目次
葉挿し(はざし)とは
葉挿しは親株から葉をもぎとって新しい土にさして根や芽を出させる方法のことを指します。多肉植物では株を増やしたい時、さし芽と同じくらい一般的に行われています。
さし木と違ってできない種類があるものの、親株から落ちた葉が勝手に鉢の中で葉挿しになってしまうなど、とても簡単にできて成功率も高いです。中でも葉がポロポロ落ちるものは葉ざしに最適な種類です。
メリット・デメリット
まず葉挿しはできる属とできない属があります。その差はもぎ口(葉のつけ根)に成長点があるかどうかで、できない属は本当にできません。その例がコチレドン属やセネシオ属で、ほぼ不可能です。更にできるものとできないものは単純に属で分けることはできず、できる品種とできない品種が分かれてしまいます。たとえばセダム属で虹の玉は葉挿しに最適ですが、そっくりな乙女心では葉挿しができません。
また葉ざしはさし木と比べると時間がかかりますが、たくさんの葉で葉ざしをすれば一気に大量の苗を作ることができます。
葉挿しは親株のコピー(無性生殖)なので親株がウイルス病などにかかっていると、そのまま伝染してしまいます。この点は挿し木と同じデメリットです。また斑入り種を葉挿しにすると、斑が入らなかったり入ったりと気まぐれなので、多めに葉挿しをして成功率を上げる必要があります。
どんな風に育つのか
親株から葉をもぎとってトレーなどに転がしておくと、まずもぎ口が乾燥して種類によっては白いもの(カルス)が盛り上がってきます。その後種類によって日数の差はありますが芽か根が出てきます。
芽と根が一緒に出るもの、芽が先のもの根が後のものなど種類・個体によって差があります。根がある程度でたら土をかぶせます。その後、親葉の養分が子株に移って親葉は薄くカリカリに乾き、ぽろっととれて役目を終えます。ここから始めて水やりを開始します。
Q&A
- 葉挿しはいつできる?・・・春秋が早く成長するが、ほぼ1年中行える
- かかる時間は?・・・種類によって異なり2週間~4ヶ月
- どこに置いたら良い?・・・直射日光の当たらない日陰で
- 土はどんなものを使ったら良い?・・・清潔な新品の土を使おう
- 根や根はどこから出る?・・・種類によりもいだ部分から出る、葉の先から出る、葉の断面から出るなどがある
- 根と根はどちらが先に出る?・・・種類によって異なり、芽が先のものと根が先のものがある
- いつから水やりをする?・・・親葉が完全にカリカリになってから始める
- 斑入りはどうなる?・・・親が斑入り種であっても、葉挿しでできた子株は斑入りになったりならなかったりとばらつきがある。結果は育てないと分からない
繁殖に大切な6つのポイント
- 元気な株を選ぶ
- 時期を守る
- 清潔な土と道具を使う
- 発根まで水やりしない
- カットしたら原則乾かす
- 半日陰で管理する
元気な株を選ぶ
元気な株から葉を取りましょう。根詰まりなどを起こして力がなくなっている株から取った葉は、根の出方が悪く成功率も低くなってしまいます。また葉のサイズは小さいもののほうが根と芽が早く出ることが多いです。
時期を守る
葉挿しは原則その多肉植物の生育期に行います。生育期は生育が旺盛で根や芽が出やすく失敗が少ないですが、休眠期は根が出るのが遅かったり腐ってしまったりと、失敗する確率が高くなります。しかし挿し木より柔軟で実は一年中できるといってもよいでしょう。
清潔な土と道具を使う
根や茎をカットする際は切り口から病原菌が入るのを防ぐため、ハサミやピンセットなどを火であぶって殺菌しておきましょう。また病害虫が発生しないようにするため土は新品のさし芽用土など清潔なもの、雑草の種などが入っていないものを使います。
カットしたら原則乾かす
葉挿し用にもいだ葉は、基本はすぐ土に挿さないでもぎ口を乾かします。これはもぎ口から細菌が入ったり腐ったりするのを避けるためです。
半日陰で管理
葉挿しは親葉がカラカラに乾くまで、直射日光の当たる日なたに出したりせず半日陰で管理する必要があります。ただ11~2月など日差しが弱い場合は直射日光に当てたほうが良い場合もあります。
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葉挿しの方法
- 新品の種まき・さし芽用の土
- 鉢
- ハサミ
- カッター
- 殺菌剤
①挿し床を準備する
まず葉挿ししたものを植えるための挿し床を作りましょう。病害虫をさけるため新品の種まき・さし芽用土を使います。さし芽用土は細かくバーミキュライトのような無菌の土を使っているものを選ぶとよいでしょう。用土は清潔な鉢に入れて使うようにします。※陶器の鉢など、多孔質の鉢は穴に細菌が入りやすいので避けましょう。
②葉をもぎとる
元気な親株から葉をもぎとりましょう。
もぐ時はコツがあり、茎から完全にもがないといけません。(成長点がもぎ口(葉のつけ根)にあるため、途中でちぎれるとその葉からは芽や根がでません)※一部の品種に葉の途中から切り取っても育つものがあります。例:マザーリーフ(子宝草)、月兎耳、神刀など
うまくもぎ取るには、親株に1週間程度水を与えず乾かし、葉がぽろっと落ちやすい状態にしておいたり、引っ張るのではなく横に滑らせるようにしましょう。そうするとうまく取れる確率が上がります。
またどこからもぎ取るかですが、株の下の方の大きな葉がもぎやすいです。しかしあまり大きいと発根や発芽が遅くなるので、株の真ん中あたりから採取すると良いですね。先端のあまりに小さい葉は体力(水分)が少ないので、発芽するまでに力尽きてしまう(しなしなになる)ことがあるので避けましょう。
③発根を待つ
そしてトレーに転がし明るい日陰で管理します。そのまま発根するまでほったらかしで大丈夫です。
④土に植える
発根してきたら土に植えます。種まき用、さし芽用の細かい清潔な土を使いましょう。土に植えるといっても深くまで挿す必要はなく、土の上に転がし根元に少し土をかぶせるくらいが適切です。このときも管理は明るい日陰で管理しましょう。
⑤水やりを始める
葉をもいでから種類によって1ヶ月~1年程度で親葉の養分と水分が、全て子株に移動します。この期間は属によって異なり、パキフィツムなどは1年かかることも稀ではありません。グラプトペタルムが一番早く3ヶ月くらいでできあがります。
そうすると親葉はカリカリになって枯れてぽろっと取れるようになります。そうなったら始めて子株に水を与えます。子株が徒長(茎ばかり伸びる)してきたら日が足りないサインなので、もう少し日当たりが良いところに置きましょう。
またカリカリになった親葉がなかなか落ちない場合は、ピンセットなどで取り除いてもOKです。
芽と根はどちらが先に出てくるの?
これは種類によって大体決まっているようですが、個体差が結構あるようです。
たとえば
芽が先に出ることが多いタイプ
グラプトペタルム属、セダム属、パキフィツム属
根が先に出ることが多いタイプ
アドロミスクス属
両方出てくることが多いタイプ
エケベリア属
品種による
クラッスラ
不明
ガステリア、ハオルシア
などがあります。
⑥その後の管理
その後水を与え続け、少しずつ大きくなっていきます。最初は直射日光が当たらない所(明るい日陰)に置いて管理し、だんだんと日差しに慣らして親株の置き場になれさせていきます。子株が徒長(茎ばかり伸びる)してきたら日が足りないサインなので、もう少し日当たりが良いところに置きかえましょう
葉挿しができる属
属によって葉挿しができるものとできないもの、葉挿し向きのもの、あまり向いていないものがあります。
特に葉挿しに向いているのは、何もしないでもポロポロ葉が落ちてくるタイプの多肉植物です。たとえばアドロミスクスやグラプトペタルムなどです。このような種類は葉挿しを作ろうとしなくても、勝手に葉が鉢の中に落ちて葉挿しになっていることが多々あります。
葉挿しに向いている種類があり、発根までにかかる時間や成功率も属によっても異なります。
また同じ属でも早い種類と遅い種類がありますので早いもの~遅いもので記載している。
※「発芽日数」は最初の1本が出る時期、「完了まで」は親葉が枯れて子株が独立するまでです。
属 | 発根日数 | 完了まで | 成功率 |
---|---|---|---|
グラプトペタルム | 2週間 | 3ヶ月 | 90%以上 |
セダム(硬葉系) | 1ヶ月 | 5ヶ月 | 80%程度 |
アドロミスクス | 1ヶ月 | 8ヶ月 | 50~70% |
エケベリア | 1ヶ月 | 6ヶ月 | 60~70% |
クラッスラの一部 | 1ヶ月 | 半年 | 80% |
パキフィツム | 1ヶ月 | 半年~1年 | 80% |
ガステリア | 未検証 | ||
ハオルシア | 未検証 |
その他葉ざしができるもの
グラプトベリア属、セデベリア属、グラプトセダム属
葉挿しができない・極めて難しい属
センペルビウム属、オロスタキス属、アエオニウム属、セネシオ属、アロエ属・アガベ属、カランコエ属の一部、コチレドン属、コノフィツム属、リトープス属、フェルニア属、スタペリア属、
葉挿しでよくある失敗と対策
発根、発芽しない
葉挿しの成功率は100%ではないので、失敗かもしれません(もぐ時に成長点が外れてしまったなど)。
発根、発芽が遅い
冬の低温時期や夏の高温時は葉挿しの成長も遅くなります。また大きい葉は小さい葉より発芽や発根が遅いです。
なかなかうまくもぎとれない
水やりを控えて株を乾燥させると取りやすくなります。またまっすぐ引っ張ろうとせず、左右にスライドしながら少しずつ力をかけるとよいでしょう。ねじれるほど葉と葉の間にスペースがある種類は、くるりとねじるとうまくいきます。
どの葉を選べば良いか分からない
葉は小さいもののほうが発芽・発根が早いですが、大きな葉のほうが水分や栄養がたくさん貯留されていて子株の生長が安定するので、適度なサイズで小さすぎないものがよいと思います。
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