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挿し木(さし芽)とは
さし木は親株から茎を切り取って土にさし、根を出させて増やす方法のことです。多肉植物では葉からふやす葉挿しと並んで良く行われています。
さし木は木立する(立ち上がって茎が上に伸びていく)タイプの多肉植物に向いていて、初心者でも比較的簡単にでき成功率も高いです。
ほとんどの種類でさし木ができますが、一部できないものもあります。
メリット・デメリット
さし芽は葉ざしに比べると成長が早いが、葉挿しのように一気にたくさんには増やせません。また親株のコピーになるのでウイルスに感染しているとそのまま移ってしまいます。
また斑入りの場合、カットしたさし穂にはしっかり斑入りが伝わりますが、カットした親株に後から出る新芽に斑が入らないことがあります。
どんな風に育つのか?
さし木をすると、まず初めに切り口が乾燥ししっかり乾いた頃、切り口か葉をもいだところから白い根が出てきます。そこで土に植えて水やりをすると一気に根がのびて活着します(しっかり根を張る)。根が水を吸い始めるとカット苗の先端(芽)が成長を始めます
※挿し木と挿し芽は同じ意味で、挿し穂はカットした苗のことをさします。
Q&A
- 挿し芽はいつできる?・・・その多肉植物の生育期に行う
- かかる時間は?・・・種類によって異なる
- どこに置いたら良い?・・・直射日光の当たらない日陰で
- 切り口にルートンやロウはつけるのか?・・・切り口を塞いでしまうので避けて
- 土はどんなものを使ったら良い?・・・清潔な新品の土を使おう
- 根はどこから出る?・・・種類により切り口から出る、下葉を落としたもぎ口から出るの2つがある。方法のところで写真でも説明
- いつから水やりをする?・・・発根してから
- 親株はどうなる?・・・1~2ヶ月で新芽が出てくる
- 斑入りはどうなる?・・・基本斑入りになるが、切り取った親株から出た新芽には斑が入らないことがある
挿し木をする時に大切な6つのポイント
- 元気な株を選ぶ
- 時期を守る
- 清潔な土と道具を使う
- 発根まで水やりしない
- 茎をカットしたら原則乾かす
- 半日陰で管理する
元気な株を選ぶ
元気な株からとった挿し穂を選びましょう。根詰まりなどを起こして力がなくなっている株から取った挿し穂は、根の出方が悪く成功率も低くなってしまいます。
時期を守る
さし木はその多肉植物の生育期に行います。生育期は生育が旺盛で根が出やすく失敗が少ないですが、休眠期は根が出るのが遅かったり腐ってしまったりと、失敗する確率が高くなります。
清潔な土と道具を使う
根や茎をカットする際は切り口から病原菌が入るのを防ぐため、ハサミやピンセットなどを火であぶって殺菌しましょう。また病害虫が発生しないようにするため土は新品のさし芽用土など清潔なもの、雑草の種などが入っていないものを使いましょう。
茎をカットしたら原則乾かす
挿し穂用に茎をカットした場合は、一部例外があるものの基本はすぐ土に挿さないで切り口を乾かします。これは茎の切り口から細菌が入ったり腐ったりするのを避けるためです。
半日陰で管理
さし木の後はしっかり根が出るまで日なたに出したりせず半日陰で管理します。
挿し木の方法
- 新品の種まき・さし芽用の土
- 鉢
- スコップ
- 割り箸
- ハサミ
- カッター
- 殺菌剤
①挿し床を準備する
まずさし木したものを植えるための挿し床を作りましょう。病害虫をさけるため新品の種まき・さし芽用土を使いましょう。さし芽用土は細かくバーミキュライトのような無菌の土を使っているものが最適です。鉢も清潔なものを使います。
②挿し穂を作る
元気な親株から、清潔なハサミで5cm程度の枝を切り取り、下葉をむしります。そして4~5日間明るい日陰で切り口を乾燥させます。このとき挿し穂の曲がりを防ぐため、ゴロンと寝かせるのではなく、立つ状態で管理したほうが良いでしょう。
③土に挿す
切り口が乾いたら乾いた用土にさし穂をさしましょう。この後種類によりますが(目安は下記の表を参照)1週間から3週間程度発根するのを待ちます。
発根まで植えない方法
上記は発根を待たずに植える方法ですが、もう一つ発根まで植えない方法もあります。この場合、根が出るまで土に挿さず、挿し穂を立てたまま放置します。
④水やりを始める
発根を待たないで植える場合
根が出たら1回目の水やりを行いましょう。
発根まで植えない方法の場合
充分に根が出たら乾いた用土に植え付けてすぐに水やりを始めて大丈夫です。
さし芽の根はいつでるの?
根が出たときのサインですが、先端の葉が生長し始める、挿し穂を上に引っ張ると抵抗を感じる、などがあります。根を傷めてしまうので、毎日のように抜いてみて確認するのはやめておきましょう。
さし木の場合、根はどこから出るの?
実は根が出る場所というのは意外と奥が深いのですが、
- 種類によってカットした切り口から出るもの
- 下葉をもいだ「もぎ口」から出るもの
- 茎のあちこちから出てくるもの
があります。
左からグリーンネックレス(節から出ている)、アロマティカス(カット面から出ている)、星美人(葉をもぎとった後から出ている)
出方も色々で
- 複数本の根が出るもの
- 1~2本太い根が出るもの
- まっすぐの根、曲がった根、分岐した根
など様々ある。
そのため、切り口にルートン(発根促進剤)を塗っても意味がないものがあります。またカットした切り口から根が出るものも多いのでロウなどで固めてしまうと根が出なくなってしまいます。
しかしどこから根が出るかまでは書籍などにも載っておらず自分で実験しないと分からないものです。そのため管理人は切り口には何もせずそのまま待つようにしています。
⑤その後の管理
すぐに日なたに出すのではなく、初めての水やりから2週間程度は明るい日陰で管理し、徐々に親株と同じ環境に慣らしていきます。
また枝を切り取った親株の切り口付近からも、種類により1~2ヶ月程度で新しい芽が出てきます。親株から新芽が吹くのには意外と時間がかかる。そのため枯れてしまったなどと思って処分してしまうのはもったいないと思います。
さし木に向いているもの
多くの多肉植物がさし木で増やすことができます。特に上を向いているのが茎が長く枝分かれする木立性の多肉植物、クラッスラの一部やアエオニウム、セダムがその代表です。
挿し木に向いている種類があり、発根までにかかる時間や難易度も属によっても異なります。
また同じ属でも早い種類と遅い種類があるので早いもの~遅いもので記載しています。
属 | 日数 | 難易度 |
---|---|---|
グラプトペタルム | 1~2週間 | 簡単 |
セダム(軟葉系) | 3日~1週間 | 簡単 |
セダム(硬葉系) | 2週間~1ヶ月 | 簡単 |
カランコエ | 2週間~1ヶ月 | 簡単 |
エケベリア | 2週間程度 | 簡単 |
セネシオ | 2週間~1ヶ月 | やや難しい |
アエオニウム | 3週間程度 | やや難しい |
クラッスラの一部 | 2週間~1ヶ月 | やや簡単 |
コチレドン | 2週間~1ヶ月 | やや難しい |
パキフィツム | 2週間~1ヶ月 | 簡単 |
その他挿し木できるもの
クセロシキオス属、アプテニア属、アロエ属、ダドレア属、アドロミスクス属、ヒロテレフィウム属、センペルビウム属、グラプトベリア属、オトンナ属、セデベリア属、グラプトセダム属、フェルニア属、スタペリア属、セロペキア属、プレクトランサス属、カリシア属、ポーチュラカリア属、アナカンプセロス属、ブラウンシア属
挿し木に向いていないもの
アガベ属、モニラリア属、リトープス属やコノフィツム属、プレイオスピロス属などの玉形メセン類
さし木でよくある失敗の理由
葉や茎が腐ってきた
水やりが早すぎた、道具や土に雑菌がついていた、気温の高い時期に挿し木してしまった、などの原因が考えられます。挿し木は暑い季節は失敗しやすく、冷涼~穏やかな気候のほうがうまくいくことが多いです。またカット苗は根が出るまで水は不要で、根が出ないと水が吸えないため急いで水やりしないようにしましょう。
根が出ない
時期が不適切だった、下葉を落として置かなかったなどが考えられます。まず時期については冬や夏は根が出るのが遅くなるのが普通です。また下葉をもいだ口から根が出てくるものも多く、そのような種類は下葉をもぎとって置かないと根が出にくいです。
葉がしなしなになってきた
茎がシナシナになると困りますが、葉に多少しわがよるくらいなら心配はいりません。挿し木作業の終わり頃(根が出る直前)は体内の水分を使い果たして葉にもしわがよってきますが、根が出て水を与えればすぐに復活するので、それほど心配する必要はありません。
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