多肉植物を育てる上で悩むのが水やりです。頻度や量、そして与えるタイミングが種類によってまた季節によっても異なるのでとても面倒に感じてしまいます。そこで多肉植物の水やりの基本とコツ、実際の目安や特別な場合などについて解説しています。
多肉植物も水やりが必要
多肉植物も水やりが必要です。水やりなしでは生きていけず、徐々に乾いて枯れてしまいます。
しかし普通の草花とは異なり、毎日水をやる必要はありません。通常の植物のような感覚で水をあげていると、今度は根腐れを起こしてしまいます。
実は多肉植物を枯らす大きな原因に、水やりの失敗があります。そこで多肉植物を長く育てていくためには、水やり方法をしっかりマスターすることが大切になってきます。
具体的な水やりが書けない理由
普通の庭木や草花であれば、「毎朝起きたらたっぷり水をあげる」ととても分かりやすいです。しかし多肉植物の場合は「土がしっかり乾いたら数日後に与える」となります。
なぜ何日に1回、何ミリリットルあげればよい、ということができないのでしょうか?
それは多肉植物は色々な種類があり、また使っている鉢や土の種類によって、置き場所やお住まいの地域などの環境によって、水の乾きが異なり、また季節によっても必要な水の量が変わるためです。
朧月は春の3~5月は1週間に1回ほど鉢底から流れるほど与えますが、夏6~8月には2週間に1回程度、1回当たりの量も少なめになります。秋には再び3~5月のように与え、冬は1ヶ月に1回ほどしか水をやりません。
またこれはプラスチック鉢の例で、陶器の鉢を使っているともっと頻度があがります。そして寒冷地か暖地かによっても季節をずらして考えないといけません。
一つの種類でもこれほど気を遣わないといけないなんてとても面倒そうに感じます…
でも大丈夫です。このページでは多肉植物の水やりの基本を解説していますが、実際の目安についてもなるべく参考になるやり方を紹介しています!
水やりの基本
2通りある土の乾き具合
まず、土の乾き具合には2つの目安があります。
一つ目は表土(土の表面)の乾き具合、二つ目は鉢の底までの乾き具合です。通常表土はすぐに乾きますが、表土が乾いても鉢内や鉢底はまだ湿っています。そこで表土の乾き具合と同時に鉢内がどれぐらい乾いているかをチェックすることが大切になります。
しかし鉢の中の様子はみえません。鉢内の湿り気は割り箸や長い串などを挿しておき、時々抜いて湿っているか確かめることで確認できます。多肉植物初心者の間は、面倒ですがこうやって鉢底の乾き具合を確かめることをおすすめします。
生育期は土が乾いて数日後に
多肉植物には生育期と生育をお休みする休眠期があります。生育期は土が鉢底までしっかり乾いてからさらに数日経って、たっぷりの水を与えます。
大切なのは鉢底までしっかり乾いてから「さらに数日経ってから与える」ことです。鉢がすっかり乾くと鉢の重みも軽くなって、すぐ水をやらないとと思いがちですが、そこから3~4日ほど待ちましょう。
休眠期は控えるか断水する
休眠期は生育をお休みしているので根がほとんど水分を必要としません。そこで休眠期はほとんど水を与えないか、種類によっては断水(全く水をやらない)を行います。
休眠期は土がカラカラに乾いた状態が続くので、枯れないか心配になりつい水をやりたくなりますが、根がほとんど水を吸ってくれないため土がいつまでも湿り「根腐れ」のリスクが高まります。そのため水分はほとんど与えません。
水やりでよくある失敗が、
- 土が乾いてすぐに水やりしてしまうこと
- 休眠中なのに水やりをしてしまうこと
なのでこの2つを守れば、水やりで枯らしてしまうことは激減するはずです。
季節によって頻度と量が変わる
多肉植物は生育型と季節によって、水やりの頻度と量が変わります。ここではざっくりですが、
- 春と秋は頻度も多くたっぷり与える
- 夏はやや少なめに与える
- 冬は少なめに与える
夏型
- 春秋は頻度も多くたっぷり与える
- 夏も多く与えるが、春秋よりはやや少なめにする
- 冬はほとんど与えない
冬型
- 春秋は頻度も多くたっぷり与える
- 冬も多く与えるが、春秋よりはやや少なめにする
- 夏はほとんど与えない
夏型でも真夏は少なめに、冬型でも真冬は少なめにする点に注意が必要です。また春と秋はどの生育型もそこそこ水を欲しがりますので多めに与えます。
夏は涼しい時に、冬は暖かい時間帯に
水やりには季節により適切な時間帯があります。夏は涼しい時間帯(夕方~夜間)に、冬は暖かい時間帯(昼頃)に与えます。
これは夏に真昼に水をやると水分がお湯のように熱せられ根を煮えさせてしまうためです。また冬は夜間などに与えると寒さから凍結してしまう恐れがあり、太陽の昇って暖かい時間帯が適しています。
それでは穏やかな気候である春と秋はどうなるのでしょうか?この場合は気温10℃~20℃程度がキープできる時間帯ならいつでも構いません。朝でも夕方でも問題ありません。
ただ葉が濡れたまま太陽光に当たるとレンズ効果で部分的に葉焼けすることがあるので、真昼は避けた方が安全です。
葉に水をかけてよいタイプとダメな種類
多肉植物には葉に水をかけてよい種類とダメなタイプがあります。
葉に水をかけてよいタイプ
- リトープス、コノフィツムなどの玉型メセン類
- エアプランツ(チランジア)
葉に水をかけないようにするタイプ
- 粉がついている種類(ダドレア、エケベリアなど)
- 毛が生えている種類(カランコエ、コチレドンなど)
- 毛を楽しむサボテン(ロフォフォラ)
昼間に水やりをする場合、先ほどのレンズ効果で焼けることがあるので葉に水をかけて良いタイプもかけない方が安全です。
またエケベリアやグラプトペタルムのように株の中央にロゼットを形成する種類は、葉の中央に水が溜まらないように水をやるか、かかってしまった場合はストローなどで吹き飛ばしておきましょう。
水やりが必要なサインとは?
多肉植物は水やりが必要なサインを出すことがあります。
- 葉にシワがよってくる
- 葉の色づきが強くなる
- 気根(茎から空気中に出る根)が出てくる
- サボテンの球体がへこむ
- コーデックスの塊根がへこむ
このような状態になったら、水分が不足している証拠ですので、すぐに水をやるようにします。また球体や塊根は何度もへこまさないように、前段階で水やりしたほうが望ましいです。
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生育型別の水やりの頻度・量の目安(例)
春秋型
主な属(種類)
エケベリア、グラプトペタルム、セダム、パキフィツム、春秋型のクラッスラ、コチレドン、オロスタキス、アドロミスクス、ハオルチア、センペルビウム、グラプトベリア、セデベリア、グラプトセダム、春秋型のセネシオなど
春(3月、4月、5月)
3~5月は生育期です。水分をよく吸い成長するため、一年の中では一番水やりが必要になります。一年を通して100%の水分を与えるとすると、この時期は40%程度の割合を占めます。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:1週間~10日に1回(月3~4回ほど)
梅雨(6月)
6月はまだ生育期ですが、雨が多く多湿で土の乾きが遅くなります。そのため水やり頻度や量を減らします。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:10日~2週間に1回(月2回ほど)
夏(7月、8月)
7~8月は暑さで生育がやや鈍くなるため、水やり量・回数と共に春秋より減らします。一年を通して100%の水分を与えるとすると、この時期は15~20%程度の割合を占めます。
量:鉢の半分が湿るぐらい
頻度:2週間に1回(月2回ほど)
秋(9月、10月、11月)
9~11月は気温が下がり再び生育が盛んになります。量・回数共に春並みになります。一年を通して100%の水分を与えるとすると、この時期は30%程度の割合を占めます。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:1週間~10日に1回(月3~4回ほど)
冬(12月、1月、2月)
12~2月は気温が下がり生育が一年の中で一番緩慢になり休眠期となります。水やり量・頻度共に一番少なくなります。一年を通して100%の水分を与えるとすると、この時期は10%程度の割合を占めます。
量:鉢の半分を湿らせる程度
頻度:2週間に1回(月2回ほど)
夏型
主な属(種類)
アロエ、カランコエ、夏型ユーフォルビア、サボテン、夏型クラッスラ、夏型セネシオ、アガベ、フェルニア、セダムの一部、アデニウム、パキポディウム、クセロシキオス、サンセベリア、チランジアなど
春(3月、4月、5月)
3月はようやく休眠から明ける頃です。3月はまだ土の乾きも遅いため、水やりも少なめになります。
量:鉢の半分が湿るぐらい
頻度:2週間に1回(月2回ほど)
4~5月は生育期に入りよく水分を吸い成長する時期に入ります。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:1週間~10日に1回(月3~4回ほど)
梅雨(6月)
6月は生育期ですが、雨が多く多湿で土の乾きが遅くなります。そのため若干水やり頻度や量を減らします。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:10日~2週間に1回(月2回ほど)
夏(7月、8月)
7~8月は暑さで生育がやや鈍くなるため、水やり量・回数と共に春より減らします。
量:鉢が充分湿るぐらい
頻度:2週間に1回(月2回ほど)
秋(9月、10月、11月)
9~10月は気温が下がり再び生育が盛んになります。量・回数共に春並みになります。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:1週間~10日に1回(月3~4回ほど)
11月は寒さから生育が鈍り始めます。水やり回数・量を減らします。
量:鉢が充分湿るぐらい
頻度:2週間に1回(月2回ほど)
冬(12月、1月、2月)
12~2月は気温が下がり生育が一年の中で一番緩慢になり休眠期となります。水やり量・頻度共に一番少なくなります。種類によってはほとんど水をやらない断水を行うこともあります。
量:鉢の表面が湿るぐらい
頻度:1ヶ月に1回、または葉に霧吹きを行う程度
冬型
主な属(種類)
アエオニウム、冬型クラッスラ、リトープス・コノフィツムなどの冬型メセン類、冬型セネシオ、オトンナ、ペラルゴニウム、モンソニアなど
春(3月、4月、5月)
3~4月はまだ生育を続けています。水分をよく吸い成長するため、充分な水やりが必要です。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:1週間~10日に1回(月3~4回ほど)
5月は休眠期に入りつつあり水の乾きがゆっくりになります。そのため量や頻度も減らしていきます。
量:鉢が充分に湿るぐらい
頻度:10日~2週間に1回(月2~3回ほど)
梅雨(6月)
6月は種類によりやや異なりますが、ほぼ休眠状態になります。そのため水やり頻度や量を減らします。
量:鉢が充分湿るぐらい
頻度:2週間に1回(月2回ほど)
夏(7月、8月)
7~8月はすっかり休眠期になっています。そのため水やり量・回数が一年で一番少ないです。
量:鉢の表面が湿るぐらいか全くやらない
頻度:1ヶ月に1回ほど、またはほぼ水をやらない
秋(9月、10月、11月)
9月頃から休眠が覚めてふたたび生育が活発になってきます。少しずつ量と頻度を増やします。
量:鉢が充分湿るぐらい
頻度:10日~2週間に1回(月2~3回ほど)
10~11月は気温が下がり生育が一番盛んになります。量・回数共に春並みになります。
量:鉢底から流れ出るまで
頻度:1週間~10日に1回(月3~4回ほど)
冬(12月、1月、2月)
12月は生育がやや鈍くなります。そのため若干少なめにします。
量:鉢が半分湿るぐらい
頻度:2週間に1回(月2回ほど)
1~2月は気温が下がり冬型でも生育が鈍くなります。そこで12月や3月より少なめになります。
量:鉢が半分湿るぐらい
頻度:2~3週間に1回(月1~2回ほど)
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例外(特別な場合)
雨の日が続く場合
雨の日が続く梅雨時(6~7月)と9~10月の秋雨の時期は、湿度が高く土が乾きにくくなっています。
簡易ビニール温室や軒下などで雨ざらしにしていない多肉植物は水やりの必要がありますが、快晴続きの日に比べると水やり頻度が下がります。
たとえば2週に1回やっていた所を3週に1回にしたり、鉢底から流れるまでのたっぷりの量ではなく底から染み出さない程度にするなどです。
もちろん雨ざらしにしている多肉植物は雨が2日以上続く場合は、水やりをする必要はありません。
小さな苗、種まきの苗の場合
種まきから育てている苗で種まきから1~2年以内の苗(実生苗)は、成株へのあげ方とは異なります。それは小さな苗は貯水力が弱く、カラカラに乾かすと枯れてしまうことがあるためです。
このような苗は生育型や季節にかかわらず、少なめの量を与え続けます。
たとえばリトープスは冬型なので夏場は水をやりませんが、種まき1~2年以内であれば低頻度で少しの量を与えます。
種まきで育てる種類にはコーデックス(塊根植物)やメセン類、サボテンなどがありますが、不思議なことに小さな苗のうちは休眠期に水やりしても腐ったりしません。
冬に室内に取り込んでいる場合
冬に寒さで多肉植物を室内に取り込むことがあります。この場合、室内は暖かいため思いのほか土がカラカラに乾きます。
コーデックスなどでは長期に室内に入れる必要がありますが、塊根がしぼんでくることがあります。その場合は水やりが必要と判断し、少なめの量を低頻度に与えます。
しかし室内では日光不足で徒長しやすくなっているのでたくさんの水やりは禁物です。枯れないぎりぎりの量を見極めて水をあげましょう。
カット苗、挿し木の水やり
挿し木用のカット苗や葉挿し用の葉なども成株と同じ扱いにはできません。
挿し木用のカット苗は根が出るまで水やりは控えます。(注意:一部すぐに水やりする必要がある種類もあります。)根が出てきたら少しずつ水やりの量と頻度を上げていきます。
葉挿しは親葉がカリカリに枯れ、根が伸びてきたら少ない量から水やりを開始します。
植え替え・株分け後の水やり
植え替えや株分けなどで根を切っている場合、すぐに水をやると根が腐ることがあります。
そのため植え替え、株分けの後は1週間ほど待ち少なめの量から再開します。(注意:一部すぐに水やりする必要がある種類もあります。)
底に穴がない鉢の場合
ブリキの缶やガラスの器など、鉢底穴のない容器に植えている場合、水やりはどのように行ったらよいでしょうか?
この場合は一度水をしっかりやって、土の全体が湿ったら容器を傾けて余分な水分を捨てます。プールのようになってしまうとたちまち根腐れを起こしますので、しっかり水切りするようにしましょう。
夏も室内で育てている場合
冬場一時的に室内に入れることが多いですが、植物育成ライトなどで夏も室内で育てるケースもあります。
この場合、室内は外に比べて土の乾きが悪いので同じ種類でも、水やり頻度は落とし1回の量も少なくします。
エアプランツなどは顕著な例で、外では毎日水をじゃぶじゃぶ与えても、室内では数日に1回に抑えないと水分が多すぎになって腐ってしまう原因となります。
多肉植物の水やりの基本と目安のまとめ
- 鉢底まで乾いているかチェックすることが大切
- 生育期は土が乾いて数日後に水やり
- 休眠期は控えるか断水する
- 季節によって頻度と量が変わる
- 夏は涼しい時に、冬は暖かい時間帯に与える
- 葉に水をかけてよいタイプとダメな種類がある
- 水やりが必要なサインに気付く
よくある失敗が
- 土が乾いてすぐに水やりしてしまうこと
- 休眠中なのに水やりをしてしまうこと
です。
また先ほどの目安はあくまでも一例ですので、ご自身の環境や多肉植物の状態に合わせて最適な水やり方法を探ってみてください。