多肉植物やサボテンにも肥料が必要です。肥料の効果や種類、与える時期や量などについて解説しています。
目次
多肉植物に肥料は必要?いらない?
肥料がいらないと思われがちですが、実は多肉植物にも肥料が必要です。
多肉植物も普通の植物と同じように肥料を必要とし、与えることで健康に育てることができます。与える種類も普通の植物と同じで多肉植物だから特別な肥料が必要ということはありません。
必要なのは三要素(チッソ・リン酸・カリ)と中量要素(カルシウム・マグネシウム)、微量要素(マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、塩素)の3つです。
ただし与え方は異なり、時期と量、そして向いている肥料の種類が違います。
なぜ痩せた土地に育つはずの多肉植物に肥料が必要かは以下の理由があります。
①多肉植物に使う土は肥料分がない
多肉植物に使う土には肥料分がほとんどありません。
よく使われる土に「赤玉土」「鹿沼土」「軽石」「ピートモス」「パーライト」などがありますが、これらにはほとんど肥料分や微量要素がありません。
※多肉植物用の市販用土には、肥料があらかじめ配合されているものがありますが、その場合は追加で与えなくてOKです。
②肥料の効きにくい用土
多肉植物でよく使われる土には肥料の効きにくい用土があります。
例えば火山性の基本用土である「赤玉土」や「鹿沼土」はリン酸という肥料分を取らえて離さないという特徴があり、植物に行くリン酸が減少してしまいます。
リン酸は茎葉・根が伸びるのを助け、花や実を充実させる効果があるため、多肉植物にも必須です。
③微量要素も必要
植物は肥料の三要素(チッソ、リン酸、カリ)に加え、それ以外に微量要素(カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムなど)がないと生育できません。
このような微量要素も多肉植物やサボテンで使う土にはほとんど含まれていないので、外から補う必要があります。
自生地で肥料がいらない理由
自然の中では生態系の機能が働いており、動物のフンや虫の死骸、枯れた植物の残骸、降雨などから肥料成分・微量要素が補われています。
しかし鉢植えしている多肉植物にはこういった生態系の機能が働いていません。そのため多肉植物であっても、鉢という人工的な環境で育てるためには、肥料分を補ってやらないといけないということが分かります。
肥料の効果
肥料を与えると?
多肉植物で実感できる肥料の効果は以下の通りです。
- 葉の色や花付きがよくなる
- 葉の枚数が増える
- 葉が大きく肉厚になる
- 株が丈夫で健康になる
- 生育が早くなる
- 子株や脇芽などが出やすくなる
- 自生地で育つより大きくなる
不足すると?
肥料が不足すると以下のようなことが起こりやすくなります。
- 葉が小さくなる
- いつまで経っても大きくならない
- 葉の色が薄くなったり黄色っぽくなったりする
- 花芽がなかなかつかない
- 生育が遅くなったり止まってしまう
あげすぎると?
肥料を与えすぎると以下のような症状が出る場合があります。
- 徒長(間延び)してしまう
- 葉が巨大になる
- 自生地での本来の姿でなくなってしまう
- 肥料焼けで根を傷めてしまう
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肥料の種類
チッソ・リン酸・カリの成分
肥料にはチッソ・リン酸・カリの3つのメインの成分があります。この三要素が規定量入っているものを「肥料」と呼びます。
- 「チッソ」は「葉肥」とも言われ、葉や茎を成長させ養分の吸収を助けるなど、植物の基本的な生育を担当します。
- 「リン酸」は「花肥、実肥」などといわれ、花や実のつきをよくする他、葉や茎、根の伸びを助ける作用があります。
- 「カリ(カリウム)」は「根肥」ともいわれ、株を強くする、寒さ暑さへの抵抗力をつけるなどの効果があります。
また三要素だけでなく、中量要素、微量要素も多肉植物が健康に育つために必要です。
詳しくは以下のページで解説しています。
化成肥料と有機肥料
肥料には、化学的に合成する「化成肥料」と天然素材から作る「有機肥料」、両方を配合した「有機配合肥料」の3つがあります。
化成肥料は炭酸カルシウム、リン鉱石、チリ硝石、石油、硫酸などを化学的に合成して作られます。
有機肥料はそれぞれの天然素材を搾ったり発酵させたり、乾燥したり燃やしたりして作られます。素材によって色々な性質や種類があります。
肥料の中には化成肥料と有機肥料を混ぜて作った有機配合肥料と呼ばれる製品もあります。
それぞれメリット・デメリットがあり、多肉植物の場合も適宜使い分けます。
速効性・緩効性肥料
肥料には与えたらすぐ効果を発揮する「速効性肥料」とゆっくり溶け出して効果を発揮する「緩効性肥料」、微生物が有機物を分解して遅く効果を発揮する「遅効性肥料」の3つがあります。
速効性肥料は水に溶かして与えるなど、すぐに効果を発揮します。効き目も早い分、効果の切れる速度も1週間程度と短いです。
緩効性肥料は繰り返す水やりでゆっくりと溶け出していき長期間効果を発揮します。緩効性肥料は2ヶ月間効果が持続する、半年、1年、2年持続など、製品によって設定が異なります。
遅効性肥料は土中の微生物が有機物を分解し初めて効果が出るもので効き目が遅いです。たとえば油かすや鶏ふんなどがそれに当たります。
多肉植物向きの肥料
肥料には色々な種類がありますが、多肉植物に向いているのはどのような種類でしょうか?
まず肥料の種類はご家庭によくある一般的な植物用のもので構いません。
比率はN-P-Kが5:5:5などバランスがよいもので濃すぎないものが望ましいです。また中量要素や微量要素も含む製品だと、別に活力剤などを与えなくて済むのでなおよしです。
肥料の量と与えるタイミング
量
多肉植物は普通の草花より少ない量を与えます。
多肉植物は生育がゆっくりなので、急速に成長する普通の野菜や花のようには肥料を必要としません。逆にたくさん与えると肥料焼けなどの生理障害を起こしてしまう恐れがあります。
量の目安は、それぞれの製品によって異なるため注意書きを読みます。与える植物の欄に「多肉植物・サボテン」の目安が書いてあればそれに従います。ない場合は「観葉植物」や「山野草」へ与える場合の配合割合・頻度を参考にします。それも書いていない場合は、書いてある通常の植物用の量の3分の1~半分程度にします。
タイミング
施肥(肥料をやること)のタイミングは以下の3つがあります。
- 植え付ける前に元肥(緩効性)を土に混ぜ込む
- 生育期に追肥(液肥で速効性)を与える
- 肥料切れのサインが出たとき
①元肥として
多肉植物の場合、最初に植え付けるとき、または植え替え時に、土の中に緩効性肥料を混ぜ込んでおき「元肥」とします。生育期は速効性のある液肥を「追肥」として与える場合が多いです。
元肥は長期間効果が継続する緩効性化成肥料が最適です。鉢に土を入れ、その上にひとつまみ程度肥料を入れ、また土をかぶせその上に多肉植物を植えます。一度与えれば、次の植え替えまで与えなくて済みます。
②追肥として
追肥は植え替えを行わない鉢に対して、また生育が旺盛な株に対して与えます。追肥には与えてすぐ効果が出て効き目の短い速効性化成肥料が最適です。水に薄めた液肥を土の上から、1回の水やりと同量を水やり代わりにしっかり与えます。回数は生育期の月に合計2~4回です。(たとえば3~6月が生育期なら、4月に2回、5月に2回など)
③肥料切れの時
多肉植物といっても色々な種類があり、肥料多めが好きなグループ、ほとんどいらないグループがあります。植物は全般に肥料が足りなくなると以下のような症状が出てくるので、その場合は適宜追肥をしていきましょう。
肥料切れのサインとは、
- 葉が小さくなる
- 葉が黄色っぽくなる
- 花がつかない
- 生育が止まる
などです。このような場合にも生育期の追肥の要領で与えます。
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実際の肥料の与え方(例)
春秋型
エケベリアなど春秋型の多肉植物は生育期が3~5月頃と9~11月頃のため、施肥もこの時期に行います。
元肥
一年に1回植え替えを行うとすると、3~4月頃が植え替えの適期です。
植え替え時に鉢の底に土を少し入れ、その上にひとつまみの緩効性化成肥料を入れ、その上に土を少し入れ根に直接触れないようにし、多肉植物を植えます。
追肥
今年は植え替えをしないという株、肥料切れサインを出した株がある場合は、追肥で対応します。
3~5月のいずれかで合計3~4回ほど水で薄めた液肥を与えます。このとき量は1回の水やり代わりの量をしっかり鉢底から流れ出るまで与えます。なお、与えすぎにならないよう、何回与えたかはしっかり把握しておきましょう。
また春に与えれば秋に再度与える必要はありません。春(3~5月)か秋(9~11月)のどちらかで施肥するようにしましょう。
夏型
サボテンやアガベなどの夏型の多肉植物は生育期が4~9月頃のため、施肥もこの時期に行います。ただ7~8月は非常に暑いため避け、4~6月がベストです。
元肥
ざっくりですが、4~6月頃が植え替えの適期です。
植え替え時に鉢の底に土を少し入れ、その上にひとつまみの緩効性化成肥料を入れ、その上に土を少し入れ根に直接触れないようにし、多肉植物を植えます。
追肥
今年は植え替えをしないという株、肥料切れサインを出した株がある場合は、追肥で対応します。
4~6月のいずれかで合計3~4回ほど水で薄めた液肥を与えます。このとき量は1回の水やり代わりの量をしっかり鉢底から流れ出るまで与えます。なお、与えすぎにならないよう、何回与えたかはしっかり把握しておきましょう。
冬型
アエオニウムなどの冬型の多肉植物は生育期が9~4月頃のため、施肥もこの時期に行います。ただ12~2月は非常に寒いため避け、10~11月がベストです。また3~4月も可能です。
元肥
ざっくりですが、9~11月頃が植え替えの適期です。
植え替え時に鉢の底に土を少し入れ、その上にひとつまみの緩効性化成肥料を入れ、その上に土を少し入れ根に直接触れないようにし、多肉植物を植えます。
追肥
今年は植え替えをしないという株、肥料切れサインを出した株がある場合は、追肥で対応します。
9~11月のいずれかで合計3~4回ほど水で薄めた液肥を与えます。このとき量は1回の水やり代わりの量をしっかり鉢底から流れ出るまで与えます。なお、与えすぎにならないよう、何回与えたかはしっかり把握しておきましょう。
また秋に与えれば春に再度与える必要はありません。秋(9~11月)か春(3~5月)のどちらかで施肥するようにしましょう。
またメセン類で脱皮する種類は春に水やりがしづらいので、秋に行っておきます。
肥料のポイント
普通の草花より控えめに
もともとあまり肥料を必要としない多肉植物に、普通の植物なみの肥料をやってしまうと大きくなりすぎてしまいます。またもやしのようにひょろ長く伸びるなどの副作用が出る恐れもあります。そのため普通の植物に与える量の3分の2以上は与えないようにしましょう。
バランスよく与える
葉を大きくしたいからチッソ肥料ばかりを与えたり、花をたくさんつけたいからリン酸を多く与えるなど、偏った肥料を与えるのは避けましょう。リン酸やカリなどは単独で与えてもほとんど効果がない上に、土がアルカリ性になるなど、多肉植物によくない土になってしまう恐れがあるためです。
有機肥料はカビに注意
有機質肥料は多肉植物の土では(水やりが少ないため)分解も遅く、長期間そのままになりカビが生える恐れがあります。使いたい場合は、化成肥料の緩効性タイプや速効性タイプをうまく組み合わせて与えるようにしましょう。
多肉植物に起こりやすい肥料トラブル
リン酸不足
多肉植物を植えるときよく使うのが赤玉土や鹿沼土です。このような火山性の用土は三要素の一つ「リン酸」を閉じ込めて、多肉植物のからだに吸収しにくくさせてしまいます。リン酸が不足すると根の張りが弱い、成長が悪くなるなどの症状が出ます。そのため元肥としてリン酸の多いマグアンプKなどをあらかじめ土に混ぜておくようにしましょう。
チッソ不足
赤玉土などをベースに養分が少ない土を使って育てていると、葉が小さくなってくる、色が悪くなってくるなど窒素不足の症状が出ることがあります。このような症状が出たら窒素も含むバランスのよい肥料NPK比が5-5-5の粒肥料や、窒素を強化したN-P-K比が6-10-5のハイポネックスなどを与えるようにしましょう。
チッソのやりすぎ
窒素肥料は与えすぎで過剰症を起こすため、大量に与えないようにしましょう。葉が異様に大きく緑色が濃くなる、節と節の間が伸びすぎてひょろ長くなり、倒れやすく病害虫に弱くなってしまいます。
カリ不足
不足すると株が弱くなり簡単に倒れるなどの症状が出ることがあります。またカリ不足では、病害虫の被害を受けやすくなったり環境の変化(暑さ寒さなど)に弱くなってしまうこともあります。その場合は、カリが多く含まれる草木灰など肥料を与えるか、カリとリン酸を強化したリンカリなどを与えるようにしましょう。
肥料のQ&A
肥料を与えているのに生育が悪いです
チッソ・リン酸・カリがちゃんと入っている肥料を使っているのに生育が悪い場合があります。その場合、中量要素や微量要素が不足している可能性があります。そんな時は中量要素・微量要素を配合した肥料を使うか、活力剤などで補っていきましょう。
多肉植物に肥料を与えると紅葉しなくなるのでは?
通常の範囲(元肥として緩効性化成肥料をひとつまみ混ぜたり、生育期に液肥を数回与えた程度)で紅葉しないというのはありえないです。実際に管理人は4~5月に全ての種類に3回ほど液肥を与えますが、秋にはしっかり紅葉してくれています。紅葉には日当たり・寒さ・適度な水やりが大切です。
多肉植物に肥料を与えると徒長すると聞きました
確かに濃い肥料を与えすぎると葉が大きくなりすぎたり、茎が伸びたりと徒長してしまいますが、控えめに与える分にはそれほど心配ないと思います。ただグラプトペタルム、グラプトベリア、グラプトセダム、セダムは例外です。この種類は肥料分を与えなくても夏場徒長しやすいので、肥料は与えないほうが安全だと感じています。
多肉植物・サボテンの肥料や活力剤の選び方やおすすめの製品については以下のページで解説しています。