植物育成ライトは多肉植物に効果がない、育たないなどの情報をみかけることがありますが本当なのでしょうか?実際に1年間使ってみて分かった植物育成ライトのデメリットと太陽光と比較した育成ライトの限界について解説します。
目次
植物育成ライトは効果ある
結論からですが、植物育成ライトは多肉植物に効果があります。
多肉植物といってもコーデックスやエケベリア、メセン類、サボテンなどさまざまありますが、ちゃんと徒長せずに大きくなっていきます。
まず最初に太陽光を全く当てずに4ヶ月間育てたリトープスの写真を紹介します。
リトープスの様子(その1) | |
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2022/5/1 | 2022/9/5 |
リトープスの様子(その2) | |
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2022/4/28 | 2022/9/5 |
このリトープスは2022年5月から9月までの夏の期間、室内で完全に植物育成ライトの光だけで育てましたが、これだけ成長しました。また通風対策(扇風機を回す)もした上でのことですが、ほぼ徒長も見られませんでした。
その他、コーデックスの一つであるアフリカ亀甲竜を12月から2月まで完全に太陽光の入らない所で育成ライトだけで育てましたが、しっかり葉を茂らせ塊根も大きくなりました。
同じく寒さに弱い塊根植物のパキポディウム、アデニウムも11月から3月まで室内でLEDで育てましたが、徒長は全くしませんでした。
またエアプランツも冬以外もずっと室内で植物育成ライトで育てていますが、徒長どころか少し赤く変色している(光が強すぎるサイン)のもあるぐらいです。(これは一時的な現象です。調光して少し暗くしたら赤い斑点は消えました。)
またハオルチア(ハオルシア)も1年近く植物育成ライトで育てていますが、徒長や変色などの症状はなく、もともと成長がゆっくりなため少しずつ大きくなっています。(通風対策の扇風機は回した上での結果です。)
ただこれは、ある程度強い光の出せる植物育成ライトを使ったためで、種類によりますが、5,000ルクスから15,000ルクス程度照射した結果となります。
どのLEDライトでも効果があるというわけではなく、色々な製品の性能を事前に調べて効果が高そうな植物育成ライトを選んだ結果で、明るさが弱い製品(照度やPPFDが低い)を使っていたら徒長していたと思います。
知っておきたい育成LEDライトのデメリット
植物育成ライトはしっかり多肉植物を育てることができますが、デメリットがあるのも事実です。いざ購入してみて後悔しないためにデメリットも確認しておくことが大切です。
使い続けると照度が低下
植物育成ライトは使い続けると照度(明るさ)が低下してくるという問題があります。これは蛍光灯や室内の通常のLED照明と同じ運命なのですが、1年間1日8時間程度点灯すると、手持ちのLEDライトでは7~10%程度照度が低下しました。
ルクスメーター(照度計)で実際に測った所、同じ30cm下での計測で19,000ルクスあったところ、17,000ルクス程度に低下していました。目視では明るさの低下はほとんど確認できませんが、照度計の数値が下がったのですので、確実に暗くなっているといえます。
1年当たり10%ずつ暗くなるとなると、5年後には最初の半分程度の明るさになることになり、植物育成ライトとしての機能を果たせなくなります。そうなると新品への買い換えが必要になると考えられます。
育成LEDの製品ページには耐久性が30,000時間~50,000時間と書いてあることが多いですが、実使用上ではもっと早く買い替えが必要になることになります。※3万時間は1日8時間使うと10.5年、5万時間は17.1年となります。
電気代が無視できない
育成ライトは省電力のLEDでできていますが、ヒト用の照明と異なり強い照度をもつため、電気代が無視できません。
通常よくある消費電力20W程度の植物育成LEDライトを1個、2個置くの程度であればさほど問題にはならないのですが、パネル式の60Wの消費電力のものを複数設置したり、20Wのものでも10台など設置するとなると、月2,000円、3,000円とかさみ家庭の電気使用量の10%を超えるまでにもなります。
植物育成LEDライトの電気代については以下のページで推定値や主な家電との比較などを掲載していますので、よろしければご覧ください。
ルクスメーター(照度計)が必須
本格的に植物育成ライトで多肉植物を栽培しようとする場合、ルクスメーター(照度計)が必須になってきます。
設置する場所や明るさなどを調節する必要があるためです。
照度計自体はアマゾンでも購入でき、1台2,000~3,000円で買えるのですが、設置場所を変える時など度々明るさを測る必要があるので、外栽培よりやや面倒です。
LED栽培は通風管理もセット
室内でLEDライトで栽培する場合、通風対策もセットとなります。
通風対策とは、室内の空気をサーキュレーターや扇風機などで循環させて植物をムレさせないようにするための対策です。外では常に風が吹くため送風については気にしなくて良いのですが、室内は無風なのでサーキュレーターなども用意する必要があります。
サーキュレーター自体は1台3,000~5,000円程度で買えるので特別重い負担はないのですが、一日中送風の騒音がするデメリットがあります。
ヒトの目にまぶしすぎる
育成ライトは出力が高いため、ヒトの目にはまぶしいです。
まぶしさは個人差はあると思いますが、徒長しないしっかりした照度が出せるものはまぶしく、なんらかの方法でライトが直接目に入らないようにする工夫が必要になります。(人がいない部屋に設置する分には全く問題ありません)
実用的なライトは限られ暗い製品が多い
アマゾンなどネット通販ではたくさんの植物育成ライトが販売されていますが、実は実用的な明るさがある製品はそうたくさんありません。
植物育成ライトは必ずルーメン、ルクス、PPFDなど明るさの目安が書かれているとは限らず、買うまで本当に明るいのか判断がつかないケースがたくさんあります。
また口コミでも暗いと書いてあったり、逆に明るいと書いてあったりして正直あまり参考になりません。植物育成ライトを買うときは、せめて距離とルクス(照度)が書いてあるものから選びたいものです。
葉焼けのリスクがある
暗いライトがある一方で、光が強すぎ葉焼けしてしまうケースもあります。
そのため照度計で明るさをしっかり測って設置距離を決める必要があります。また風が吹かない室内では、常に同じ面に光が当たり、太陽光と同じ照度でも思いのほか日焼け・葉焼けしてしまうことがあります。
特にハオルチア、エアプランツは注意が必要で、この2つは調光機能が付いている(明るさを調節できる機能)ものか、明るさが替えられないものであれば距離を充分に取ることが必要です。
設置にやや工夫が必要
植物育成ライトはどこでも設置できるというものではありません。
多肉植物にちょうどよい距離で置く必要があり、パネル型のものや電球タイプのものでは吊す場所が必要になったり、クリップ式でも3cm程度の厚さの丈夫な台などにクリップで挟む必要があります。
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育成ライトの限界(太陽光には叶わない理由)
植物の一面にしか光が当たらない
植物育成ライトは改良が重ねられていますが、太陽光には叶わないライト特有の限界があります。
それは太陽は東から西に一日を通して動くため、植物にまんべんなく光が当たるのに対し、植物育成ライトは移動してくれないという点です。
設置した場所だけに光が当たるため、多肉植物の一面でしか光合成ができません。本来は植物にはまんべんなく光が当たることが望ましいです。また一日中同じ場所が当たり続けるため、照度計で外の明るさに合わせたとしても、一部分が不自然に葉焼けしてしまうことも挙げられます。
室内では強い風が当たらないため植物が揺れずに不動なのも、葉焼けしやすい一因となっています。
そのため、太陽光下での栽培に近づけようとすれば、こまめに鉢を回したり斜めから当てるなど手間がかかります。
明るさが足りない
晴天時12万ルクスを示している
戸外では晴天時10万ルクスという非常に明るい光が当たりますが、植物育成ライトではそこまでは実現できません。正確には近づけて設置すれば不可能ではありませんが、そうするとLEDの熱で蒸されたり、葉焼けするなど別なトラブルが起こりやすくなります。
そこで太陽光に当てた多肉植物のように紅葉せずほとんど紅葉しないか冷めた色づきにとどまります。また全く徒長なしで育てるのにはコツがいるのが実情です。
メリットもたくさんある
こうしてみてみると植物育成ライトはデメリットだらけで使い物にならないという印象を受けてしまいますが、決してそんなことはありません。
植物育成ライトは
- 冬、寒さで室内に多肉植物を取り込む時、日照不足になる
- マンションのベランダで日が差さない
- 隣や前の家が高すぎて庭が日陰になってしまう
- 春秋は日が差し込むが夏になると日が当たらなくなってしまう
- 窓のない部屋しか多肉植物を置けるところがない
などの場合に本当に強力な助っ人になります。
日当たりの良い環境がある方、外で冬でも暖房できる本格的な専用温室などを持てる方などには、電気代がかかるばかりで太陽光と比較した限界もある植物育成ライトはメリットがありません。
しかし上のリストに当てはまる方は、植物育成ライトは画期的な存在だと思います。
取り敢えず徒長(日光不足)を防げる
それでは管理人は植物育成ライトを使用しているかといわれれば、しているとなります。具体的にはパネル式、電球タイプ、クリップ式を12台ほど入手し、季節により4~10台を稼働させています。
理由は栽培スペースが確保できず、簡易ビニール温室に置いているため夏に下段が日光不足となること、冬に寒さで室内に入れる必要があるためです。
できる限り屋外の日の当たる所に置いていますが、どうしても日光不足になる時期には、植物育成ライトを使用しないと徒長してしまいます。電気代も2,000円以上かかり、送風用の扇風機もうるさくてたまりませんが、多肉植物をダメにしてしまうのを避け、一応徒長を許容範囲にとどめることができます。今では必須のアイテムになっています。
なお、管理人は植物育成ライトを複数購入して明るさを測ったり、デメリットがないか確認したりしています。植物育成ライトを検討している方は、よろしければ以下のページを参考にしてみてください。