このページではセロペギア属と代表種「ハートカズラ(ウッディー)」をメインにの育て方を基礎から丁寧に解説しています。
目次
セロペギア(ハートカズラ)の写真
ハートカズラ | ハートカズラ(冬) |
セロペギア属(Ceropegia)の特徴
チョウチクトウ科
セロペギア属(Ceropegia)
育てやすさ:育てやすい
生育型:春秋型
成長速度:普通
増やし方:葉挿し× 挿し穂〇 株分け〇 ムカゴ〇
原産地:南アフリカ
※以下ハートカズラ(Ceropegia woodii)の例
大きさ:種類によるが1mを超すことも
耐暑性:強い
耐寒性:弱い
越冬最低気温:5℃(書籍値)
温度:実測値5℃~40℃程度
※水やりを控えた場合の目安値で、状況によりこれより狭くなることがあります。
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
耐寒性と耐暑性が、強い-やや強い-やや弱い-弱い
※以前はガガイモ科とされていましたが、現在ではキョウチクトウ科セロペギア属に分類されています。
一言でいうと:
セロペギア属はアフリカ、オーストラリア、カナリア諸島で自生している多肉植物です。原種では200種類が知られておりその多くが「つる性」で這うように成長します。日本ではハートカズラ錦の「レディーハート」と普通のハートカズラが主に出回っています。
特徴:一見普通のツタのように見えますが、葉はとても分厚く厚紙のような硬いさわり心地です。ハートカズラはとてもかわいい斑入り種で深緑の葉に白~ピンクの斑が入ります。夏には釣り鐘のような花が良く咲き、その姿が葉になじまず面白いです。トップの写真になっているハートカズラなどの一部は「ムカゴ」を作ってそこから繁殖することも出来きます。
育て方:
セロペギア属は日本では主に春と秋に生育する「春秋型」として栽培します。夏の暑さや高温多湿には比較的強いですが、寒さには弱いです。5℃以下で葉が傷むので冬は室内で管理します。また夏も強光(直射日光)で葉焼けするので遮光したほうがきれいに育ちます。多肉植物の中では比較的日光不足に強く、長期的に半日陰で育てることができます。
育て方のコツは
- 冬の寒さが苦手なので5度以下になったら室内に取り込む
- ハートカズラ錦のような斑入り種は夏に50%遮光する
- 水は土がカラカラに乾いてから、たっぷり与える
- 葉が絡まりやすく無理にひっぱってちぎらないように
これさえ守ればとりあえず枯らさないで育てられる。
年間栽培カレンダー
水やり | 4~5月、9~11月は生育期で土が乾いたら7~10日に1回ほど鉢内が充分湿るくらい水をやる 6月から水やり回数を10日に1回以下にする 7~8月は月に2回程度の水やりをする 12~2月は休眠期のため月に1回程度(室内で育てるなら生育期と同じ量の水やり回数が必要) ※うっかり多めに水をやってしまってもすぐ枯れることはない |
---|---|
置き場所 | 4~6月は屋外の日なたに 6~9月は日差しが強すぎるため屋外で50%遮光か明るい日陰に 10~11月は屋外の日なたに 12~2月は基本屋外の日なたに ただ5℃以下になる間は日の当たる室内に取り込む 年間を通して雨ざらしにしない |
植え替え | 4~6月、9~10月が適期 |
増やす | 4~5月、9~10月に挿し芽 |
肥料 | ほとんどいらないが、4~6月、9~11月に月1回2000倍の液肥を与えても良い |
開花 | 6~9月に提灯形の花を咲かせる |
多肉植物の日本での栽培は自生地の環境と異なります。そのため日本の寒さや暑さに耐えられなくなると生育が鈍ったり成長が止まったりします。その時期のことを「休眠」といいます。時期は種類によって異なり、夏に休眠するタイプと冬に休眠するタイプがあります。休眠期は生育が鈍るので肥料や水やりを控え、挿し木や株分けなど株へ負担をかける作業を控えます。
ハートカズラは春から秋にかけて生育し(夏も少し)、冬の寒さで休眠するので、冬は水やりを減らしたり株分けなどの作業を控えておきます。
ハートカズラ錦(レディーハート)など斑入り種は性質が少し弱いです。耐寒性や耐暑性が下がり、特に強い直射日光を嫌うようになります。普通どおりに育てると葉が焼けて黒くなる、株が枯れる、溶けるといったトラブルが起きます。そのため日陰で育てたり、室内に取り込んだりと育て方を工夫する必要があります。ハートカズラ錦(レディーハート)の場合、葉が小さくなったり白い斑が焦げたり茎ごと腐ったりするので7~9月は遮光が必要になります
主な種類名
ハートカズラ (ハートカズラ) : Ceropegia woodii
Ceropegia africana
Ceropegia ampliata アンプリアタ
Ceropegia antennifera
Ceropegia arabica
Ceropegia arenaria
Ceropegia aridicola
Ceropegia aristolochoides
Ceropegia armandii アルマンディー
Ceropegia ballyana
Ceropegia barbarta
バーケレイ
コンラティー
ディモルファ
ディコトマ
フスカ
イノルナータ
リネアリス
ムルチフローラ
ニロチカ
パビラータ
プルプラッセンス
ラディカンス
ロビンシアナ
ルピコラ
サンデルソニー
シモエアエ
以下200種ほど
スポンサーリンク
育て方のポイント
水やり
生育期の4~6月、9~11月は土が乾いたら7日に1回ほど鉢内が充分湿るくらい水をやります。鉢底から水が流れ出ても構いません。梅雨時は雨が多いので6月から水やり回数を10日に1回以下に減らします。そして7~8月は月に2回程度の水やりに減らします。鉢底からジャージャー水が出るほどやらないほうがよいです。冬の12~2月は寒さのため休眠期になります。根が水を吸わなくなるのでほとんど水が要らなくなりますが、全くやらないと枯れてしまいます。そのため月に1回程度土の表面が濡れる程度にさらっと水やりをします。
セロペギアは冬の寒さに弱いので日本では室内で管理します。真夏30℃を超える時期は無理に水やりすると蒸れて腐るので暑い日が続いている間は無理に与えないようにします。ただ水不足で葉がしわしわになって厚みがなくなった場合は早めに涼しい日を見つけて夕方に水やりします。冬外で育てている間はあまり寒くない日の朝に水を与えます。
冬の間は徒長を防ぐため水やりを控えます。室内育ちなら10日に1回くらいの水やりで全然問題ありません。その場合葉がシワッとなることもありますが、少しくらい葉がしわしわ・ふにゃふにゃになっても枯れることはありません。水やりを再開すると2日くらいですっかり元に戻ります。
置き場
セロペギアは基本的に外での栽培が必要ですが、日本の高温多湿下では、7~9月は遮光が必要になります。また原産地は雨が少ない所なので日本で育てる場合は雨ざらしにしないほうがよいです。そして風通しが良いことが大切です。
具体的には4~6月は屋外の日なたで日光をよく当てます。7~9月は日差しが強すぎるため屋外で50%遮光するか、明るい日陰に置きます。「明るい日陰」は木陰のような所をイメージするとよいです。夏の間は直射日光に当てると葉焼けしてきれいな白色が茶色になってしまうのでしっかり遮光することが大切です。遮光しても充分散乱光で日が足ります。
セロペギアは多肉植物では珍しく耐陰性もあり、屋外の日陰に置いても徒長することは少なくそこそこに成長します。しかし夏の間は風通しに注意し、暑いからといって閉めきった室内に置いておくと根腐れしてしまうことがあります。外に置いておく場合は風通しについては充分よいので意識しなくて大丈夫です。(もちろん簡易ビニール温室などではビニールは常にオープンにしておきます)。
秋が来て10~11月は再び屋外の日なたでよく日光を当てましょう。12~2月は基本屋外の日なたに置きます。しかし寒さに弱いので5℃を下回るようになったら室内に取り込み、窓越しに直射日光を浴びせます。ハートカズラは1週間直射日光に当て、1週間は玄関など暗いところに置くといった日陰でも育てることが出来ます。また室内は暖房が効いますが、ハートカズラに限らず多肉植物を置く部屋はなるべく強い暖房はかけないようにしましょう。
暖房器具は乾燥した空気を出すので、多肉植物の体の水分が失われたり、暖かすぎて徒長(ひょろひょろになる)することがあります。日光が足りているか、強すぎるか判らない場合は、葉の色で簡単に判断できます。葉がピンク色を帯びていればちょうど良い日差しの量です。葉が茶色くチリチリしていたら強すぎを意味しています。葉にピンク色が見当たらずつるの先が黄緑色になり上を向いている場合は日当たりが足りない状態です。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
直射日光下では30℃をぎりぎり耐える状態で、日陰では40℃くらいは耐えられます。夏に外で育てる場合、遮光シートなどで50%程度遮光することが必要です。最近は猛暑が続き気温が38℃を超えることも珍しくなくなりました。しかし日よけさえしていれば、40℃くらいなら大丈夫です。
具体的な日よけの仕方は、簡易ビニール温室の場合ビニールを全開放し、ビニールを上に持ち上げて後ろに倒し前面が完全に開くようにします。そして温室の一番上に遮光ネット(遮光率70%程度)をかけます。夏は深くまで日は差さないので前面は遮光ネットをかけ、西日が傾く9月~10月は温室の西側にも遮光ネットを張って直射日光が植物にかかることがないようにします。
簡易ビニール温室ではない場合、何らかの方法で直射日光が1時間でも当たらないように確実に覆いを掛ける必要があります。また遮光シートを使うのもよいですが、遮光シートは黒っぽいいろのものが多く保温性があるので、その中に熱気が溜まらないように気をつけます。また水切り(断水・水を控える)を徹底します。
越冬最低温度と冬越し方法
セロペギアは寒さに弱く5℃までとされています。日本は暖地でも冬の夜は5℃を下回るので基本室内で栽培となります。どうしても室内には置いておけないという場合でも、夜5~6時間以上凍る温度なら、明らかに室内にいれたほうがよいです。(この場合日の当たらない部屋でもOKです)気温は太陽が出る直前の6:00~7:00頃が一番下がるので天気予報を毎日チェックしましょう。
多肉植物は冬室内で育てる場合、日光不足での徒長対策が大変ですが、耐陰性にすぐれるハートカズラは少々日に当てなくても枯れたり徒長したりはしません。半分観葉植物のような存在かもしれません。もし外で育てるのであれば、寒い日は不織布のシートをかけてあげたり、(暖房器具はなくても)簡易ビニール温室に入れて寒気を防ぐだけでも葉の傷みが小さくなります。プチプチシート(エアキャップ)をビニール温室の周りに巻いても良いです。
室内はなるべく15℃を超えないようにして乾燥した暖房の風が直接当たるのは避けましょう。寒冷地では夜になると窓際がとても寒くなりマイナス近くなることもあるので、部屋の中央に移動させるなど工夫が必要になります。
増やし方
セロペギアは挿し芽ができます。葉挿しは難しくがんばっても最後は枯れてしまいます。挿し木(挿し芽)の場合は4~7月頃が適期です。他の季節は全くできないわけではありませんが、暑さ寒さで根が出ないなどトラブルが起きやすいです。また他の多肉植物と比べてハートカズラの挿し芽は難易度が高めです。
挿し芽の方法:
親株から10cmくらいのつるの先を切り取り、一番下についている1対の葉を優しくむしり取ります。そして細かい土を用意し、一番下の葉をもいだところを土に置き細かい土をかけます。そして1週間程度そのままにします。8日目から霧吹きでむしりとった葉の付け根にかけた土のところだけに水を拭きかけます。3週間目にはいったら鉢全体に霧吹きを多めにかけます。4週間以上するとむしり取った葉の付け根から新しい根が出ているころです。1.5ヶ月くらいは霧吹きでの水やりを続けます。その間常に表面の土がしっとりしている程度に霧吹きを続ける。1.5ヶ月経つと完全に根が出ているはずなので、植え付けたい容器に植え直します。
株分けの方法:
ムカゴができている場合、ムカゴとその茎を取り外し、新しい用土に植えるだけで簡単に殖やすことでができます。株分けしたい場合もムカゴを探して株分けすれば簡単にできます。
植え替え:
植え替えも挿し木と同じように生育期の4~6月、9~10月に行います。植え替え4~5日以上前から水やりを控え土を乾かしておきます。株を掘り出して枯れている根などを整理し一回り大きな鉢に植え替える。毎年の植え替えは面倒だからと小さい鉢から一気に大きな鉢に植え替えないようにしましょう。そうすると根が張っていない鉢底の部分に水や老廃物がたまって過湿になり、根腐れなどを起こしやすくなってしまいます。
肥料
ハートカズラはそれほど肥料は要りません。しかし肥料不足になっている場合は、肥料を与えると生育が良くなります。肥料をやる場合は4~6月、9~10月に月1回程度2000倍の液肥(ハイポネックスなど)を与えます。基本的に休眠期には肥料はやらないようにしましょう。ただやりすぎに気をつけましょう。葉と葉の間隔が延びて間延びしたり、秋に紅葉が見られなくなってしまうなどのデメリットが起こってしまいます。
土
土は他の多肉植物と同じように排水性の良いものを選びましょう。市販の多肉植物の土でも良いです。普通の「花や野菜の土」だとそのままでは使えず、赤玉土や軽石をたくさんいれて排水性を上げる必要があります。自分でいちから作ることも可能です。ブレンド例は、
(例1)赤玉土3:鹿沼土3:ピートモスか腐葉土2 その他、軽石・川砂・パーライトなど。
(例2)赤玉土6:腐葉土2:パーライト2
1種類の土ではなくできれば4種類以上の土を入れるのが理想です。
開花
ハートカズラは育てていると自然に花を咲かせます。花は吊り提灯のような感じでサイズは2cmくらいの濃い紫色の花を咲かせます。提灯のようにつるの先にいくつもぶら下げ、見応えがないと一般の図鑑には書かれていますが、他の多肉植物では見られない姿です。ぜひ6~8月にはセロペギアの花を見てみましょう。花を咲かせると株が枯れてしまう多肉植物もあるが、ハートカズラは枯れないタイプなので、花を急いで切り取ったりしなくて大丈夫です。
病害虫
他の多肉植物に比べあまり病害虫は心配はいりません。しかし庭で栽培しているとそこから病気をもらったり、虫が飛んできたりすることがあります。高温多湿の時期はカイガラムシがつきやすいです。ゾウムシが茎にしがみついて植物の体液を吸い弱らせてしまうこともあります。そんな場合は夜に懐中電灯をもって見回り見つけ次第虫を捕獲するか、ベニカXファインスプレーなどの殺虫剤を撒いておくとよいです。
病気はあまり心配ありませんが、うどんこ病などカビ性の病気に罹ったらベンレートやオルトランスプレーなどを撒くとよいでしょう。
ハートカズラによくあるトラブル
- 葉がポロポロ落ちてしまう・・・根が張って鉢の中が一杯になる根詰まりを起こしているかもしれません。一回り大きい鉢に植え替えてみましょう。
- つるが根元で切れてしまう・・・つるが伸びて葉の量が多くなり重くなっている、または強い風が吹く環境に置いているなどが考えられます。実は自生地では実はツルは這うものなので本来ハンギングなどには向いていません。そのため長くなりすぎたら切って挿し芽にしてあげたほうがよいです。
- 家の中で飾りたい・・・ハートカズラは日陰でも育つので、室内でも比較的育てやすいです。ただずっと日に当てないと葉が緑に戻り茎も長く徒長してしまうので、時々は外の半日陰に出しましょう。
- 冬の寒さが苦手なので5度以下になったら室内に取り込む
- ハートカズラ錦のような斑入り種は夏に50%遮光する
- 水は土がカラカラに乾いてから、たっぷり与える
- 葉が絡まりやすく無理にひっぱってちぎらないように