多肉植物は定期的に植え替えしないといけません。その理由や行う時期、必要なもの、植え替えの手順、植え替えで大切なポイント、その後の管理方法などについて解説しています。
目次
植え替えをする理由とは?
植え替えとは、鉢植えにしている植物に定期的に行うメンテナンス作業のことです。
鉢に植えている植物は地植えの植物と異なり、土に限りがあって根が一杯になってしまったり肥料を使い果たしてしまったり、空気が通らなくなってしまったりと土の劣化が起こります。それを取り除いて元気に生育させてあげるのが「植え替え」です。
- 根詰まりを解消する
- 硬く古くなった土を空気の入ったフカフカの土に新しくする
- 肥料や微量要素を補う
- 根に付く害虫や病気を発見する
- 根の生育具合を調べる
- 小さくなった鉢を一回り大きくする
植え替えの時期とタイミング
頻度
植え替えの頻度は、その種類の成長速度、株のサイズ、根の性質などによって異なります。
通常生育速度の早いものほど頻繁な植え替えが必要になります。また株のサイズが小さいもの(概ね口径9cmポット以下)は1年に1回、それ以上になると2年に1回ほどが目安になります。また根張りの弱いものは植え替え頻度は少なく、根が旺盛に伸びる種類はその逆となります。
時期(季節)
植え替えに最適な時期は、その種類の生育期の少し前~生育期に入る頃です。
多肉植物には春秋型、夏型、冬型の3種類がありますが、生育期に合わせて
- 春秋型は3~4月、9~10月頃
- 冬型は9~11月頃
- 夏型は4~5月頃
となります。
※これは関東以南の場合で、およそ温度が15℃~25℃程度の時期です。寒さが早く来て冬が長い寒冷地では、適切な温度になる時期にずらして行います。
基本的に休眠期や暑さ寒さの厳しい時は行いません。もし真冬や真夏に植え替えをすると生育緩慢期や休眠期に当たってしまい、その後根が伸びづらく、株が弱ってしまうことがあります。適期に行うことにより、新しい根が順調に伸び、その後の成長もよくなる効果が期待できます。
その他のタイミング
適期以外にも植え替えを行う場合があります。それは病気にかかったり根腐れしたりした場合です。
その場合は発見次第、鉢から抜いてダメになったところを切り落とし、健康な部分を残して植え替えます。
その他にも植え替えが必要なサインを出すことがあります。
- 鉢が簡単に倒れる(多肉植物が成長して鉢が小さくなった)
- 気根が出てきた(鉢が根で一杯になる根詰まりを起こしている)
- 下葉の枯れるスピードが早い
- 鉢底の穴から根がはみ出している
- 新しく出てくる葉が小さく本来のサイズより小さい
鉢が倒れるのは多肉植物が充分に成長し、鉢のサイズ(土の量)が小さくなってきたことを意味しています。また気根というのは茎から空中に向かって出てくる根のことで、鉢の中で根が伸びられない時に代替の根として出てくるものです。
鉢底から根が出てくるときはや下葉が枯れるスピードが早くなっている時、葉が小さくなるのも根詰まりや植え替えが必要なサインです。
このような場合は、ぜひ適期に植え替えてあげてください。
植え替えに適した土と鉢
適した土
土はその種類に適した粒サイズや素材のものを使います。
これまで使っていた土をリサイクルして再利用するのも問題ありません。ただその場合は、一度新聞紙などに鉢をひっくり返して土を全部出し、枯れた根や害虫がいれば駆除し、肥料を混ぜ込むなど処理は必要になります。
大きなサイズの鉢(概ね口径15cm以上)の鉢底には鉢底石を敷き、その上に土をいれるようにします。15cm以下の小さな鉢は鉢底石を入れなくても大丈夫です。
新しい土を使う場合、肥料が入っているか、粒サイズはその多肉植物に合っているか、どんな素材が配合されているかなどを確認します。100均の多肉植物用土や、ホームセンターで売っている多肉植物用の土、アマゾンなどの通販で買えるサボテン用土など、適度な水はけと通気のよい土で粒サイズが合っていれば何でも構いません。
また根腐れしやすい種類や、高温多湿になる夏の前の植え替えなどでは、根腐れ防止にゼオライトを少し混ぜるのもよい方法です。
適した鉢
鉢はサイズと素材に着目して選びます。
まず鉢サイズは植え替えたい株をいれて鉢と株の間に指1本が入るぐらいが最適です。大きすぎても小さすぎてもよくありません。
また鉢にはプラスチック鉢と駄温鉢のような陶器の鉢があります。
プラスチック製は軽くて水持ちがやや良く清潔(陶器のような多孔質の穴の中に病原菌が侵入しにくい)というメリットがあります。陶器の鉢はプラスチック製より水はけがよく、重みがあるのでプラ鉢だと倒れてしまうような上部の重い苗を植えるのに適しています。
肥料
肥料入りの土なら新たに肥料を入れる必要はありません。
市販の土には必ず肥料配合の有無が書いてあるので参考にしましょう。
肥料の入っていない土や、自分で作った配合土などにはマグアンプなどの緩効性化成肥料を入れたり、生育期にハイポネックスなど液肥をあげるとよいと思います。
植え替えに必要なもの
以下は用意するものの例です。
- 元の鉢か一回り大きな鉢
- 多肉植物の土
- 鉢底石・鉢底網
- スコップ・スプーン
- ハサミ・カッター
- 殺菌剤
- ピンセット
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大切なポイントと注意点
根をカットする際は切り口から病原菌が入るのを防ぐため、ハサミやピンセットなどを火であぶって殺菌しておきましょう。また病害虫が発生しないようにするため、土はリサイクル処理済みの清潔なもの、雑草の種などが入っていないものを使いましょう。
通常の植え替えではその多肉植物の生育期の少し前頃に行います。植え替え作業は株に負担をかけるので休眠期には行わないようにします。
植え替えする鉢の土はやや乾かし気味にしておきましょう。びしょびしょに濡れていると株を出す時根が切れてしまいがちです。一方乾かしすぎていると植え替えがしづらいです。
多肉植物の根や茎をカットした場合は、一部例外があるものの基本はすぐ土に挿さないで切り口を乾かします。これは茎や根の切り口から細菌が入ったり腐ったりするのを避けるためです。
根は葉や茎と違い、植え替え時にしか見ることができません。根がしっかり張っているか、枯れた根がたくさんないか、根ジラミがいないかなどをチェックします。
植え替えの手順
まず根鉢(土と根が塊になっているところ)を取り出します。なかなか出てこない時は、鉢を叩いたりもんだりすると取り出しやすくなります。鉢底から根が出ている場合は、飛び出した部分はカットせざるを得ません。
根鉢の写真
根鉢(抜いた苗と土が塊になっているもの)を丁寧にもみほぐすようにし少しずつ土を落としていきます。と同時に枯れ葉や傷んだ下葉なども摘み取ってあげます。その過程で根ジラミ(白い粉のような害虫)や根腐れしている部分がないかチェックしましょう。
左からエケベリアの根ジラミ、リトープスのカビ、ハオルシアの根ジラミです。
次に根を整理していきます。これは種類によって少し異なりますが、共通して茶色い枯れた根やつまむとフカフカして中身のない根(根の残骸)は除去します。
エケベリアなど
エケベリアなど細いひげのような根が生えているタイプは根を半分ほど切り落とします。切り詰めるのが怖い、どこまで切って良いか分からないという場合は、鉢に植え付けしやすい程度を残す(鉢の高さに入らない部分を切り落とす)とよいです。
茶色の根はすでに役目を終えているので外します。引っ張るとすぐとれる根は枯れているので除去し、白くて元気な根は傷つけないようにしましょう。この作業で根を切るので、切り口を乾かすためにすぐ植え付けず3~4日乾燥させます。ただ乾いた土に植えるのであれば、乾かさずにすぐに植え付けて問題ありません。
※細根タイプとはエケベリア、センペルビウム、セダム、パキフィツム、カランコエ、コチレドン、セネシオの一部など
セネシオなど
ここでセネシオやアロエなど、根が太くてひげのような根がほとんどないタイプは、根が取れやすくまた切れ口から腐ることがあるのでむやみに切らないようにしましょう。茶色い根で触るとふわふわしているものは枯れているので丁寧に取り除きます。根が乾燥が苦手な太根タイプはエケベリアなどと異なり、すぐに植え付けます。
※太根タイプとはアロエ、アエオニウム、ガステリア、ハオルシアの一部、アガベ、カランコエの一部、セネシオの一部など
鉢底に鉢底ネットを敷き、大きい鉢の場合はさらに鉢底石をいれてから土を3分の1ほどまで入れます。肥料の入っていない土を使う場合は、ここでひとつまみほど緩効性化成肥料を入れます。そして株を真ん中に据えて周りから土を入れていきます。
植え替え例(エケベリア・細根)
植え替え例(ガステリア・太根)
植え替え例(ハオルチア・太根)
植え替え後の水やりについて
植え替え後の水やりをいつするのか、どのくらい与えたらよいのかは諸説あるようで、人によっても異なるようです。管理人も色々な多肉植物やサボテンを植え替えた後、水やりをどうしたらよいのかとても悩みました。
そして現在では、
- 乾いた用土に植えた場合は、3日経った頃に水やりをする(いつもより少なめ)
- 少し湿った土なら1週間ぐらい経ってから水やりする(いつもより少なめ)
- アエオニウムやセネシオなどは即、通常の量の水やりをして発根を促進する
- セダムの万年草のような軟葉のものはすぐに通常量の水やりをする
の4パターンに分かれています。
また植え替えた後にすぐ水をやってしまうことも時々ありますが、根がしっかりしていれば腐ったり枯れたりすることはないようです。
植え替え後の置き場と管理
植え替え後、特に根を切っている場合は株の状態が弱っているので、すぐ日なたには出さず半日陰で1週間~10日ほど慣らせるようにしています。
植え替え後、すぐに日なたに出すと元気がなくなってしまったり、葉がシワシワになることがあります。
また鉢増し(根を切らないでそのまますっぽり鉢から抜いて、すぐに一回り大きな鉢に入れて土を足すタイプの植え替え)では、すぐに元の場所に置いて通常通りの量の水やりをしています。
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根腐れ・病気の場合の植え替え
病気や根腐れ、茎腐れなどになったときは、気づき次第植え替えをしますが、状況によっては助からないことがあります。
ポイントは傷んだ部分をしっかり除去することと、水やりのタイミングが通常より遅いことです。
下葉が腐っている場合は、腐っている葉とその周辺部も安全をみて取り除き、どろどろしている所は丁寧に全部取り除きます。根が腐っている場合は、腐って茶色くブヨブヨしているところ、赤くなっている所をしっかり切り取ります。取り残しがあるとそこから腐ってくるので、充分に健康な色になるまで切り詰めます。(根なら白く、葉や茎なら緑色の所です。)
この場合はすぐ植え付けず、1週間ほど空中で乾かします。この過程でまた腐り出したらすぐにそこも取り除きます。順調に乾いたらサラサラに乾いた土に植えてさらに1週間ほど経ってから水やりを始めます。
※茎と根が両方傷んでいる場合は切り落とし、健康な部分を挿し穂として挿し木で復活させますが、復活できないこともあります。
以下は軟腐病にかかったエケベリア「七福神」とエケベリア「ラウイ」の例です。
失敗しないためのコツとQ&A
すぐ水をあげてしまったら
カット苗を土に挿してすぐ水をやると結構腐ったり溶けたりしますが、植え替えの場合はすぐに水をやってしまっても、大抵の場合腐ったりトラブルが起きたりすることはありません。これは根があるかないかによるのだと思います。
植え替えの時は全部根を取り払ってしまう訳ではなく、生きた根はちゃんと残しているので、それらが水を吸ってくれます。
しかしあまりにもたくさん水やりしてしまって心配なようであれば、鉢を新聞紙の上に置いておくと新聞紙が水を吸って土の中の水分を減らすことができます。
植え替え後グラグラする
植え替え後、株がグラグラするのは根と土を分離させてしまっているため、根張りがない状態な点と、多肉植物の場合頭(枝先)が重いので不安定になりやすいという点があります。
根を張るまである程度グラグラするのは仕方ないですので、支柱などで支えたり、壁にもたれかかるようにして支えたりして安静にする必要があります。また鉢が小さく苗の量に対して土が少ない場合もグラグラするので、その場合は少し大きめの鉢にたっぷりの土で植えるようにするとよいと思います。
植え替えで枯れる・元気がない原因
植え替えで枯れたり元気がなくなってしまったりするのには、根を切りすぎてしまった、真冬や真夏など季節外れに植え替えしてしまった、植え替え後すぐに日なたに出してしまったなどが考えられます。
まだ植え替えになれていないうちは根は切りすぎないようにし、春や秋など穏やかな季節に植え替えるようにします。また日なたは体力を消耗するので、室内の窓辺か屋外の日陰に置くようにするとよいと思います。
根付かない時
根付かない理由には、根が伸びない=生育が緩慢になっているか根を伸ばす体力が残っていない、根の健康状態が悪い、などが考えられます。
弱った多肉植物を植え替えると更に元気をなくしたり、植え替えても根付かないなどが起こりますので、ある程度体力を付けてから植え替えるほうが安全です。また、根腐れして根の大部分を切らざるを得なかった場合などは、根付くのに時間がかかります。
葉がシワシワになる
葉がシワシワになるのは、まだ根づいておらず根から水分が吸えないのに葉から蒸散してしまって体内の水分が減っていることが考えられます。
この場合、根がある程度張るまでは動かさない、すぐ日なたに出さないようにしたり、ある程度根付いたら水を与えることが必要だと思います。
根は洗うべき?
根は根ジラミなど病害虫の心配がなければ洗う必要はありません。むしろ土を全部落とすと微細な根も切れてしまうので、適度に土が付いた状態のほうがよいです。もし根ジラミがいればその部分は落とすか、落とせない位置であればしっかり洗ったあとに速効性の殺虫剤をかけておきます。