このページでは、コーデックス類のアデニウム「オベスム」(砂漠のバラ)を種から育てる方法とその実践結果を記録しています。コーデックス類の種まきはアフリカ亀甲竜に次いで2回目です。アデニウムの実生はコーデックス類の中では一番簡単で失敗率も低く種まき初心者でも成功率が高いようです。ぜひ挑戦してみてください。
目次
アデニウムを種まきから育てる
アデニウム「オベスム」の種子
種まきから植物を育てることを実生(みしょう)といいます。また種まきで育てた株を実生(株)と呼ぶこともあります。コーデックス類は種まきの他に挿し木でも育てることができますが、挿し木だと塊根が膨らまないというデメリットがあります。そこで多くの場合、種まきからじっくり育てます。
種まきには以下のようなメリット・デメリットがあります。
- アデニウムの塊根を太らせることができる
- 一度にたくさんの苗を得られる
- ウイルスに冒されていない株を作れる
- 親株と異なる特徴が出るため、好みの種類を選抜できる
- 腰水や遮光といった管理が成株より大変
- 大きくなるまでに数年の長い時間がかかる
- 高温多湿の環境なのでカビが蒸れなどに注意が必要
種まきから育てるのは、既に大きくなった株を育てるより大変です。しかし成長過程を目で見て試行錯誤しながら育てるのは、やりがいが有り楽しいものです。
早速アデニウムの種まきの詳しい方法や必要なものについてみていきましょう。
アデニウム(砂漠のバラ)の実生で大切なポイント
アデニウムの実生にあたって既に実生を実践され、成功されている様々なブログを参考にさせていただきました。ありがとうございます。
そこで以下のようなポイントが重要だということが分かりました。
- できるだけ新鮮な種を手に入れる(半年以内が最高によい)
- 発芽には昼夜共に気温が高くなり20~25℃の温度が保てること
- 発芽までは100%近い湿度と湿った環境が必要なこと(蓋がいる)
- 1~2ヶ月程度は水を切らさないようにする
- 好光性の種子なので覆土はしない
- 土の殺菌処理はしなくてもよい
- 蒔いた種は上から殺菌剤をスプレーする
- 細かめで根が張りやすい適度に保水性がある用土を選ぶ
- 直射日光下ではなく半日陰で管理する
新しい種を入手
アデニウムに限らず、コーデックス類の実生には新鮮な種を用意することが大切です。その年咲いて採れた種を蒔く「採りまき」をするか採取後半年以内に蒔くのが一番よいようです。メセン類などは1年寝かせたものが発芽率がよくなりますが、アデニウムの場合は異なるので気をつけましょう。
25℃程度を維持する
発芽後と芽の成長には高温が必要で、20℃できれば25℃程度の温度が保てることが必要です。関東以南では6月に蒔き、寒冷地では1ヶ月ほど遅らせて考えます。
覆土はしない
発芽まではラップなどで覆いをかけて100%近い高湿度を保つ必要があります。アデニウムは好光性の種子で光がないと発芽しないため覆土(土をかぶる)はしません。覆土はしませんが、土に少し押しつける形にすると吸水性があがり発芽率が良くなります。
比較的カビにくい
アデニウムはパキポディウムなどよりはカビにくいようで、特に土や種子の殺菌などはしなくてもよいとのことでした。しかし高温多湿の状態を続けないといけないので、カビのリスクは高まります。できれば殺菌剤で土やタネを消毒した方が安全です。また、種を蒔いた後はベンレートなど殺菌剤を散布します。
小粒の土
根が細く弱いので、使用する土は小粒の土が適しています。肥料分のあるものはカビや藻の原因になるので適しておらず、赤玉土単体や日向土単体などの無肥料の土を用います。ある程度保水性があるさし芽・種まき用土などを使う方もいらっしゃるようです。
また発芽したての芽は直射日光に弱いので、50%遮光下か半日陰に置きます。
ここまでがアデニウムの実生で大切なことです。他に種まき共通で大切なことがあります。
実生共通で大切なポイント
- 親株(成株・充分大きくなった株)とは異なる育て方をする
- 堆肥や有機肥料はカビの原因になるため使わない
- 使い回しではなく新品の用土を使う
- 念のため土は熱湯消毒してから使う
- 移動しても土が崩れない硬質ポットを使う
こまめの水やりが必要
種まきから育てて1~2年経過するまでは、成株とは全く異なる育て方をします。アデニウムは夏型コーデックスのため、冬(休眠期)には断水させ(ほぼ水をやららない)生育期に水を与える方法をとりますが、種から育てていてまだ小さい小苗・幼苗は水切れに非常に弱いので、休眠期も断水させません。少しずつの水をこまめに与えます。
肥料は少なめに
種まきで使う土は肥料分がない土かごく少ない土にします。特に堆肥やぼかし肥料などの有機肥料は大量のカビが生える恐れがあるので絶対に使わないようにします。また発芽するまでの期間などは絶対に肥料を与えません。発芽から数ヶ月たったら徐々に緩効性化成肥料を与えるのはOKです。
新品の土を使う
用土は新品で清潔なものを使います。他の株を植えていたものや庭の土、病気が出た土、虫の卵や雑草の種などが混入している恐れのあるものは使いません。さらに新品の用土も熱湯消毒してから使うようにします。
硬質のポット
種まきするポットはなんでもよいのですが、移動が多いのでできれば持ち上げたときに形の変わらない硬質ポットが適しています。プレステラというプラスチック鉢を使う方が多いようです。
種まきに適切な時期
砂漠のバラ(アデニウム オベスム)の種まきの適期は20~25℃を安定的に保てる時期です。これが何月かはお住まいの地域によって若干異なってきます。
4~5月は早い
関東(東京)では4月は最高気温の平均が19.6℃、最低気温平均が10.4℃、平均気温が14.7℃のためまだ寒すぎることが分かります。暖地(福岡)でもまだ低く、また寒冷地(宮城)はもちろんまだです。
参考→多肉植物の4月の状態と育て方・するべきことの気温一覧より
それでは5月はどうでしょうか?
関東(東京)では最高気温の平均が24.8℃、最低気温の平均が15.9℃、平均気温が20.0℃となっています。暖地(福岡)も同じくらいで、寒冷地(宮城)は21.7℃、12.5℃、16.7℃です。まだ5月は気温が低すぎることが分かります。
参考→多肉植物の5月の状態と育て方・するべきことの気温一覧より
6月が蒔き時
それでは6月はどうでしょうか?
また6月になると関東は最高気温26.4℃、最低気温19.2℃、平均気温22.4℃とちょうど良くなったことが分かります。
参考→多肉植物の6月の状態と育て方・するべきことの気温一覧より
そのため関東以南では5月下旬から6月上旬、寒冷地では6月下旬以降に蒔くのが一番よいのではないかと考えました。
種まき(実生)に必要なもの
アデニウムの種まきではこれといった正しいやり方はなく、人それぞれやり方は異なり必要なものも変わってきます。ここでは、当サイトの実生でよく行っている方法をアデニウムにも当てはめて実践してみました。
- 種をまく鉢
- 鉢をすっぽりいれられる容器
- 細かい種まき用の土
- カビ防止用の殺菌剤(ベンレート)
- ラップ
- 土の消毒用の湯1L以上
- 霧吹き
その他、土を混ぜるための「丈夫で透明な袋」、お湯を注ぐ「オタマ」、ベンレートを水に混ぜるための「空きペットボトル」などが必要です。
鉢の用意
このページでは誰もが入手しやすく安価な器具として、1番の種を蒔く鉢には「プレステラ90」というプラスチック鉢を、2番の鉢をすっぽりいれられる容器にはプラスチックケースを準備しました。今回土の消毒は行い、プレステラに土をいれてそこにお湯をかける方法をとりました。※プレステラは直接お湯を注いでも溶けません。(実験済み)
土の種類と配合
土は様々な意見があり、赤玉土を単用する方や、市販のさし芽・種まきの土を使う方、色々な種類を混ぜてこだわる方などさまざまで、これといった正解はないようです。ただ共通するのは、肥料は入れないということです。
また種のサイズに合わせて土の配合も変わります。今回アデニウムでは、底には鉢底石としてコーデックス用ブレンドの粗めの土を、中間には花ごころのさぼてん多肉植物の土を使うものと、通常の多肉植物の培養土を使うもの2通り、表土には市販のさし芽・種まき用を使うことにしました。
このような配合にしたのは、底の土は水はけをよくし、中間では根がしっかり張れるように細かめの土にし、上部では根が潜り込みやすいように細粒の土を入れた方がよいのではないかと考えたためです。
2パターンを用意し、どちらが根張りがよく大きく育つか実験も兼ねています。
コーデックス用ブレンド
自分で配合した土です。小粒で赤玉土・ボラ土(日向土)・パーライトを1:1:1で混ぜ合わせたものです。パーライトは土を軽くし水はけをよくするために入れました。
通常の培養土
自分で配合した土です。細粒~小粒の赤玉土・日向土・ピートモス・バーミキュライト・パーライトを1:1:1:1:1で入れたものです。中間に使うので、水はけと適度な保水性を重視しました。
花ごころ さぼてん多肉植物の土
市販の土です。軽石・バーミキュライト・ゼオライトの細粒でできており肥料分が入っていないものです。「通常の培養土」より細かいです。ゼオライト配合で水を腐りにくくさせる点を重視しました。
花ごころ さし芽・種まき用土
市販の土です。バーミキュライト・パーライト・ピートモス・鹿沼土が入っており肥料分が入っていないものです。粒の大きさは花ごころさぼてん多肉植物の土と同じくらいですが、ピートモスと鹿沼土が入っていてふわふわとやわらかいのが特徴です。
費用と入手先の参考
種をまく鉢は土をいれてアデニウム オベスムの種を蒔きます。そして鉢をすっぽり入れられる一回り大きないれものに水を張って、種まきした鉢を浸けます。これを腰水といいます。腰水については別ページで解説しています。
ベンレートは殺菌剤でカビ防止に使います。粉状なので水に溶いて種を消毒したり、腰水の水にも使用します。
アデニウムの種はどこで入手する?
砂漠のバラの種子はネット通販で購入することなります。自分で親株を育てており自家採取できるならそれが一番よいですが、それができない方はヤフーショッピングやヤフオク、メルカリなどで入手します。
また大量に種を購入する場合は、ケーレスなど直接海外のサイトから購入する方法もあります。ただこの場合検疫の費用がかかるため、少量なら多少割高でも国内の販売業者から購入した方が安くなります。
アデニウムなどのコーデックス類は鮮度が大切なので、信頼がおける販売者を選ぶことが大切です。できれば自分でも同じ種を蒔いていて、親株の画像なども写している出品者が一番良いですが、ない場合は採取した年月が分かるもの、取り扱い数が多くて在庫の回転の速い出品者が安心です。
なお、管理人の場合はメルカリで出品者も自分で同じ種を蒔いている方から購入しました。
メルカリでも多肉植物の種を多数取り扱っています。 メルカリで新規登録する方は、お友達紹介コードの入力で、メルカリの購入で使える500円分ポイントがもらえます。 よろしければ、下記のコードをお使いください。
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砂漠のバラ(オベスム)の種まきの実践
時期
コーデックス類には冬型と夏型のものがありますが、アデニウムは夏型なので4月下旬から9月頃に蒔きます。管理人は簡易ビニール温室内で25~30℃を保てる(ただし昼間のみで夜は気温と同じまで下がってしまう)ため、4月中旬に蒔くことにしました。
事前準備
種蒔き用のプラスチック鉢「プレステラ90」に挿すラベルを準備します。他に色々タネを蒔いた場合、どの鉢がなんの種類か分からなくなってしまうので、何らかの方法で区別できるようにしておきましょう。
腰水(底面吸水)用の容器は家にあったプラスチックの箱です。
カビや腐敗、雑菌防止のため、器具や鉢や鉢を入れる容器など、洗えるものは全て洗いましょう。鉢は前に何か植わっていたものの流用ではなく、新品のものを使うのが望ましいです。
土を鉢に入れて消毒する
土の消毒方法はいくつかありますが、プレステラに土をいれて上からお湯をかける、レンジ対応容器などに土をいれて湯気が出るまで加熱する、などのいずれかを行った後に殺菌剤であるベンレート1,000倍溶液を使って消毒します。
今回は、先ほどのように2通りに分けて土を準備しました。
中間の土を入れます。左が通常の培養土、右が花ごころさぼてん多肉植物の土です。
充分にお湯を注ぎます。土の構造が壊れてしまわないよう、ゆっくり丁寧にお湯を注ぎます。鍋で沸かしたお湯をオタマで注いで消毒します。湯気がでるまで何度も注ぎましょう。湯気が出て充分消毒できたら、底面吸水用のいれものに鉢を浸けて、ベンレート水をかけます。
ベンレート0.5gを500mlの水で薄めます。(1,000倍)
ベンレート1,000倍溶液は土に水代わりに土にかけてよく、また鉢をつけるための腰水の水にそのまま使ってOKです。
鉢が1~1.5cmくらい水に浸かるようにすればOKです。(※他の種まきの写真を流用しています。)
タネを蒔く
土が冷えたのを確認してから、種を蒔きます。熱湯消毒後はかなり長い時間熱を持つので土は充分に冷やします。
種まきの方法は人により、メネデール100倍液に一晩浸ける、水に半日浸ける、何もしないなど様々ありますが、今回は殺菌剤のベンレート水に1日(24時間程度)浸けてから蒔きました。
1つの鉢に何十個も蒔く方もいますが、後々植え替えが大変になるので、ある程度間隔を空けて蒔くほうが良いと思います。今回はプレステラ1個に5粒ずつに分けて蒔きました。
覆土は行いませんが、少し土に押しつけるようにして蒔きました。また湿度を保つため種まき後はプラスチック容器で覆いました。
発芽までの日数は
発芽までの日数は差があるようで、早いと3日~5日、1週間~数週間から1ヶ月かかるとするケースがあるようです。ただどの種類にも言えることですが、遅れて発芽する種子もあるので、蒔いてから1ヶ月程度は諦めないようにしましょう。
オベスムは発芽させること自体は難しくなく発芽率もよいようで、湿度と温度の条件さえ整えば割と発芽させやすいそうです。
置き場所(遮光環境)と水やり(腰水)
ラップをして穴をプチプチあける、霧吹きするなど始終土がしっとり濡れている状態にします。上から水をじゃぶじゃぶ掛けるとタネが流れてしまうので、腰水(底面吸水)を行います。
鉢は半日陰に置き、発芽後も半日陰(50%遮光)に置きます。アデニウムの成株は真夏もあまり遮光せず育てますが、種まきした苗は決してすぐ日なたに出さないようにしましょう。
今回の実践では、簡易ビニール温室の最上段に置くため、60%遮光ネットを2枚重ねました。
また暗い室内などに置いたままだと、ひょろひょろになってもやしのようになってしまいますので、室内での管理は難しいです。
発芽が揃ったら徐々にラップや蓋を外し外気にさらすようにします。
始終水を張った容器に鉢を浸ける(腰水)のは1~2ヶ月で終了します。その後の水やりは、土が半分ぐらい乾いたら鉢を水に浸けて充分に水を吸わせる方法をとります。
3ヶ月以上たったら苗もしっかりしてくるので、上からの水やりに切り替えます。
アデニウム「オベスム」の実践記録
1ヶ月目(4月)の様子
4/9にタネを24時間ベンレート水に浸けてから、4/10に播種しました。気温は最高気温23℃程度ですが、簡易ビニール温室の中は昼間33℃程度まで上がっています。大体9時から16時ぐらいまで日が当たり、25~35℃を保っています。
夜になると最低気温が14℃程度まで下がり、簡易ビニール温室内もそこまで下がります。
4/12、早くも一つ目に変化が見られました。種が膨らみ棒状の種の端から白い根のようなものが見え始めました。
4/13、3つに同じような変化が見られました。
4/14、発芽が開始しました。
4/17、10個中7個が発芽してきました。苗が立ってその先がラップにくっつくため、別の腰水容器に移しラップを撤去しました。
現在見えているところは塊根になる部分のようで、葉はその先にほんの小さくくっついているようです。
4/21、寒くなったせいか途中で発芽が止まってしまいました。それで一時的に室内に入れ、猫用の保温マットで加温しました。加温したところ、発芽がすぐに再開し4/22に7個が正常に発芽を完了しました。
4/26、カビが出そうなのでベンレートのスプレーを開始、またラップを剥がしました。
4/27、本葉が見え始めました。1つ双葉がない苗がありますが、それは種の殻を外してやろうと思って引っ張ったところ、葉がちぎれてしまったものです。
2ヶ月目(5月)の様子
パキポディウムは成長が止まってしまったかのようになっていますが、アデニウムの生育は順調です。どちらも25℃以上が推奨されていましたが、アデニウムのほうが低温に強いようです。
5/7、4/28以降本葉が順調に育っており、大分しっかりしてきました。双葉と塊根部も大きくなっています。
5/7、置き場所を少し変更しました。直射日光を22%遮光ネット2枚で遮った所に置きました。照度計で測ってみると晴天で1万ルクスぐらいです。水やりは腰水をやめて、時々底面吸水させる形にしています。(乾きやすい土の場合はこまめな底面吸水が必要そうです。)また、藻が生えそうなので、オーソサイド水和剤を土にスプレーしました。
5/18、アデニウムは順調に育っています。本葉がかなり大きくなってきました。
葉がよれよれしているのが気になります。薬害でないとよいと願っています。現在は底面吸水ではなく、上から水を与える普通の方法で水やりしています。頻度は10日に1回程度です。(保水性の少ない土の場合はもう少し高頻度にしたほうがよいと思います。)
管理は引き続き戸外です。
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