※このページでは、多肉植物に使える農薬について記述していますが、適用外の作物への殺菌剤の使用を推奨する意図はありません。あらかじめご了承ください。(多肉植物に使う場合、観葉植物への適用がない農薬を使うと農薬取締法に抵触してしまうため、自己責任での利用となります)
多肉植物がうどんこ病になってしまった場合の治療に効果的な農薬(殺菌剤)や予防できる農薬、そしてならないための予防方法などについて解説しています。
目次
うどんこ病とは
出典:Wikipedia
うどんこ病はカビ(糸状菌)が原因で起こる植物の病気の一つで、感染すると葉・茎・つぼみなどに小麦粉をまぶしたようなカビが発生します。
伝染性の病気でカビの胞子が雨で周囲の株に広がったり、風で飛ばされたりして次々に伝染していきます。最初は白い粉が目立つ程度ですが、酷くなってくると黄色くなって生育が悪くなり、そのまま放置すると枯れてしまうことがあります。
うどんこ病の対処方法は薬剤の散布と罹ってしまった所の除去です。枯れて落ちた葉や被害に遇っている部分は放置せず、素早く取り除きましょう。
なりやすい種類と時期
セダムが比較的うどんこ病になりやすいです。
また発生しやすい時期は4~11月で特に初夏(5~6月)と秋口に多いです。これはこのカビが比較的冷涼で湿度の低い所を好むためで、真夏は被害がやや少なくなります。特に葉が茂り風通しが悪く、葉の大きくなる窒素肥料を多く与えすぎた株によく起こります。
うどんこ病を農薬で治療する前に
本当は、色々な方法を紹介したかったのですが、経験上、一度病気になってしまった植物は農薬以外の方法では治すことができないことが多いので、農薬使用の前提で書かせて頂きます。
殺菌剤とは
害虫に効果があるタイプを殺虫剤といいますが、病気に効果があるタイプを殺菌剤といいます。
病気にはカビ・細菌・ウイルスの3つの原因がありますが、どれに対応するものも「殺菌剤」と呼ぶことになっています。※正確には、ウイルスやカビは「菌」ではないのですが、「殺菌剤」という名称は慣習的な呼び名と考えてください。
治療と治療困難・抜き取り処分
カビ・細菌が原因で起こる病気はある程度治すことが可能ですが、ウイルスが原因で起こる病気は治療法がなく、抜き取り処分以外ありません。※植物の病気の種類のおよそ8割がカビ(糸状菌)が原因です。
しかしカビが原因で起こる、うどんこ病などの病気も、酷くなってしまったところは農薬も効果がなく、抜き取り処分か部分的に切除する方法しかありません。
管理人の場合、病気は予防がメインで病気に罹りやすいものはあらかじめ農薬を散布しています。また万一発生してしまったら、その株は隔離した上で農薬で治療するか、再発を繰り返す場合は土ごと処分しています。
完全に治ったように見えても病気の痕からカビの胞子が飛び、他に移ることがあるので、一度病気が発生したらその株は簡易ビニール温室内から取り出し隔離しています。また土にもカビの胞子が潜んで繁殖条件が揃うと再発生するため、病気の出た土の使い回しはしないようにします。
病気が酷くなってしまったら、元気な所だけ挿し木で残し、株を処分しますが、挿し木した枝から病気が再発することがあります。その場合残念ですが、挿し木したものも処分するようにしています。
農薬は多肉植物にも使える?
それでは、多肉植物に殺菌剤を使って良いのでしょうか?
実は農薬はどの植物にどの薬品を使ってもよいのではなく、この作物には何倍で何回使用するなどの適用病害虫と散布方法が定められています。キュウリが載っていればウリ科のもの全般にかけてよいのではなく、記載されている以外の植物には使わないのが決まりとなっています。
それでは多肉植物は適用病害虫の記載があるでしょうか?
残念ながら、多肉植物が適用病害虫に載っている薬はありません。しかし多肉植物は観葉植物の一つでもあります。そのため観葉植物の項目に準じて使えば大丈夫です。
ヒトへの安全性は?
農薬(園芸薬品)は農薬取締法という法律で厳しく規制されており、市販されている農薬は全て国の厳しい基準をクリアしています。
- 病気・害虫への効果
- 使用者(人間)
- 自然環境(土壌や魚類への影響)
- 作物に対する影響
など様々な試験を行い安全性が確認されたものだけを市販しています。
そのため一般の植物でも多肉植物に使うにしても、書かれている決められた方法で使うのであれば、安全に使うことができます。
しかし農薬は正しく使わないと、人体に深刻な被害をもたらすことがあります。原液を薄めて使うタイプは濃厚な薬剤なので、スプレー剤やペレット剤より濃く眼や皮膚への刺激性が高いです。そのためラベルや中に入っている説明書をよく読むことが大切になります。
説明書には調合時や散布時「保護めがねを付ける、不浸透性手袋をつける、ゴム長靴を履く」などの使い方の注意点や、万一眼に入ってしまった場合の対処方法が書いてあるので読み飛ばさないようにしましょう。
多肉植物への害は?
クラッスラ属「火祭り」の薬害
農薬の種類によっては特定の作物に使用すると奇形など薬害が生じることがあります。その場合、農薬のラベルや説明書に使わないようにする旨が書かれているので必ず確認します。
多肉植物の中には薬害がでやすく、数回かけただけでも葉に奇形を起こしたり薬害が出る場合があります。
管理人の環境ですが、たとえばクラッスラ属の火祭りはベンレートをかけると葉の出方がおかしくなり、新芽に奇形が出てしまう薬害があります。
また金のなる木(花月、黄金花月)などでは、葉が小さくくびれるといった現象を確認しています。そのため初めて農薬を使う場合は、多肉植物の目立たない所に散布して、薬害が出ないか確かめてから使うようにしたほうがよいでしょう。
天然成分のものもある
殺菌剤の中には化学薬品でできたものばかりではなく、天然成分(デンプン由来の成分や除虫菊の成分、シイタケ菌由来のもの、油など)でできているものもあります。そのような殺菌剤はより安全性が高く安心して使うことができます。
特にうどんこ病では、成分が天然のもので治療ができるものも複数あります。
※還元澱粉糖化物(水あめ)が成分の「ベニカマイルドスプレー」、炭酸水素カリウムが成分の「カリグリーン」、脂肪酸グリセリドが成分の「アーリーセーフ」など
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効果的な殺菌剤
治療と予防ができるタイプ
このタイプは罹ってしまった後にも効果があるもので、ある程度の治療効果があるタイプです。しかし酷くなった後に散布しても完全には治療できないため、病気の初期に対処するものと考えてください。また病気で変色したり萎縮してしまった部分を治す力はなく、病原菌の退治のみの効果です。
<ベニカXネクストスプレー> ベニカXネクストスプレーは有効成分マンデストロビンを含み、うどんこ病、黒星病、灰色かび病などカビが原因の病気の予防・治療ができます。病気だけでなく、ハダニ、カイガラムシ、アオムシなどの害虫にも効果がある4成分も入っており殺虫殺菌剤と呼ばれます。化学系の成分に加え天然系の成分も含み、これまで治りにくかった耐性菌のうどんこ病などにも効果を発揮します。観葉植物に適用があり、多肉植物にも安心して使えます。やや価格が高いですが、殺虫剤代わりにも使えるのでこれ1本で対策できます。 レビュー Amazon |
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<オルトランスプレー> GFオルトランC(オルトランスプレー)は害虫と病気に対応する殺虫殺菌剤のひとつで、アセフェート・MEP・トリホリンを含みます。害虫に対しては速効性と持続性があり、病気に対しては予防効果と治療効果があります。この中でトリホリンにうどんこ病への治療・予防効果があり、速効性と持続性があります。うどんこ病以外に、黒星病、白さび病、フェアリーリング病、葉かび病、灰星病にも効果があります。ただし観葉植物への適用がないため自己責任での使用になります。 詳細情報 Amazon |
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<ベンレート水和剤> ベンレート水和剤はベノミルを主成分とした殺菌剤で、カビ病の広範囲な種類に予防効果と治療効果があります。たとえばうどんこ病、黒星病、ごま色斑点病、白さび病、立枯病、灰星病などカビ病に広く適用があります。残念ながら観葉植物への適用はあり自己責任での利用となりますが、実際には優れた効き目があります。水で薄めてスプレーで散布します。 詳細情報 Amazon |
治療のみのタイプ
<ベニカマイルドスプレー> ベニカマイルドスプレーは害虫と病気に対応する殺虫殺菌剤の一つで、還元澱粉糖化物(水あめ)を含みます。虫に対して殺虫効果、病気に対しては治療効果があり、観葉植物や花卉類、などに広く使うことができます。還元澱粉糖化物がうどんこ病の菌を包み込んで治療効果を現します。化学成分を使わない天然系の農薬で野菜などにも安心してかけることができます。浸透移行性はないため、かけ残しがないように葉の裏など症状が出ている所にくまなく散布する必要があります。 詳細 Amazon |
予防のみのタイプ
このタイプの殺菌剤は予防的に撒いておくもので、病気になるのを防ぐものです。そのため既に病気に罹ってしまった植物には効果がありません。
<ベニカXファインスプレー> ベニカXファインスプレーは害虫と病気に対応する殺虫殺菌剤のひとつで、クロチアニジン、フェンプロパトリン、メパニピリムを含んでいます。害虫に対して予防と殺虫効果、病気に対しては予防効果があり、観葉植物や花卉類、などに広く使うことができます。メパニピリムという成分は新規殺菌剤で、これまでの薬剤に耐性がついてしまった場合にも効果的です。ただ治療効果はないため、予防的に使うかうどんこ病の発生初期に使う必要があります。 詳細 Amazon |
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<ダコニール> ダコニール1000はTPNが主成分の殺菌剤で、広くカビが原因の病気に予防の効果があります。特に炭疽病やもち病、斑点病、その他うどんこ病、黒星病、灰色カビ病、斑点病、褐斑病、ベト病、疫病などに適した総合殺菌剤です。観葉植物も適用作物に指定されています。治療効果はないため予防散布のみ有効な点に注意しましょう。 詳細情報 Amazon |
害虫に対応するものも
うどんこ病以外に、害虫に対応してくれる成分が入った農薬(殺虫殺菌剤といいます)もあります。先ほどの例では、オルトランCスプレー、ベニカXスプレー、など
農薬・殺菌剤を使う時の注意点
スプレー剤でも、薄めて使うタイプのものでも、本体ラベルに使う上での注意点が書いてあるので、しっかり確認するようにします。
一般的に
- 体調の優れない時は薬剤散布を行わない
- 雨が降りそうなときや風が強い時は避ける
- 夏の高温時は薬害防止のため、夕方など涼しい時間帯に散布する
- 作業後は手足や顔を石鹸で良く洗いうがいをする
- 子供やペットに触れないようにしする
- マンションなど集合住宅では隣、上下に飛ばないように注意する
- 洗濯物にかかったり室内に吹き込んだりしないようにする
などの注意が必要です。
また殺菌剤の種類によって
- 希釈するタイプは倍率を守る
- 液が残ったら排水には流さず土に穴を掘ってその中に流し込む
- エアゾール剤では多肉植物に近づけすぎないようにする
などの注意点を守りましょう。
※エアゾール剤とは、ボタンを押すとシューと自動で出てくるもの
うどんこ病の予防方法
病気は一度罹ってしまうとなかなか治療が困難です。そのため予防することがとても大切になります。
マメに観察する
日頃からよく多肉植物を観察しておくということが大切です。もし病気が発生しても、早期発見できれば、その部分を切除して予防的に株全体に農薬を散布するなど、被害が深刻にならずに済みます。
観察するときは上や横から見るだけでなく、斜め下から葉の裏を見たり、葉をかき分けて茎を見たりします。
環境を改善する
株が密集していたり、じめじめしている環境に置いたり、無風の室内に置いておくと病気が発生しやすくなります。特にうどんこ病などのカビ病は5~8月に多いので、通気を心がけ雨ざらしを避けた戸外に置くようにします。
株を強健に育てる
徒長を防ぎ強い株作りを心がけましょう。室内などに長く置かれっぱなしになっていた株はヒョロヒョロと徒長し、病害虫に対する抵抗力が落ちています。そのため適度に日に当て、適切に水やり(やりすぎに注意する)することが大切です。
薬剤散布で予防する
多肉植物をたくさん育てており鉢の数が多い場合や、普段忙しくてマメな観察が難しい場合、うどんこ病を予防する殺菌剤をあらかじめ散布しておくのも一つの方法です。