多肉植物は室内や窓辺で育てられるのでしょうか?それとも外でしか栽培できないのでしょうか?外にしか置けない理由と例外的な条件、外で育てるメリット、室内で楽しむ方法について解説します。
目次
基本は外で栽培
多肉植物は基本は戸外にしか置くことができません。室内での栽培は極めて難しいのが実情です。
というのは、多肉植物も植物の一つで、植物は自然な環境でしか健康に生きていくことができないためです。室内というのは、植物にとっては特殊で人工的な環境です。そのため残念ながら、(長期的に)室内や窓辺では育てられないと考えてよいです。
室内に置けない2つの理由
外でしか育てられない理由は大きく分けて2つあります。
日光不足になる
一つ目が日光不足になるためです。日が差していても、蛍光灯が付いていても、外の日照レベルと比べると室内は極端に暗いです。室内(の蛍光灯の照明下)は戸外の100分の1以下しかありません。このため、強い日差しを求める多肉植物には、照度が圧倒的に足りないのです。
また窓辺ならよいかと考えがちですが、窓辺も戸外に比べると10分の1ほどの照度しかなく(※スマートフォンでの計測結果)、直射日光が当たっていても不足しています。それはガラスが1枚挟んでいるためで、窓ガラスにより、植物の育成に必要な紫外線の一部がカットされてしまっています。→植物の育成に紫外線は不要です。必要なのは380~760nmの可視光線でした。訂正してお詫び致します。
スマホで照度を測る
照度はスマートフォンのアプリでも調べることができます。ここで使ったのはAndroid用の「Lux Light Meter」という無料アプリです。注意したいのは、ここで測った値はスマートフォンの種類により異なるのであまり当てにならないということです。数値を測るのではなく、あくまで何分の一などの比較をするものと思ってください。
※重要※
スマホでの計測はかなり不正確で、同じ光量でも機種により2倍、3倍の差が出ることがあります。正確な計測ではルクスメーター(照度計・光度計)を使うようにしてください。
風通しが悪い
もう一つが風通しが悪いという点です。戸外では元々風が良く通りますが、室内では無風に近いです。さらに多肉植物の原産地は風通しが特によい所が多いです。
風通しがなぜ必要かというと、それは植物の元々の存在場所が風通しの良い所であるという理由ですが、具体的には徒長しにくい、カビや雑菌が繁殖しにくい、蒸れて腐りにくい、などの理由が挙げられます。
室内で育てると、多肉植物は光や風を求めてひょろひょろと長く伸び始めます。これを徒長といいます。徒長は生理障害で病気ではありません。そのため絶対に育たない(枯れる)わけではないのですが、植物らしく健康的に育つことは難しくなるのですね。
例外的な条件
しかし例外的に室内に入れて育てる場合があります。以下のような場合です。
①冬、寒さが厳しい時
耐寒性は多肉植物の種類によって異なりますが、全般的に多肉植物は耐寒性がなく、0℃を切ると枯れてしまうものが多いです。そのため最低越冬温度(枯死しない最低限の温度)を下回る場合、室内で育てます。
地域により冬の間は何週間か何ヶ月か、室内に置きっ放しになることがあります。そうすると光や風を求めて徒長してしまいます。それでも寒さで全滅するよりはよいですので、室内に置くしかありません。
②夏、暑さが厳しい時
耐暑性も多肉植物により異なりますが、耐暑性の弱いものは冷房のかかった室内に退避させることがあります。
近年は西日本だけでなく関東以南の寒冷地でも猛暑が問題になっています。多肉植物の種類によっては暑さで葉が全部落ちたり、茎ごと枯れる場合があります。そのような場合、室内で育てるリスクを負いながらも、室内に置くしかない場合があります。
夏に室内に置くのは蒸れて腐るリスクが高いですが、人によっては扇風機を回して蒸れを回避させようとします。
③強い光を好まないタイプ
多肉植物には強い光を好まないタイプがあります。ハオルチア属(ハオルシア属)やガステリア属などがその代表です。このような多肉植物は、窓辺であれば照度が充分で室内でも育てられる場合があります。
ただこの場合、風通しが悪いというデメリットは解消していないので、室内の窓辺で扇風機を回すなど、風通し対策をする必要はあります。
④台風の時
台風が来る場合も室内に退避する場合があります。外に置いていると簡易ビニール温室ごと倒れてしまうことがあるからです。この場合は、長くて2日、短ければ1日ですむので、風通しや日当たりが問題になることはほとんどありません。
外で育てるメリット
外で育てるのには様々なメリットがあります。
徒長せず丈夫で健康に育つ
まず丈夫で健康に育ちます。しっかり日に当てることで光合成を促し、肉厚の葉、締まった姿、葉の間隔が詰まった茎となり、病害虫にも強くなります。日当たりと風通しが良ければヒョロヒョロとだらしなく間延びする徒長も防ぐことができます。
徒長は見た目が悪いだけでなく、病気にかかりやすい、害虫被害に遇いやすい原因になりますので、強い株を育てることができるのも戸外栽培のメリットです。
カビや根腐れしにくくなる
もう一点、カビ病や根腐れをしにくくなります。多肉植物はしばしば溶ける、腐る、蒸れる、カビる、病気になるというトラブルを引き起こしますが、これらは、日当たりと風通しが悪いところで起きやすくなります。
リトープスなどメセン類のカビは室内で育てていると高確率で起こり「難しい」という印象を持ちがちです。そのような場合は戸外栽培に切り替えるだけでぐっと、簡単に育てられるようになるはずです。
室内で多肉植物を楽しむ方法
しかし室内で多肉植物を楽しむ方法もあります。
それは短期間だけ室内に飾るという方法です。短期間であれば、風通しや日光が足りない環境でも栽培できます。
具体的には種類や季節ごとに室内に飾れる日数は異なりますが、冬ならおよそ2週間~1ヶ月程度、春秋は1~2週間、夏は1週間以内であれば、問題なく飾ることができます。この日数は徒長せずに置ける長さで、これを超えると徒長が始まる場合が多いです。
また種類により生長が速いものは短期間しか飾れず、生長の遅いものは比較的長く飾れます。
例えばエケベリアであれば、夏は5日程度、春秋は1週間から10日程度、冬は3週間程度、室内の暗い所に置くことができます。期限が来たら戸外の明るい所に出し、2週間以上休ませます。インテリアなどでずっと飾り続けたい場合は、複数の鉢を持ってローテーションさせていけばいつでも、鑑賞することができます。
もう一つが、植物育成ライトを使うという方法です。
植物育成ライトは植物の生育に必要な光の成分を人工的に補うことで、窓のない部屋・暗い部屋でも多肉植物を健康に育てることができるアイテムです。
これならエケベリアのような光を強く求める種類も、一年中室内で鑑賞することができますし、ローテーションの手間も省けます。
ただ夏は扇風機を回さないといけないなど注意点もあるので、気になる方は以下のページもチェックしてみてください。