目次
オプンティア属の写真
金烏帽子(バニーカクタス) | 銀烏帽子 | |
オプンティア属(Opuntia)の特徴
科 | サボテン科 |
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属 | オプンティア属(Opuntia) |
生育型 | 夏型 |
育てやすさ | 育てやすい |
成長速度 | やや遅い |
増やし方 | さし芽(葉挿し)、株分け、種まき |
原産地 | アメリカ大陸、ガラパゴス諸島 |
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
特徴
カナダからアメリカ、アルゼンチンの広い範囲に自生しているサボテンで250種というサボテンで最大級のグループです。南米というと暖かいイメージですが、高山性のサボテンなので寒さに強く冬に戸外で栽培できるものもあります。ウチワサボテンの典型で、平たい葉の先に子株をつけて少しずつ大きくなっていきます。サイズは数センチのものから1メートルを超える大きさのものまであります。
ウチワサボテンの代表種
ウチワサボテンは実は3種類のグループ分けがあり、茎節の形で扁平ウチワ、棒状ウチワ、球状ウチワがあります。その中で扁平ウチワが「オプンティア属」です。球状ウチワにはテフロカクタス属とコリノプンチア属の2属があるのですが、ウチワサボテンではないような見た目です。
種類の紹介
100均などでもみかけるオプンティアには銀烏帽子があります。象牙団扇、白桃扇とも呼ばれうさぎの耳に似ていることから「バニーカクタス」ともいわれたりします。よく子株がつきどんどん広がって増えるので、繁殖も簡単で楽しめます。似たオプンティアとして、ゴールデンバニーと呼ばれている金色の棘の金烏帽子もあります。
また墨烏帽子(スミエボシ)は棘のないサボテンで手を挙げているように見えるため「万歳サボテン」の名前で親しまれています。その他庭植えなどでは「大丸盆」という大型の種類もあります。これはいわゆるウチワサボテンで、生育旺盛で1年間で30cmの茎節がある大株になります。
育て方
寒さと暑さに強く丈夫で育てやすく、サボテン初心者も枯らさずに栽培できます。オプンチアは園芸店やホームセンターなどで販売されているのをよく見かけます。繁殖力も強いので、葉を切り取って葉挿しにするとどんどん殖えます。サボテンなので風通しよく、しっかり日に当てて育てるのが大切です。
育て方のコツ
- 日当たりと風通しのよいところで育てる
- 寒さに比較的強いが0℃を下回る時は室内へ入れる
- サボテンだが生育期はたっぷり水をやる必要がある
- トゲに返りがあり刺さると抜けにくいので、素手で触らないようにする
年間栽培カレンダー
生育型 | 夏型 |
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生育期 | 3~6月と9~11月 |
休眠期 | 12~2月 |
緩慢な時期 | 7~8月 |
水やり |
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置き場所 |
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植え替え |
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増やす |
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肥料 |
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開花 |
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※栽培カレンダーはあくまでも目安です。実際は土や鉢の種類、地域によって大きく異なります。地域や使っている土、置き場所によって適宜読み替えて下さい。
主な種類名
オプンティア属
大丸盆(オオマルボン)・ロブスタ | Opuntia robusta |
銀烏帽子・象牙団扇(ゾウゲウチワ)・白桃扇・バニーカクタス | Opuntia microdasys var.albispina |
金烏帽子(金烏帽子)・ゴールデンバニー | Opuntia microdasys |
墨烏帽子(スミエボシ) | Opuntia rubescens |
金武扇(キンブセン) | Opuntia dillenii |
白鶏冠(ハクケイカン) | Opuntia clavarioides f.cristata |
初日の出(単刺団扇)(ハツヒノデ) | Opuntia vulgaris |
エキオス | Opuntia echios |
ガラパゲイア | Opuntia galapageia |
バシラリス | Opuntia basilaris |
テフロカクタス属
※ウチワサボテンの種類
松笠団扇(マツカサウチワ) | Tephrocactus articulatus |
蛮将殿(バンショウデン) | Tephrocactus alexanderi |
ゲオメトリクス | Tephrocactus geometricus |
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育て方のポイント
水やり
水やりの基本
サボテンはあまり水が要らないように思われますが、元気に生育させるためには生育期のしっかりした水やりが必要です。水やりが少なくても枯れませんが、成長速度が遅くなります。オプンティアは特に生育が早く、水やりは大切です。
土が乾いてから与えるのが大原則で、梅雨時など鉢の乾きが遅いときは無理に与えません。また与えるタイミングにも注意が必要で、暑い季節は涼しい夕方に、寒い時期はこれから暖かくなる朝~午前中が適切です。
季節ごとの水やり
3~7月上旬は一番の生育期です。土が乾いたら鉢底から流れるまで与えて大きく育てましょう。ただ6月の梅雨の間は水が乾きにくいので、土が乾くまで水を与えません。7月中旬~8月いっぱいは暑さのため生育がやや鈍ります。土が完全に乾いてから数日後に十分な水を与えましょう。9~11月は春に次ぐ生育期です。土が乾いたら鉢底から流れるまでたっぷり与えます。12~2月は寒さのため休眠します。1ヶ月に1回の霧吹き、2月は断水(一切与えない)しますが、室内で5℃以上を保っているときは月1回ほど少なめの水やりをします。
注意点
生育期は充分な水やりが必要とはいえ、多すぎる量を与えると徒長を起こします。オプンティアの徒長の場合、茎節が分厚くなり緑色が鮮やかになりパンパンになります。次第に棘と棘の間が開いてしまいます。そうすると元には戻せませんので、生育期といっても乾いたら毎回たっぷりの水やりをするのは、避けたほうがよいでしょう。
サボテンは僅かな雨季に一年の大部分の水をため込む様にできているのですから、頻繁な水やりはしすぎとなってしまいます。
置き場
置き場所の基本
年間を通して雨の当たらない風通しのよい所に置きましょう。0℃を切ったら室内へ取り込みます。一年を通して日光が重要ですが、冬場は特に日差しが弱いので充分な時間日に当てるようにしましょう。
また原生地では昼は35℃まであがり夜は10℃近くまで下がるなど温度差が激しいです。できれば寒暖の差を付けられる場所に置けると理想です。
生育期の置き場
4~5月は直射日光の当たる屋外でたっぷり日光に当てましょう。6~8月は日差しが強いためやや遮光(半日陰に置くか、50%遮光シートをかけるなど)して育てます。9~11月は直射日光のあたる屋外に置くのが基本ですが、猛暑の年で残暑が厳しく日差しが強い場合は遮光をします。寒さには割と強いほうです。
休眠期の置き場
12~2月は基本的には雨の当たらない屋外に置きますが、0℃以下の場合は日当たりの良い窓辺や温室に入れるようにします。室内に取り込む場合は、窓辺に置いて最短一日4時間は日が当たるようにしましょう。室内では窓に向いている面にしか日が当たらないので、1週間に1回程度、鉢を半回転して両面に当たるようにすると、株の傾きを防ぐことができます。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
有星類(アストロフィツム属)と比べると耐暑性は強いほうです。半日陰であれば実測値40℃も普通に耐えます。しかし過湿には弱く、真夏に通気の悪い環境に置いていると根腐れすることがあります。また水はけのよい用土でゼオライトを入れておくと、根腐れを防ぐことができます。
夏の水やりは注意が必要です。暑い時間に水を与えると、水がお湯にようになってしまい根が煮えてしまうことがあります。必ず夕方など涼しくなった時間に行います。量も春秋より少なめです。水をやった後は数日遮光しておくと温度の上がりすぎを防げます。
越冬最低温度と冬越し方法
最低越冬温度は0℃とされています。最低温度を0℃以上安全をみて3℃以上を保つようにしましょう。有星類(アストロフィツム属)や牡丹類(アリオカルプス属)などと比べると耐寒性は強いほうです。大型のオプンティアである「大丸盆」などは耐寒性があり、関西以南では地植えすることができます。
夏もですが、冬も水やりを控えると樹液が濃くなり耐寒性、耐暑性が共に上がります。そのためにも水やりは極力控えることが大切です。水を与える場合は、暖かい日にそして水やり後は耐寒性が下がって凍りやすくなるため、数日は夜のみでも室内にいれたほうが安全です。
寒冷地など毎晩マイナスになる地域では、暖房設備のある温室がないと戸外での栽培は難しいです。量が少なければ室内の窓辺に取り込めますが、夜間は窓際が寒くなりますので、室内の真ん中に寄せるなど工夫が必要です。関東以南や暖地でもマイナスとなる寒波が来ることがあるので、その間は室内に取り込みます。
増やし方
他のサボテンと同様種まきで殖やすことができますが、葉を適当なサイズに切って殖やす葉挿しも可能です。種まきは4~8月の暖かい気候の間で可能です。温室などを用意できればもう少し長く種まきできます。葉挿し(茎節さし)やさし芽の場合は3月半ば~6月頃が適期です。
葉挿し(茎節挿し)
オプンティアは葉挿しがしやすい種類です。葉挿しは葉(茎節)を1枚もいで土に挿すと発根してくるほか、1枚の葉を適当なサイズに切って土の上に置いておくことで新しい子株を出すことができます。このとき子株は棘のある所から出てきます。根も同様に土においた側の棘の部分から出てきます。また親株のもぎ口からはしばらくするとまた茎節が吹いてくるのでそのままで問題ありません。
種まき(実生)
種まきではバーミキュライトや赤玉土小粒などを使います。土は新品の清潔なものを使い、念のため熱湯などで消毒します。種は土の上にばらまきをして覆土はしません。その後腰水(底面給水)または毎日霧吹きで管理します。どちらの場合も発芽するまではラップで鉢を覆い湿度と温度を保ちます。
置き場所は日陰か50%遮光下にします。発芽し始めたらラップにプチプチと爪楊枝などで穴を通気をよくします。8割程度発芽したら腰水を終了します。その後はだんだんと乾かし気味に慣らしていき、スプレーなどで霧吹きします。小苗のうちは乾燥に弱いので、カラカラに乾かさないように気をつけます。
サボテンの種まきについては別ページで解説しています。
サボテンの種まき方法
植え替え
繁殖力の強いオプンチアでは植え替えが大切です。3月から8月まで(できれば春の間に)に鉢から抜き出して根を整理して植え戻します。小さい株のうちは1年に1回、3年以上たったら2年に1回ほど植え替えすることが望ましいです。
手順
2~3日水を控えて土を乾かしておきます。土がびしょびしょだと土を落とすとき根が切れる心配があります。鉢から抜くときはプラスチック鉢の場合、側面を揉むようにすると抜きやすくなります。根についている土を丁寧に落として茶色や黒っぽい根を切り捨てます。その後根を5cm程度残して後は切り捨ててしまいます。生育期であれば根はすぐに伸びますので問題ありません。土は新しい清潔なものを用意し、適宜マグアンプKなどの元肥を入れておきます。太い根を切った場合は、数日日陰で乾かしてから元々入っていた鉢か、一回り大きな鉢に植え付けます。植え替え後2週間程度は、日陰か50%遮光下において養生します。
土と鉢
基本の土選び
水はけがよく通気性がよいものを選びます。しかし水やりしても全部鉢底に抜けてしまうようでは困ります。そのため水はけがよいながらも適度に水持ちもよいものが最適です。選ぶ時の注意点は細かすぎない土であることです。細かくみじんが多いと根に酸素が届かず、根腐れを起こしやすくなります。
市販のサボテン・多肉植物の培養土もよいですが、種まき用土のような細粒の土は避けたほうがよいでしょう。適度なものがない場合は、市販用土に小粒の赤玉土などを混ぜて通気を良くする方法もあります。
また、サボテンは自生地により弱アルカリ性のものと弱酸性のものがありますが、色々なサボテンを育てるためには、中性~弱酸性に近いものを選んでおくと汎用性が高く便利です。(市販用土ではpHが書いてありますので確認してみましょう。)
自分でブレンドする
自分で作ることもできます。赤玉土、川砂、日向土、ピートモス、腐葉土、バーミキュライト、パーライトなどを使うことができます。必ず3種類以上の土を混ぜて性質をならしておきます。
幼苗にはサイズが小さいものを使い、乾燥気味に育てたいものはやや粗めのサイズを使うと水はけがよくなります。どちらの場合も粉のようになった土(みじん)は取り除いてから使うようにしてください。川砂を使う場合は必ず洗ってみじんをぬいてください。
鉢選び
サボテンは根を温めることが生長に必要です。そのため白い鉢より熱を吸収する黒い鉢が適切です。黒色の鉢でもプラスチックのものが熱の伝わり方がよく一番サボテンには向いています。逆に不向きなのが陶器でできた鉢です。素焼き鉢や駄温鉢は水が蒸発する時気化熱の仕組みで鉢の中が冷えやすくなってしまいます。
鉢はその株がすっぽり入って鉢と株の間に指1本くらい入るぐらいのサイズが最適です。水の乾きにくい大きすぎる鉢や、水を入れるとすぐ溢れるような小さ過ぎる鉢は避けましょう。また鉢の深さは高さと幅が同じ程度の普通鉢で問題ありません。(特に深鉢を用意する必要はありません)
肥料
オプンティアは生育旺盛で、球タイプのサボテンに比べるとやや肥料を必要とします。とはいっても普通の草花に比べれは少量しか吸収できず、与えすぎは肥料焼けなど副作用の原因になります。
肥料は生育期に与えます。4月から5月か9~10月に月2回程度、1回の水やり代わりに液肥(N-P-K=6-10-5ハイポネックスなど)を与えます。元肥としては、植え替えを行う時に土に緩効性肥料(N-P-Kが6-40-6マグアンプKなど)を混ぜ込んでも良いでしょう。
病害虫
害虫
害虫は3月から夏を中心にカイガラムシやダニ類がつくことがあるため、3月、7月、9月頃に殺虫剤を散布しておきます。また根には根ジラミやネマトーダと呼ばれる寄生虫が付くことがあるので、植え替え時には異変がないかどうかチェックしておくとよいでしょう。
病気
オプンティアは特にバニーカクタスでサビ病が発生しやすいです。サビ病は茶色いサビのようなシミがあちこちにできる病気で、一度発症するとなかなか治りません。春から秋にかけて発生しやすいので、殺菌剤であるSTサプロールを噴霧するとある程度効果があります。
また根腐れやカビによる腐敗はよく起こることですので、水はけの悪い用土に植えたり、じめじめした環境に置いたりしないようにしましょう。