扱いが難しいものが多い
- 水やりは少なめできゅっと締めて徒長しないように慎重に栽培するときれい
- 月美人と星美人は実質的には差が無い(同じ品種)といわれている。その他もオビフェルムをかけ合わせて新しい品種が作られた
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