このページでは多肉植物「コチレドン属」の育て方を基礎から丁寧に解説しています。
目次
コチレドン属の写真
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コチレドン属(Cotyledon)の特徴
科 | ベンケイソウ科 |
---|---|
属 | コチレドン属(Cotyledon) |
生育型 | ほぼ春秋型 |
育てやすさ | 育てやすい |
成長速度 | 遅い |
増やし方 | 葉挿し× 挿し穂〇 株分け〇 |
原産地 | 南アフリカなど |
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
コチレドン属の特徴
コチレドンはほとんどが春秋に成長して夏と冬は休眠する春秋型です。(本によっては夏型に分類されることもあるが育てた感じでは春秋型の典型のように思われます)。特に福娘やふっくら娘、銀波錦などは夏の暑さに弱く、5月頃から暑さで葉が落ち始め、7~8月には茎だけの棒のようになってしまうことがあります。大きさは最大でも50cm以下、通常は10cm程度です。長く育てていると根元が幹のようにがっしりしたり、子株が育ってきたり、ベルのような美しい花が咲くようになります。他の多肉植物は紅葉したり葉の付き方が変化することがありますが、コチレドンは一年中、色や姿が変わらない種類が多いです。もともとはアラビア半島や南アフリカに生息しています。
粉ハゲに注意
コチレドンは白い粉や光沢、もふもふの毛などが美しい種類が多いので、年間を通して雨ざらしにしないことがポイントです。夏は水やりの加減が少し難しいので近年の猛暑では葉が落ちてしまったり、全体的に元気なくなってしまうこともあることを理解しておきましょう。
育て方のコツ
- 春秋型は暑さが苦手。夏は遮光などしてできる限り涼しい環境に
- 夏の水やりは少量、春秋は土がカラカラになってからたっぷりと
- 7~8月以外は日に良く当て、年間を通して雨ざらしにしない
- 冬0℃以下にしないこと
年間栽培カレンダー
水やり |
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置き場所 |
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植え替え |
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増やす |
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肥料 |
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開花 |
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主な種類名(学名)
熊童子 (クマドウジ) | Cotyledon ladismithensis |
福娘 (フクムスメ) | Cotyledon orbiculata var.oophylla |
ペンデンス | Cotyledon pendens |
銀波錦 (ギンパニシキ) | Cotyledon undulata |
子猫の爪 (コネコノツメ) | Cotyledon ladismithensis ‘Konekonotsume’ |
オルビキュラータ | Cotyledon orbiculata |
熊童子錦 (クマドウジニシキ) | Cotyledon ladismithensis |
エリサエ | Cotyledon elisae |
白美人 | |
ゴルビュー | |
ふっくら娘 | |
モンキーネイル | Cotyledon ‘Monkey Nail’ |
パピラリス | Cotyledon papilaris |
旭波の光 (キョクハノヒカリ) | Cotyledon undulata f.variegata |
旭波錦 (キョクハニシキ) | Cotyledon orbiculata ‘Kyokuhanishiki f.variegata’ |
嫁入り娘 (ヨメイリムスメ) | Cotyledon orbiculata cv. |
紅覆輪 (ベニフクリン) | Cotyledon macrantha |
白眉 (ハクビ) | Cotyledon orbiculata cv. |
多肉植物の日本での栽培は自生地の環境と異なります。そのため日本の寒さや暑さに耐えられなくなると生育が鈍ったり成長が止まったりします。その時期のことを「休眠」といいます。時期は種類によって異なり、夏に休眠するタイプと冬に休眠するタイプがあります。休眠期は生育が鈍るので肥料や水やりを控え、挿し木や株分けなど株へ負担をかける作業を控えます。
斑入り種と普通の種類は性質が異なり弱いです。別種として扱ったほうがよいものもあります。斑入り種が弱いのは通常の種類より葉緑素が少ないためです。耐寒性や耐暑性が下がり、特に強い直射日光を嫌うようになります。普通どおりに育てると葉が焼けて黒くなる、葉がポロポロ落ちる、株が枯れる、溶けるといったトラブルが起きます。そのため半日陰で育てたり、暑さ寒さで室内に取り込んだりと育て方を工夫する必要があります。これは多肉植物のどんな種類(属)にも共通で当てはまります。
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育て方のポイント
水やり
コチレドンは水不足に強い多肉植物なので水やりは慎重に行います。土が乾かないうちにじゃぶじゃぶ水をやると葉がポロポロ落ちたり、最悪夏などは根が煮えて根腐れで枯れてしまいます。適切な水の量は生育期で3日間以内に表土が乾くぐらいです。生育期は鉢の中を完全に乾かしてから鉢底から流れ出るくらいの水をやります。(冬や夏は表面がさらっと湿るくらいにとどめます)ただコチレドンの場合あまり水を控えすぎると葉にシワがより元に戻らなくなることがあるので加減が少し難しいです。葉が上を向かずのっぺりになってくると暑さと水やりのしずぎのサインです。水が多すぎても少なすぎても夏は葉が落ちやすい傾向にあります。
具体的な頻度は生育期の4~6月、9~10月は7日に1回ほど鉢底の穴から水が出てくるまで与えます。梅雨時は蒸れやすくなるので2週間に1回くらいにします。そして7~8月は暑すぎて生育が鈍るため、月に1回ほど鉢が少し濡れるくらいにとどめます。9月からまた水やりの回数を増やします。冬の11~2月は休眠期で水をほとんど吸わなくなるので月1回程度、表面をさらっと湿らせるぐらいにしておきましょう。
冬と夏は水やり時間のタイミングに注意しましょう。夏は涼しくなった夕方に、冬はこれから暖かくなる朝にやるようにします。凍るような寒い日や35度を超えるように時は無理に水やりはしないほうが安全です。水をやる時は葉にかけるのではなく、根元に注ぐようにします。毛が生えている系は夏に水やり後直射日光を当てると、そこだけ焦げる葉焼けを起こしやすいため、水やりは夕方が安全です。
置き場
7~8月を除いて4月から10月までは基本、日なたに置きます。7~8月は明るい日陰に置くか50%程度(半日陰)の遮光をします。11月~3月は3℃以下になりそうな時は室内の直射日光のあたる所に置きましょう。粉が落ちたり毛が汚れたりするので、どの季節も雨ざらしにはしないほうがよいです。コチレドンは春や夏に徒長(ヒョロヒョロ)しにくいので、熊童子や子猫の爪は寒さには意外と強く0℃を下回ってすぐ枯れることはありません。しかし葉が傷んでしまうことがあるので、なるべく3℃を下回ったら室内や温室に取り込むようにします。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
種類によって暑さにやや弱いものがあり、気温30度近くから葉が落ちてしまうものがあります。水をごく控えて風通しをよく、50%程度の遮光をして直射日光が当たらないようにすれば安心です。しかしちょっとした水の加減や天候(暑い日が続くなど)で根腐れすることもあり、初心者のうちは夏に枯れてしまってもがっかりしないようにしましょう。また葉が落ちても茎だけ生きている場合もあるので秋に芽吹くか見極めが必要です。
越冬最低温度と冬越し方法
コチレドンの冬越し最低気温は3~5℃で、やや寒さに弱めです。0℃にさらすとすぐに枯れるわけではないものの、できればぎりぎり3℃、可能なら5℃以上に保ちましょう。霜に当たったり凍結してしまうと枯れてしまいます。(ですが地中の根が生きていれば春に復活できることもあります)。安全に冬越しさせるためには、水やりを極限に控えると耐寒性が増します。水やりは月1回程度ですが、日取りは選んでできるだけ暖かい日にしましょう。関東以北の寒冷地では夜マイナスが続く地域もあります。そのような場所では冬場、外での栽培は困難で日の当たりやすい室内に取り込むようにします。
増やし方
殖やしたい時は成長期(4~6月と9~10月まで)に行います。コチレドンは挿し穂や株分けで増やしていきます。残念ながら葉に成長点がないので葉挿しで殖やすことは極めて難しいです。もともと成長がゆっくりで挿し木をする場合も根の出る速さは遅めです。7~8月の酷暑は根が出づらく冬は休眠しているので作業は行いません。
挿し木(挿し芽)の方法:
挿し木は親株から5~8cm程度茎をカットし、下の方の葉をもぎとり断面を3~4日乾かします。乾いたら乾燥した用土に挿します。発根するまで3~4週間かかります(多肉の中では遅い方)が、焦って水をやったりしないようにします。根が出るまでは室内の明るいところで管理します。根が1cm程度出たら水やりを開始します。最初は少なめに。カットした親株には2ヶ月程度で新しい芽が出てきます。
株分けの方法:
群生した株は株分けができます。土から掘り出して古い根を整理し子株ごとにわけて植え付けます。植え付けてから3~4日後から水やりを始めます。株分け前は10日以上水やりを控えて土をサラサラにしておきましょう。
植え替え:
植え替えも株分けと同様に生育期の4~6月、9~10月に行います。事前に水やりを1週間ほど控えて土を乾燥させておくとよいでしょう。休眠期に植え替えると株にダメージを与えるので控えます。コチレドンは成長が比較的ゆっくりなので頻繁な植え替えは必要ありません。植え替えには、肥料の追加と古い根の整理、土を新しくする、サボテンコナカイガラムシなどの害虫の駆除、といった役目があるので2年に1回程度鉢を掘り起こして古い根を取り除き、肥料不足になった土を新しい土と取り替えましょう。
土
他の多肉植物と同じように水はけのよいもので肥料分が少ないものを選びます。多肉植物用の土を買ってきてもよいですし、自分でオリジナルの土を作ってもよいです。作る場合は赤玉土をベースに鹿沼土、軽石、腐葉土なども混ぜ合わせます。土は種類によって性質が異なり、バランスよく配合するためには最低3種類以上の土を混ぜ合わせたほうがよいです。
(例)赤玉土2:鹿沼土2:ピートモスか腐葉土1:川砂1:くん炭1:パーライト1 など
(例)赤玉土2:ボラ土1:腐葉土1 など
軽石を鉢底にしくと水はけがよくなります。苗の大きさと比較して大きすぎる鉢に植えないようにしましょう。鉢(土)の量が多いと乾きが悪く、根腐れしやすくなってしまいます。苗のサイズに丁度いい大きさのプラスチック鉢で育て、1~2年経ち鉢が狭くなったら大きい鉢に植え替えると育てやすいです。
肥料
基本的には普通の植物よりごく少量ですみます。やらないでも育ちますが、チッソ・リン酸・カリや微量要素が不足してくることがあるので、生育期の4~6月、9~10月に施肥します。ハイポネックス1000~2000倍液のような薄めた液肥を、月1回程度水やりと同じ分量与えるとよいでしょう。肥料が多すぎると葉の色が薄くなったり、葉が分厚く重くなったり、枝が弱く曲がってしまったりするので、与えすぎには気をつけましょう。
病害虫
軟腐病やさび病などのカビが原因の病気に注意しましょう。下葉がカビの原因になるので枯れたら早めに取り除きます。さび病は葉に茶色の変色が現れます。こうなるとベンレートなどを殺菌剤(農薬)を葉に撒く必要が出てきます。害虫はカイガラムシやアブラムシ、芋虫に注意が必要です。白い粉が美しい種類もあり、農薬を葉にかけづらいですが、害虫はオルトランDXなど粒剤があるので葉が汚れずにすみます。病気ではありませんが、夏は生理現象で葉落ちしたり蒸れることがあるので通気と暑さに注意が必要です。
花
コチレドンは、株が充実してくると春に花を咲かせます。つぼみがつくのは秋で開花は2~5月頃、1つの花は1週間ほど咲き続けます。開花まで3ヶ月もかかるという、かなりゆっくりの成長です。オレンジ色のベルのような形の花を咲かせることが多いようです。花が咲き終わったら花がらを摘み取り株に負担がかからないようにします。
コチレドン属によくあるトラブル
- 5月くらいから葉がポロポロ落ちてきた・・・暑さのため起こる生理現象で、ある程度は仕方無いです。水のやり過ぎ、また控え過ぎにどちらにも気をつけましょう。葉が全部落ちて棒のように茎だけ残ることがありますが、茎が死んでいなければ秋になりまた葉が出てくるので秋に見極めましょう。
- 葉が下むきになってきた・・・水のやり過ぎと日光不足で起こるので栽培環境を見直しましょう。
- 茎がひょろ長くなる・・・日光が不足している証拠なので日の当たる所に移動させます。
- 挿し木がうまくいかない・根が出ない・・・酷暑の時期や冬は生育が止まるので避け、春と秋に気長に発根を待ちましょう。

- 春秋型は暑さが苦手。夏は遮光などしてできる限り涼しい環境に
- 夏の水やりは少量、春秋は土がカラカラになってからたっぷりと
- 7~8月以外は日に良く当て、年間を通して雨ざらしにしない
- 冬0℃以下にしないこと
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