目次
アリオカルプス属の写真
岩牡丹 | ||
玉牡丹 | 亀甲牡丹 | 黒牡丹 |
黒牡丹が土に埋まって咲く姿 | 亀甲牡丹・原生地での様子 |
※2段目以降の写真はWikipediaのアリオカルプス属のページから引用しています。
アリオカルプス属(Ariocarpus)の特徴
科 | サボテン科 |
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属 | アリオカルプス属 |
生育型 | 夏型 |
育てやすさ | 普通 |
成長速度 | とても遅い |
増やし方 | 種まき |
原産地 | メキシコ~北米 |
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
特徴
メキシコからテキサス州にかけて10種類ほどが知られているサボテンです。牡丹類と呼ばれる種類で秋に10cmにもなる花を咲かせます。サボテンの中では最も成長速度が遅いです。葉のように見える三角の部分はイボで葉ではありません。棘はありませんが、刺座(アレオーレ)だけが残っています。
牡丹類とは
形が牡丹の花に似ていることから、アリオカルプス属、ロゼオカクタス属、ネオゴメシア属の3属をまとめて「牡丹類」と呼んでいました。現在はロゼオカクタス属はアリオカルプス属に統合されて、牡丹類は2属になっています。
種類の紹介
アリオカルプス属である岩牡丹は直径15~18cm程度で三角形のイボの表面がつるつるしています。花は白か白桃色です。象牙牡丹はふっくらと肉厚で三角のイボにふわふわとした毛がつきます。花の色は薄ピンクです。三角牡丹はアリオカルプスでは一番大きく直径が20cmを超えます。イボが尖っており花は黄色かクリーム色です。
連山は旧ロゼオカクタス属のサボテンで菱形のいぼの中央に毛をたくさんつけています。いぼが特に大きいものを大疣連山といいます。同じくロゼオカクタス属の亀甲牡丹はイボにごつごつがあり毛が目立ちません。黒牡丹はイボに毛の筋が入り赤紫色の花が咲きます。標高1000~1500mに点在しており、現地ではほとんど土に埋まり上部のみが顔を出しています。
旧ネオゴメシア属であるアガベ牡丹は葉が細長く、肉質が柔らかいなどが竜角牡丹によく似ています。標高1200m程度の石灰岩の岩場に自生しており、やはりイボの先端以外は土に埋まっています。
育て方のコツ
高温を好み夏の至適温度は35~40℃で、冬に寒さに遭うと春以降の生育が悪く、できれば一年中温室に入れておくことが望ましいです。植え替えなども寒いと根が伸びないため、気温が上がってから行います。高温を好む一方原生地では半分土に埋まっているため日差しには弱く、ほとんど1年中半日陰程度への遮光が必要です。寒さが苦手で5℃以下では室内への取り込みが必要です。イボの間にカイガラムシが付き、それが発見しづらく手遅れになりやすいので、あらかじめ殺虫剤を撒いておく必要があります。とにかく生長がゆっくりで直径10~20cmに育てるにも10年、20年の時間がかかります。焦らず気長に育てていきましょう。
育て方のコツ
- 夏は半日陰にしかし温度は高温で育てる
- 冬は5℃を切ったら室内に取り込む
- やや難しく、雨ざらしにしないで育てる
- ゆっくり生長するので栽培は気長に
年間栽培カレンダー
生育型 | 夏型 |
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生育期 | 4~11月 |
休眠期 | 1~2月 |
緩慢な時期 | 8月,12月,3月 |
水やり |
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置き場所 |
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植え替え |
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増やす |
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肥料 |
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開花 |
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主な種類名
黒牡丹(クロボタン) | Ariocarpus kotschoubeyanus |
花牡丹(ハナボタン) | Ariocarpus furfuraceus |
亀甲牡丹(キッコウボタン) | Ariocarpus fissuratus |
ゴジラ | Ariocarpus furfuraceus ‘Godzilla’ |
姫牡丹(ヒメボタン) | Ariocarpus kotschoubeyanus ‘var. macdowellii’ |
三角牡丹(サンカクボタン) | Ariocarpus trigonus |
岩牡丹(イワボタン) | Ariocarpus retusus |
竜角牡丹(リュウカクボタン) | Ariocarpus scapharostrus |
カリフラワー | Ariocarpus retusus ‘Cauliflower’ |
玉牡丹(タマボタン) | Ariocarpus retusus |
連山(レンザン) | Ariocarpus fissuratus var. lloydii |
青磁牡丹(セイジボタン) | Ariocarpus furfuraceus var. brebituberosus |
象牙牡丹(ゾウゲボタン) | Ariocarpus furfuraceus var. magnificum |
アガベ牡丹 | Ariocarpus agavoides |
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育て方のポイント
水やり
水やりの基本
サボテンは水がいらないと思いがちですが、健康な生育のためには水やりが必要です。ただし土が乾いてから与えるのが基本で、梅雨時など鉢の乾きが遅いときは無理に与えません。また与えるタイミングにも注意が必要で、暑い季節は涼しい夕方に、寒い時期はこれから暖かくなる朝~午前中が適切です。
アリオカルプス属は高温を好み春から秋まであまり休まず生長するので、4~10月頃まで、他のサボテンより多めの水やりが必要です。一方冬は寒さが苦手で水を与えない「断水」が必要になります。断水はほとんど水をやらず月に1回ほど表土を濡らす程度の水やりを行う程度になります。
目安量
具体的には、多めの水やりといっても4~10月は土が乾いてイボが少し柔らかくなってから目安としては、週に1回程度与えます。鉢土が乾かないうちの水やりしてならず、特に6月は乾きづらいので少なめにします。しかし7~9月は生育期で水切れしないよう、春より多めの水やりになります。10月は春と同じです。やや寒くなるため11月は月2回程度イボが少し柔らかくなってから与えます。休眠に入る12~3月は断水気味にし月に1回程度少量与えます。他のサボテンは7、8月やや水やりを控えますが、アリオカルプス属はそれよりは多めに与える点が特徴です。
暑い時期は多めの水を与えても大丈夫とされていますが、日本の熱帯夜の覆い蒸し暑い環境ではやや危険です。また温度の上がりきらない4月などの春先は根が水を吸いきれず、腐ることがあるので慎重に行います。
種まきした株
実生株(種まきから育てている株)の1~2年目は冬に断水すると干からびて枯れることがあります。そのため週に1度暖かい日の朝に表土を湿らせます。
置き場
年間を通して遮光が必要
原生地では球体の上部以外がほとんど土に埋まっているので、日本の強い日差しが苦手です。日が強すぎると肌がきれいに育たないので、3月から11月までは50%程度の遮光が必要です。半日陰に置いても大丈夫です。
もう少しまめな管理ができるのであれば、3~4月まで20%遮光程度で良く、5~8月までが半日陰か50%遮光程度、9~10月までは20%遮光しその後は室内の窓辺などに置くなどのほうがよりきれいに育てることができます。遮光シートを22%程度のものと50%遮光シートの2つを買っておき、季節ごとに張り替えるとよいでしょう。または22%遮光ネットを3重に重ねれば半日陰程度にすることができます。
冬の管理
冬は完全に休眠させます。地域により11~12月から室内に取り込む際は、5℃以上が確保できる明るい窓辺で育てましょう。寒さにあてると春以降の生長が悪くなるので低温に気をつけましょう。やや暖かく過ごさせた方が春以降のスタートがうまくいきます。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
耐暑性は強いほうです。35~40℃で一番生育するので、温度を上げて育てましょう。一方強い日差しに弱いので、しっかり50%以上の遮光ネットを張りましょう。
夏も温室に入れておくことが望ましいですが、そのままだと非常に温度が上がるため換気が必要です。4月から11月までは簡易ビニール温室などの前部のビニールを開けておきましょう。
熱帯夜は苦手
また夏は高温を好みますが、昼間は暑く夜は涼しいという温度差が大切です。熱帯夜の日本は過ごしづらいですが、できる限り夜は涼しくさせるようにしましょう。またアリオカルプス属(牡丹類)は他のサボテンと比べて多湿にもやや強いですが、湿度が高くて高温という環境ではやや腐りやすくなります。
越冬最低温度と冬越し方法
耐寒性は弱いほうです。越冬最低気温は3℃ですが5℃以下で肌が傷むので、室内や温室などで保温します。
関東以北や寒冷地では、冬の室内への取り込みは必須になります。温室があれば加温設備が必要になります。室内であれば昼間は窓辺に置けますが、夜の窓辺はかなり温度が下がるため部屋の真ん中に鉢を移動させたり、段ボール箱をかぶせるなど工夫が必要です。
増やし方
他のサボテンと同じように種まきで殖やします。子株ができたら株分けでも殖やすことができますが、それまでに何年もかかってしまいます。
種まきの手順
種まきは5~6月の25~30℃を保てる時期に行います。温度が保てるのであれば、4~9月でも可能ですが設備などがない場合は5~6月が適しています。使う土は肥料のないもので無機的なもの、例えばバーミキュライト単体や赤玉土小粒などを使います。気温の高い時に行うものなのでカビや雑菌が繁殖しないよう、新品のものを使い熱湯で消毒してから使います。鉢に鉢底ネットを入れてその上に土を入れます。次に水を張った一回り大きないれものに鉢ごと浸けます。これを腰水(底面給水)といいます。充分土に水が行き渡ったら種を蒔きます。このとき土はかぶせないようにしましょう。その後ラップで覆い、半日陰に置きます。
発芽まではラップを開けませんが、直射日光下に置いて高温にしないよう、必ず半日陰か遮光下に置きます。早いものは1週間で発芽し、遅いものでも1ヶ月で出そろいます。発芽したらラップにプチプチと穴を空けて通気をよくします。高温にすると溶けるので注意します。8割程度発芽したら腰水を終了します。その後はだんだんと乾かし気味に慣らしていき、スプレーなどで霧吹きします。小苗のうちは乾燥に弱いので、カラカラに乾かさないように気をつけます。
サボテンの種まきについては別ページで解説しています。
サボテンの種まき方法
植え替え
4~5月が植え替えの季節です。秋も可能ですが、できるだけ生育期の4~5月に植え替えを行いましょう。アリオカルプスは寒いうちは植え替え後根が伸びにくいので、4月以降に行うようにします。
春に行う場合はこれから生育期を迎えるため根の伸びも早く、しっかり切り詰めますが、秋に行うのであればこれから休眠期に入りますので、根の切り詰めは春ほど行わず、4cm程度は最低でも残すようにします。
また9~10月が適期と書いてある場合もありますが、寒冷地ではそれより早く冬が来るため、8月から始めます。
植え替え頻度は直径5~6cmの小球で毎年、それ以上の大きさでは2~3年に1回です。植え替えでは茶色い根や傷んだ根を切り取りますが、白い元気な根は傷つけないようにします。
鉢のサイズは一回り大きいものにします。たとえば3号鉢が一杯になってしまった株は4号鉢か3.5号鉢などに植え替えるようにします。
植え替え手順
植え替え作業の数日間前は水をやらずに土を乾かしておきます。鉢を拳で叩いて抜き取りやすくし、革の手袋をした上で株を掴んでゆっくり引き出します。用土をもみほぐして根をハサミで切り詰めます。一回り大きな鉢の鉢底に鉢底網を敷いて軽石大きめを入れ、用土と少量の肥料をいれます。少し用土をいれて株を中央に配置し、周りに土を入れていきます。植え替えた株は日焼けを防ぐため、2週間程度は半日陰程度に遮光した所に置きます。
土と鉢
土は水はけと通気がよく、適度に水持ちがあるものを選びます。種類は赤玉土、日向土、川砂、ピートモス、パーライトなどを混ぜて使います。酸度pHは中性から微酸性程度のものを使いますが、強いアルカリ性、強い酸性以外のものであればそれほど選びません。配合して使う場合は、3種類以上の土を混ぜましょう。ピートモスは酸性、くん炭はアルカリ性を示すので大量の配合は避けます。
アリオカルプス属は真夏の暑い時期に水をたっぷり与えます。そのため蒸れやすく根腐れの心配が大きいです。中でも水はけの悪い用土で夏越しするのは危険で、春に植え替えて土の状態を良く保つ必要があります。
鉢のサイズ
サボテンは鉢のサイズがとても重要です。鉢が大きすぎると土や根の温度が上がりづらく、また過湿になりがちで生育がよくありません。かといって小さすぎも問題で根が伸びるスペースがなく水もすぐに乾いてしまいます。そこで丁度いいサイズの鉢に植えて生長したら植え替えていくのが王道的な栽培方法です。ちょうどよいサイズとは、鉢に苗を入れてみて鉢との隙間に指が1~2本入る程度です。
ただ牡丹類は地上部のサイズに比べて根が大きいので、比較的大きめの鉢を使います。鉢の素材はプラスチック鉢でカラーは温度の上がりやすいブラック(黒)が適しています。
肥料
生育中は肥料を与えます。5月から10月にかけて月2回程度、1回の水やり代わりに液肥を与えます。植え替えを行う場合は同時に土に緩効性肥料(N-P-Kが6-40-6など)を混ぜ込んでも良いでしょう。
アリオカルプス属はサボテンの中では一番成長が遅いグループです。そのため水や肥料を多く与えて大きくしようとしても、腐りやすい軟弱な株になってしまいます。そのため無理に大きくしようとせず、ゆっくり生長を見守ることが大切です。
病害虫
イボの間にカイガラムシが湧きやすいので、浸透移行性の殺虫剤をあらかじめまいておきましょう。3~4月に1回、8月に1回噴霧するかばらまきます。またハダニが付きやすい種類もありますので、殺ダニ剤を散布する必要があります。
開花
珍しい秋咲きで9~10月にピンクや白で、体の大きさに合わないような大きな花を咲かせます。生育期の水やり不足、施肥が少ない、日照不足などで花付きが悪くなります。つぼみが付かない場合は、それらの原因を疑いましょう。また生長が非常にゆっくりなので開花するまで4~8年かかります。育て方が悪いのではなく、単に栽培年数が足りないためかもしれません。