チランジア(ティランジア、エアプランツ)は寒さに弱い多肉植物です。耐寒温度や詳しい冬越しの方法、工夫、室温別の水やり頻度などについて解説しています。
目次
冬越しとは
室温が6℃台まで下がる中のチランジアの防寒対策
冬越しとは、チランジアを冬に枯らさずに越冬させることをいいます。
ティランジアの多くはメキシコ、グアテマラ、ブラジルなど中米を中心に自生する多肉植物で、一部の高山性(高標高=寒い所、に自生する)のもの以外、耐寒性が弱いものが多いです。
そのため0℃やマイナスに下がる寒冷地はもちろんのこと、5℃以下になることが多い日本の冬は、なんらかの寒さ対策を行う必要があります。
私を含めて多くの方はチランジア専用の加温ができる温室を持つことは難しいでしょう。そのため寒さ対策は基本的に室内に取り込む、という方法になります。しかし寒冷地では室内に取り込んでも5℃をキープできないこともあるはずです。その場合のさらなる対策についても下のほうで紹介しています。
ティランジアの状態
ティランジアの生育期は夏、春、秋で15~30℃程度で一番よく生育します。
冬は寒さのため休眠状態になります。(室内で20℃など温かい温度をキープした場合は、夏と同じように生育します。)
冬は生育が鈍るため水をやっても吸収が悪くなり、長い間湿った状態になってしまいます。また水を与えると水が蒸発するとき気化熱としてチランジアの熱を奪い室温より数℃冷える効果が出ます。
そのため水やり回数も減らし、大きく育てるというよりは、最低限の活動で株を衰弱しないように維持することが目標になってきます。
チランジアの耐寒温度と越冬温度
ざっくりとチランジアの耐寒温度は種類により0~10℃程度です。耐寒温度とは枯死を防ぐ最低ラインの温度のことです。一方越冬温度は5~10℃程度です。越冬温度とは安全に冬越しできる温度のことをいいます。
中にはベルゲリなどマイナスに耐えるものや5℃以下にしても大丈夫なものもありますが、多くは5~10℃を保つ必要があり、安全をみて5~10℃を下回らせないことが一つの指標となります。
というのは耐寒温度ぎりぎりまで我慢させると、傷みが生じたり、水やり後に冷えて冷害を起こしたり、なんらかのダメージを受けてしまうことがあるからです。春以降引き続きスムーズに育てるためには、最低温度ぎりぎりではなく、安全に越冬できる越冬温度を目安としたほうが株のためになります。
それでは、暖房のよく効いた温かい部屋に置くのがよいでしょうか?実はこれはNGで、日差しの弱い室内で温かくさせると葉や茎が伸びる徒長を起こしてしまいます。またエアコンを強くかけると、乾燥が激しくチランジアにとってよくありません。
寒さに弱い種類と強い種類
一口にチランジアといっても、寒さに弱い種類と強い種類があります。
以下の表のデータは出典:「【改訂版】チランジア最低防衛ライン」から引用させていただきました。
- フンキアナ 10℃
- アンドレアナ 10℃ ※1
- カピタータ ※2
- ブラキカウロス ※2
- キセログラフィカ ※2
- カプトメデューサエ ※2
- ブルボーサ
- ブッツィー ※2
- ガルドネリー
- エスピノーサ
- フィリフォリア
- プルプレア
- パウシフォリア
- キアネア
- イオナンタ
- ストリクタ
- パレアセア
- ハリシー
- ジュンセア
- メラノクラテル
- テクトラム
- バグアグランデンシス
- ジュンシフォリア
- セルーレア
- パレアセア
- ベルティナ
- プラギオトロピカ
- テクトラム(ウニ型)
- プルイノーサ
- ストリクタ・シルバー
- カウレッセンス
- クロカータ
- マレモンティー
- ジュクンダ
- ポリスタキア
- エディシアエ
- パレアセア
- ストラミネア
- シーディアナ
- グラブリオール
- バンデンシス
- ウスネオイデス
- アルビダ
- ストレプトフィラ
- コットンキャンディー
- セレリアナ
- ヴェリッキアーナ(ベリッキアーナ)
- ケロエンシス
- アラウジェイ
- フックシー・フックシー
- ストリクタ(ソフトリーフ)
- ヘテロモルファ
- カピタータ・ピーチ
- ファキシラータ
- ラティフォリア
- フネブリス
- ベルゲリ
- アエラントス
実際に試した最低気温
12~1月の3~5℃の気温の中、複数回チランジアを通販で購入し、宅配便や郵便で自宅まで配送していただきました。配送の際には1~3日程度の時間がかかり、その間ずっと最低で3~5℃程度の温度にさらされていたわけですが、以下の種類は全く問題ありませんでした。
必要温度が高い順に、10℃以上が必要とされるアンドレアナ、7℃以上が必要とされるカピタータ、ブラキカウロス、キセログラフィカ、ブッツィー、5℃以上のイオナンタ、ハリシー、テクトラム、それ以外にジュンシフォリア、コットンキャンディー、ヴェリッキアーナ、ベルゲリが問題無く到着し順調に生育しています。
ただし、これは数日など短期間の話で、寒冷地など長期にわたって5℃以下になった場合の影響は未検証です。また上の方で引用させていただいた表のデータもあくまでも目安として過信しないようにお願いいたします。
全部が全部10℃以下を下回ってダメになってしまうわけではないですが、5℃以下を耐えられる種類は限られており、やはりちまたでいわれているように、「エアプランツ(ティランジア)は最低限5℃を保ち、できれば10℃を保てるようにする」必要があることが分かります。
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エアプランツの冬越しの詳しい方法
まず夜の温度を知ろう
エアプランツの防寒対策をする上でまず必要なのが、置いている場所の夜間の最低温度を知ることです。戸外では5~6時の日の出前が一番寒いですが、室内ではそれよりずれがあり、7~8時台が最低温度になる場合が多いです。
そのため寝る前に温度をみて朝起きて温度を測るのでは、本当の最低温度を知ることができません。
最低温度を知る方法は簡単です。最低温度・最高温度が記録できる「最高最低温度計」を設置することです。
最高最低温度計では最高の温度と最低の温度を自動で記録し表示してくれます。朝起きて最低温度をチェックしてその値をリセットボタンでクリアして、また測り始めることができます。アマゾンなどでは1,000円前後で売られています。
地域別の室内への取り込み目安
暖地・関西・関東の中で一番寒い関東では、以下のような気温になっています。
関東(東京都都心)の気象 | |
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11月 |
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12月 |
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1月 |
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2月 |
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3月 |
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- ※1.「最低気温」はその月の最低気温の平均の9年平均です。(2012~2020年)。毎年その月は1日の気温が平均的にこの温度まで下がります。
- ※2.「9年最低気温」は過去9年に実際にあったその月の9年間の観測史上の最低気温です。(2012~2020年)。数年に一度ですが、ここまで下がることがあります。
- ※3.「最高気温」「9年最高気温」についても同様です。
この表から、関東を含む関東以南では10月末~4月初めまで室内への取り込みが必要なことが分かります。
寒冷地でも一番寒い、北海道の場合は以下のようになっています。
北海道地方(北海道札幌市)の気象 | |
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10月 |
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11月 |
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12月 |
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1月 |
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2月 |
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3月 |
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4月 |
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- ※1.「最低気温」はその月の最低気温の平均の9年平均です。(2012~2020年)。毎年その月は1日の気温が平均的にこの温度まで下がります。
- ※2.「9年最低気温」は過去9年に実際にあったその月の9年間の観測史上の最低気温です。(2012~2020年)。数年に一度ですが、ここまで下がることがあります。
- ※3.「最高気温」「9年最高気温」についても同様です。
この表から、北海道などの寒冷地では最低気温が10℃を下回らない10月中旬~4月末まで室内に取り込まなければならないことが分かります。
室内に入れるとき、日中はできるだけ日の当たる窓辺に置き、夜はできるだけ暖かい室内の中央など窓に面していない所に置いてください。
寒冷地など室内でも10℃を切る場合の工夫
毎日0℃を下回る寒冷地では、室内に取り込んでも朝方5℃、0℃を下回ってしまうことがある地域があります。その場合、どうしたらよいのでしょうか。
ネットではエアコンやストーブをつけるなどの方法が紹介されていますが、夜中植物のために暖房を行うのは難しいという方も多いと思います。
その場合、園芸用ヒーターマットの設置という方法があります。
園芸用ヒーターマットとは、電熱線が入ったビニール製のホットマットで鉢や多肉植物を入れているカゴの下に敷いて、植物の寒さ対策をするためのアイテムです。メーカースペックでは、室温10℃の時マットの表面が20℃程度になります。消費電力は1枚20W程度で、アマゾンでは1枚2,000円程度で販売されています。
サイズは1枚53cm×25cm程度で2枚で正方形になり、簡易ビニール温室の1段分をカバーできる程度(ダイソーのプラスチックカゴ3つ分程度)です。
エアプランツの場合は、エアプランツを置いている床や棚、カゴなどの下に新聞紙をしいてその上にマットを置いて電源をオンにします。
ヒーターマットの下に新聞紙を敷くとより温かくなります
チランジアの入っているカゴを乗せただけです
この方法ではマットから高さ5~10cm程度の所が、室温プラス3~5℃程度になります。
それでは温度が足りない場合は、エアプランツの上にプチプチシートをかけて全体を覆うようにすると、室温プラス5~8℃程度にすることができます。
プチプチシートを箱形に加工して密閉性を高めると、さらに温度が上がります
マット部分は温度が上がるため、空間の温度を測るには温度計を逆さまにして置いてください
なお、プラスできる温度は目安であり、室温や環境条件により異なるため、必ず温度計で確認しながら温めすぎないように気をつけてください。
植物用ヒーターマットについては以下で解説しています。
日光不足の解消方法
室内ではなるべく窓辺に置きますが、窓がない部屋しかない場合や窓辺に置けない場合、11~3月という最低でも4ヶ月もの間、日に当てることができないことになってしまいます。
さすがのエアプランツもこれでは光合成ができず、重度の日光不足から酷く弱ってしまうか枯れてしまう心配もあります。また部屋が暖かいと徒長するリスクもあります。
その場合は、植物育成ライトの設置が考えられます。
植物育成ライトとは、植物の育成に必要な光の成分を含んでおり、日光代わりに当てることで多肉植物を健康的に育てることができるアイテムです。もちろんエアプランツにも対応しており、冬場に全く日に当てなくても健康に春を迎えられます。
調光できるクリップ式の植物育成LEDライト
入手も難しくなくアマゾンでたくさん取り扱っており、1台2,000円~4,000円程度で購入でき、クリップ式(アーム式)や吊り下げパネル式など様々あります。LEDのため消費電力は少なく1台10W~最大でも60W程度と通常の照明器具と同じくらいです。光の強さを調節する調光機能があるもの、タイマー付きのものなどさまざまな商品があります。
エアプランツは強い日差しは必要としない種類がほとんどのため、強光を発する商品よりはそれほど強くなく、調光機能が付いたものが適しています。
以下では植物育成LEDライトについて詳しく解説しています。
エアコンでの乾燥対策
湿度の目安になる葉先の細いチランジア
室内では暖房設備を使っていると思いますが、特にエアコンでは空気が極度に乾燥することがあります。
これは湿度80%程度を好むエアプランツにとって厳しいものです。できれば加湿器を併用して湿度を上げてやることが推奨されます。特に室温15℃以上に温めている場合は、湿度計を置いて湿度をチェックするようにしてください。
ただ湿度80%程度は現実的には厳しいと思いますので、40%以下にならない程度、できれば60%程度にできれば大丈夫です。
乾燥度の目安として、チランジア「フックシー」などの葉先が細いものや、乾燥に弱い緑葉種の状態を確認することが挙げられます。葉先がどんどん枯れこむようであれば加湿が必要なサインです。逆に葉先まで緑色であれば湿度は適切ということが分かります。
通風不足への対策
概ね15~20℃以上ある部屋では、サーキュレータやミニ扇風機などで空気を常に動かしてやる必要があります。チランジアに直接風を当てるのではなく、周りの空気が動く程度で大丈夫です。特に水やり後は風通しが大切です。
一方、10℃以下などかなり寒い部屋であれば、水やり後に風を当てると冷えて冷害を起こすことがあるので、扇風機は回さないほうがよいです。
耐寒性を上げる工夫
チランジアは水やりの量を控えることで、耐寒性を上げることができます。
これは多肉植物に限らず植物全般にいえることなのですが、植物体内の液は濃いほど寒さの害を受けにくくなります。水やり回数が多いと体液が薄まり寒さに弱くなり、水を控えると体液が濃くなり耐寒性が上がります。
エアープランツも冬場は水を控えることで少しシナッとなってしまうものの、通常いわれている耐寒温度より少し下回っても、傷みにくく枯れにくくなります。
室温別の水やり量と頻度とタイミング
水やりのタイミング
水やりのタイミングは霧吹き(スプレー)してから乾くまでの間、10℃以上を保てる時間帯となります。
一般的に春から秋はチランジアの自生地の霧の発生に合わせて夕方から夜間に行うとされていますが、冬は寒さのため朝~昼に行います。夜に行うと乾くまでに気化熱によって寒さにさらされるため、不適切とされています。
しかし夜間でも10℃以上を保てるのであれば、春~秋と同じように夜間に行っても構いません。チランジアはCAM型光合成植物で夜に気孔が開くため、たくさん水を吸収させるには夜がベストなのですね。
温度別の水やり頻度
室温が15℃以上保てるのであれば、チランジアは休眠しないため春や秋と同じように週に2~3回霧吹き(ミスティング)を行います。与える時間も生育期と同じ夜で構いません。
室温が10℃以上だか15℃まではいかないという場合は、3~4日に1回程度に減らします。与える時間もできるだけ暖かさが確保できる時間帯に行います。
5℃~9℃まで下がってしまう場合は、1週間~10日に1回程度、量も少なめに減らします。朝や昼などなるべく温かい時間に霧吹きし、さっと乾かせる程度の量にします。
5℃付近まで下がってくるとエアプランツ本体も休眠して水を欲しがらなくなっているため、水やりは月1~2回程度にしたほうがよいです。シワがよったり葉先が枯れたりしますが、枯死を防ぐことを最優先にします。せっかく育ててきた株の葉先が枯れたり、枯死してしまうのは悲しいことです。できれば5℃まで下がらないように環境作りをしたいものです。
冬はソーキングできる?
チランジアの冬といっても5℃から20℃まで、各家庭環境で温度条件が異なると思います。そのため一概にソーキングはできないということはできません。
安全にソーキングができるのは、室内が15℃以上あり、水温が20℃程度を保てる時です。室内が寒いとエアプランツを乾かすときに寒さで傷みますし、真水のような冷え切った水を使うと本当に枯死に直結します。(管理人も1株枯らせてしまいました)
できればソーキングに使う水を植物用ヒーターマットの上に置いて20℃を保ち、1時間以内に収めておき、乾かすまで室温15℃を保てるようにしたいものです。
そして冬場のソーキングは、購入したての株で極度に乾燥しているなど特殊な事情があるもののみで、普段から育てている株はミスティングをしっかり行ってソーキング不要な状態にしておくのが安全かと思います。