目次
リトープス属の写真
リトープスの群生 | リトープス寄せ植え | 花が咲いているリトープス |
脱皮しているリトープス | 実生(種まき)のリトープス | 脱皮中のリトープス |
リトープスの花 |
以下の写真はWikipediaより
日輪玉 | 朱唇玉 | 富貴玉 |
紫勲 | 招福玉 | オリーブ玉 |
リトープス属の基本情報
科 | ツルナ科(ハマミズナ科) |
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属 | リトープス属(Lithops) |
生育型 | 冬型 |
育てやすさ | やや難しい |
成長速度 | 遅い |
増やし方 | 株分け〇・分頭〇・種まき〇・葉挿し× |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | やや弱い |
耐寒温度 | 0℃ |
実測温度 | 0℃~40℃ |
原産地 | 南部アフリカ |
花言葉 | 「こよなき魅力」、「用心深い」 |
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
耐寒性-強い・普通・やや弱い・弱い
耐暑性-強い・普通・やや弱い・弱い
※耐寒温度は水やりを控えた場合の目安値(書籍などによる推奨値)で、状況によりこれより狭くなることがあります。
※実測値は半日陰の場合で直射日光下ではこれより低くなります。
リトープスの特徴
リトープスはツルナ科(ハマミズナ科)の多肉植物の1グループで、肥大した葉にほとんど茎がない極度に多肉化した多肉植物の一つです。メセン類には花ものメセンのように多肉化レベルが低い種類もありますが、リトープスのように高度に多肉化した種類を玉型メセンともいいます。リトープスに似た仲間(玉型メセン)にはコノフィツムやラピダリア、ギバエウム、プレイオスピロスなどがあります。
リトープスの特徴
リトープスは多肉植物の中でも特徴的な形をしています。初めて本やネットでその姿を見たときはなんとも異様な印象を受けます。しかし実にいろいろな色や模様のものがあり、葉のてっぺんには光を取り込む「窓」がある、体を覆うような大きな花を咲かせる、脱皮する、など特徴があり、徐々に興味が湧き引き寄せられてしまいます。原生地は南部アフリカの岩砂漠地帯で、ごつごつとした砂礫の中に埋まっており、まるで「石」のような姿をして生息しています。成長がゆっくりなので普通の植物のようにどんどん大きくならず、ある程度大きくなった株は、通常1年に1回だけ1対(2枚)の葉を出します。
種まきが楽しめる
リトープスは種まき(実生)を楽しむこともできます。花が咲いたら比較的簡単に交配でき、たくさんの種が採れ、播種(蒔く)ことにより多数の株を得ることができます。リトープスの種子は非常に小さく発芽した芽も大変小さく、管理(腰水=底面吸水や遮光=日よけが必要など)はやや面倒です。しかし少しずつ大きくなっていき、次第に模様がはっきりしてくる姿をみるのは、とても感慨深いものです。
育て方のコツ
- 夏は蒸れに注意し、水やりは少なめにする
- 夏は日よけを行い、なるべく涼しい環境に置くと溶けにくい
- 生育期はたっぷり日に当て水やり頻度も量も多くする
- 耐寒性があり、0℃以下にしなければほとんど枯れない
- 開花株は交配することで種子を採ることができる
リトープスは秋から冬~春にかけて成長する冬型の多肉植物です。植え替え、種まきなどを9月頃行い、そこから冬に向かって成長し、2~4月頃に脱皮を迎え、6月以降再び休眠期に入ります。耐寒温度は0℃程度で、耐寒性は普通~やや強いです。
いっぽう日本の環境では6~8月頃の夏の管理が難しく、高温多湿で蒸れを起こしやすくなります。そのため多肉植物の初心者の方には管理がやや難しく特に日よけや夏場の水やりで枯らしてしまうことが多いようです。まさに水やり三年といえます。種を蒔くことは簡単なのですが、その後の管理が難しいといえそうです。
年間栽培カレンダー
生育型 | 冬型 |
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生育期 | 10~4月 |
休眠期 | 6~8月 |
緩慢な時期 | 5月、9月 |
年間栽培カレンダー
水やり |
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置き場所 |
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植え替え |
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種まき |
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増やす |
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肥料 |
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開花 |
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※栽培カレンダーはあくまでも目安です。実際は土や鉢の種類、地域によって大きく異なります。この表は福岡県平野部で多肉植物用の棚を使って育てている場合の情報です。お住まいの地域や使っている土、置き場所によって適宜読み替えて下さい。
主な種類名
日輪玉 (ニチリンギョク) | Lithops aucampiae |
富貴玉 (フッキギョク) | Lithops hookeri |
寿麗玉 (ジュレイギョク) | Lithops julii |
巴里玉 (パリギョク) | Lithops hallii |
トップレッド | Lithops karasmontana ‘Top Red’ |
アルビニカ | Lithops lesliei ‘Albinica’ |
レッドオリーブ | Lithops olivacea var. nebrownii ‘Red Olive’ |
花紋玉 (カモンギョク) | Lithops karasmontana |
紫勲 | Lithops lesliei |
朱唇玉 (シュシンギョク) | Lithops karasmontana |
招福玉 (ショウフクギョク) | Lithops schwantesii |
瑞光玉 (ズイコウギョク) | Lithops dendritica |
青磁玉 (セイジギョク) | Lithops helmutii |
福来玉 (フクライギョク) | Lithops julii ssp.fulleri |
弁天玉 (ベンテンギョク) | Lithops lesliei v.venteri |
李夫人 (リフジン) | Lithops salicola |
留蝶玉 (ルチョウギョク) | Lithops ruschiorum |
麗虹玉 (レイコウギョク) | Lithops dorotheae |
荒玉 | Lithops gracilidelineata |
大津絵 | Lithops otzeniana |
菊章玉 | Lithops julii ssp. fulleri ‘Kikushogyoku’ |
雲映玉 | Lithops werneri |
コールオルム | Lithops coleorum |
朝貢玉 | Lithops verruculosa |
緑福来玉 | Lithops julii subsp. fulleri var. fulleri ‘Fullergreen’ |
曲玉 | Lithops pseudotruncatella |
Lithops |
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※以下に掲載している目安はあくまで目安です。苗の状態や環境などにより適宜調節してください。
育て方のポイント
水やり
リトープスの水のやり方は季節によってかなり異なり、また苗のサイズによっても違ってきます。
生育期と脱皮中の水やり
10月~11月の生育期は土が乾いたら月4回程度、量も多めに与えます。12~1月の5℃以下が続く時は生育が弱まるので少し控えめに(月2回程度)行います。
また2~4月は脱皮中なので水やりはかなり少なめに月1~2回程度に量も少なめにします。これは新しい葉の次にもう一対新しい葉がでてしまい、体が小さくなってしまう二重脱皮を防ぐためです。リトープスの新しい葉は古い葉(皮)の水分を吸収して育つので、古い葉が元気なうちは水をやらないくらいです。5月中旬ごろ古い葉がカリカリに乾いたら水やりを再開します。
脱皮の過程についてはこちらを参照ください。
リトープスの脱皮はいつ?4ヶ月の様子を写真で確認!
真夏の水やり
すっかり脱皮が済む頃には、もうどんどん気温が上がり夏に近づいているので、5月の水やりは少なめです(月2回鉢内が湿るぐらい)。6~8月は月1回程度表土をそこそこ濡らすぐらいにします。3年以上経って大きく保水力も上がった苗は、この間完全に水をやらない断水をする場合があります。
断水すると株にしわがよって枯れそうな感じがして心配ですが、少しのシワであれば心配はいりません。断水は2.5cm程度のサイズになってきたころ可能になります。店頭で大きく育ったリトープスを購入された方で、初心者の方は夏場は水やりをほとんどしないぐらいが良いのではないかと思います。
※リトープスの真夏の水やりについては意見が分かれ、月1回ほど葉水をかけたほうがいいという意見もあります。参考までに管理人は完全な断水はせず、月に1~2回は軽く水を与えています。
種まき2年以内程度の苗
リトープスは成株の購入だけでなく、自分で種まきから育てることもできますが、この株(実生株といいます)は乾燥に弱いので夏でも10日に1回程度、少量の水を与えます。このくらいのサイズの株は水やりで溶ける心配があまりなく、むしろ直射日光に当てて溶かすか、干からびさせて枯らすことが多いです。
秋の水やり
9月頃からまた生育が始まります。気温が25~30℃くらいになったら水やりを再開し、少しずつ量も増やしていきます。10月には週に1回ほど水を与えます。リトープスは葉に水がかかるのが好きなタイプなので、上からじょうろのはす口からじゃぶじゃぶかけてOKです。リトープスは下に根を伸ばすタイプなので、土の表面がちょっと濡れる程度では根に届かないため、鉢底の穴から流れ出るまで与えます。
置き場
置き場所の基本
リトープスは日本では地植えの雨ざらしで育てることはできません。鉢植えにして、簡易ビニール温室や軒下など雨のかからないところに置きます。
そして充分風通しのよい所に置き、また日照不足に気をつけましょう。生育期の10月~4月はなるべく直射日光が当たる外で管理します。(種まきから2年以内の苗は直射日光に弱いので、日よけが必要になります。)
寒い時期の置き場所
冬型の多肉植物という点から、寒さに強いのかと思ってしまいますが、「冬型」とは冷涼な時期(10~25℃程度)によく生育するという意味で、必ずしも寒さに強い訳ではありません。実際リトープスは0℃までは耐えることができますが、それ以下にすると凍結や冷害にあい枯れてしまうことがあります。
寒冷地などで11月~3月にマイナス2℃を下回ってしまう場合は室内に取り込み、窓から日光を当てます。もし窓際が確保できない場合は、植物育成ライトを使うと日光不足を補うことができます。暖地では基本屋外に置けますが、マイナスになる時は必ず室内に避難させましょう。
水やり直後の株は凍結に弱いので、3℃以内で室内への取り込みを推奨します。0℃まで大丈夫というのは枯れないぎりぎりのラインなので、できれば3℃以下にしないほうが初心者のうちは安全です。凍結するとそのときはなんともなくても、数日後に溶けて次第に縮み無くなっていきます。※参考までに管理人の場合は1℃を室内取り込みラインにしています。
室内に入れる場合は風通しを心がけましょう。通風不足だと冬でも腐敗菌が入り、腐ってしまうことがあります。
夏は遮光する
成株(概ね2.5cm以上)は5~8月まで日よけが必要になります。50%程度の遮光ネットを設置するか、明るい日陰(半日陰)に置きます。明るい日陰とは、直射日光は当たらないものの、完全な日陰のような暗い場所ではない所です。株が少しずつひょろひょろと長くなる時は日照が足りない証拠なので、現在の置き場所より少し日当たりの良いところに移動させてあげましょう。
※また種まき1~2年以内の苗は成株より直射日光に弱いため、3月半ば~10月半ばに30%~50%の段階的な日よけが必要になります。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
耐暑性は弱くはない
夏越しが大変といわれますが、耐暑性自体は非常に弱いわけではなく、高温自体には結構耐えられます。ただし日よけと水の控えが必要で、真夏の直射日光下だとたった一日で溶けてしまいます。また暑い時期は休眠期でもあります。そのため半日陰(遮光率50%程度)の所に置きます。5~8月頃は50%程度の遮光ネットを張ると最良ですね。直射日光を避ければ35~40℃も耐えられます(実測値)。※
※リトープスは種類により性質の強弱があり、弱い種類は夏に溶けてしまいやすく、日陰の35℃でも耐えられないことがあります。
夏の管理
水やりを控えて耐暑性を上げる
また耐暑性を上げるためには、水やりをかなり控えることが大切です。全く水を与えない断水すれば確実ですが、シワシワになってしまうので、それが心配な場合は月1回程度涼しい日の夕方に、土の表面が濡れるぐらいにさらっと水やりすれば、シワシワを避けられます。
置き場所の決め方
4月や9月も日差しが強すぎる場合や暖地で気温が高い場合、20%~30%程度の遮光が必要になることがあります。暖地では気温が早い時期から上がり、またなかなか秋になっても下がらないため、4月や9月も50%遮光ネットを張ったほうがよいです。
日照が適切かどうかは、葉の色や伸びている長さ、窓の盛り上がりなどで判別できます。まず葉が緑色になったり、ヒョロヒョロと伸びている場合は日光不足を表しているので、もう少し日当たりのよい所に置きましょう。窓が平らではなく盛り上がってきたときも水やりが多すぎるか、日照不足の可能性が高いです。
最初のうちは1年を通してどこに置けばよいのか見当が付かないかもしれません。しかし苗の様子を見ながらこまめに置き場所を変えていくことで、お住まいの地域・環境ごとの感覚が掴めてきます。
種まきした苗の置き場
種まきから1~2年以内の実生株は成株(概ね2.5cm以上)より直射日光に弱いので、4~9月に50%遮光ネットが必要になります。3月は30%遮光、10月も30%~50%の遮光が必要です。
特に実生12ヶ月以内(9月に蒔いて翌年9月まで)は日よけが非常に大切で、うっかりすると半日で全部溶かすことがあります。目安としては、2月から20%遮光、3月は30%遮光、4~9月は50%遮光、10月は30%遮光、11~1月のみ遮光ネットなしで育てることができます。
越冬最低温度と冬越し方法
できれば3℃で室内へ取り込む
比較的寒さには強く0℃を耐えるとされています。ただ霜が当たったり株が凍ったりすると、すぐ枯れるわけではありませんが傷んでしまいます。根が凍ると回復は望めません。マイナス5℃になると枯れるので0℃できれば3℃以下になったら室内に取り込んであげましょう。
※リトープスは冬型ですが、冬型とは寒さに強い(マイナス5℃以下などに耐えられる)というわけではなく、多肉植物の中では冷涼な気温(10~25℃程度)で生育がよいグループであることを表しています。
冬の管理
順調に育てるためには
越冬温度(耐寒温度)ぎりぎりよりも少し余裕をもって冬越ししたほうが、年間を通した生育が良くなりますし、冬型の植物なので冬の生育期が充実します。特に初心者のうちは安全に冬越しさせるには3℃以下にしないことをおすすめします。そして気温が低いときは水やりを控えることが大事です。
多肉植物は水やりを控えめにすると耐寒性がアップし、体内の水分が多いと耐寒性が弱くなってしまう傾向にあります。リトープスも同じで、5℃程度の温度ではほとんど水をやらないぐらいが安全です。
※参考までに、管理人が実際に実験したところ、水を毎日のように与えた株は0℃で凍結して枯れ、1週間に1回程度にしたものでは0℃を耐えることができました。
室内に取り込む場合は、暖房に当たったりせず窓辺などで一日中日差しが当たる所がベストです。少なくとも最低限1日4時間当たる所でないと徒長してしまいます。もし植物育成ライトが設置できるのであれば、徒長を極力抑えることができます。
※簡易ビニール温室は保温効果はないため、雪や雨、寒風から守る効果は高いですが、低温対策には向かないのでご注意ください。
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増やし方
リトープスは分頭または種まき(実生)で増やすことができます。挿し木、葉挿しはできません。
適期は分頭が9~11月頃と3~4月頃、種まきが9~10月か3~4月頃(9月の間が最良)です。
適期を過ぎると根がでづらくなり、分頭後の生存率が下がってしまいます。また種まきの場合、3~4月の春蒔きだと夏越しが難しいので、上級者の方むけとなります。地域により気温に差があるとは思いますが、暖地では概ね9/1~9/31の間が最良です。
株分け(分頭)
数年かけて分頭した苗は株分けすることができます。通常春の脱皮の時、1対の葉が出てきますが、生育がよく株が充実してくると2対出てくることがあります。(上から見ると4枚の葉が見えます。)そのような場合は、それぞれを切り離して別々に植える分頭(株分け)が可能です。
株分けする場合は、作業前1週間程度は水をやらず土を乾かし、鉢から掘り出して丁寧に土を落とします。根が充分に生えていて2つに分けられることを確認してから、清潔なカッターナイフなどで根の部分を切り分けます。数日間切り口を乾かして土に植え、水を与えます。株分け後は2~3週間程度、直射日光に当てず、半日陰で管理するようにしてください。
※リトープスの株分けはやや難易度が高く、失敗すると片方に根が付かないので、初めての方は慎重に行ってください。※切れ味のよすぎるカッターだと根が切れすぎて逆に難しいことがあります。
種まきの方法
分頭(株分け)は2対の葉が出てきた時にしかできないため、通常は種まき(実生)で増やします。種まきは遮光や腰水(底面給水)など作業がやや面倒ですが、1つの種から1つのリトープスが誕生するので、大量の苗を生み出せます。
種まきについては別のページに詳しく載せているので参考にしてみてください。
リトープスの詳細な実生方法とその記録(3年間分)
リトープスの種まき12ヶ月間の育て方
植え替え
植え替えの大切さ
リトープスは通常1年に1回程度植え替えをします。前年から成長して窮屈になってしまった株間を広げたり、根を整理したりします。特に種まきから2年以内は株間を広げることで早く大きくできるので、年1回のとても大切な作業です。(広く根を張れることが株の成長にとって大切です。)
3年以上経った株で充分大きくなっていたり、それほど大きくしたくない場合は2年に1回程度の植え替えでも問題ありません。
時期は生育期の初めの9月~10月頃で、できれば9月初め頃が最良です。休眠期は切った根が出づらいので避け、また脱皮中も状態が繊細なので避けた方が安全です。
植え替え手順
植え替える際は事前に水やりを控えて土を乾かしておきます。土が乾燥すると掘り返した時、太い根が切れにくいので、株へのダメージを抑えることができます。鉢から掘り出したら慎重に根をほぐして土を落とします。
植え付ける時、根の先のほうは切り詰めてしまって大丈夫です。(写真を参照ください。)鉢の深さ半分ぐらい土を湿らせ、割り箸などで穴をあけます。そこに先ほど根を切り詰めたリトープスを植え、周りからそっと土を抑えるようにします。
土を湿らせているのですぐの水やりは必要ありませんが、根が充分に伸びるためにはある程度の水分が必要なので、鉢が軽くなってきたら水やりを行います。植え替え後2~4週間程度は直射日光が当たらない半日陰に置きましょう。
種まきから育てた場合
種まきから育てた場合も、1回目の植え替えを種まきからちょうど1年後の9月頃に行います。リトープスは9月に種を蒔き、翌年9月に植え替え、翌々年9月に植え替えと、9月を単位にして作業するとうまくいきやすいです。
土と鉢
リトープスはサラサラした砂礫に自生するため、日本で使われている普通の植物用の土では育てることは難しいです。そのような花・野菜の土より保水性が低く、排水性がよく、通気性のよい、肥料分が多すぎない土が適しています。
市販の多肉植物の土
土は市販の多肉植物の培養土を使ってもOKです。購入する時は苗の大きさに応じて、小さい苗のうちは「細粒」の土を使い、大きくなるにつれて少しサイズの大きな「小粒~中粒」の土に植え替えていきます。
市販の土では、種まき0~2年の間はプロトリーフ「さし芽・種まきの土」や花ごころ「さし芽・種まきの土」など細かめの土、それ以降はミニ観葉・多肉の土など少し大きめの土がよいと思います。
※サボテン用にありがちな粒サイズが1cmを超えるような大きい土は、小さな苗には水はけが良すぎる、根が張りにくいなどのため、さけたほうがよいと思います。
配合する場合
土は購入することもできますが、自分で配合することもできます。
その場合は、赤玉土小粒、鹿沼土小粒、ピートモス(酸性度調節済み)、パーライト、軽石小粒、くん炭などを使い、水はけがよい土をブレンドします。
(例)赤玉土小粒1:軽石小粒1:ピートモス1
水持ちの悪い土の配合にして、水をしっかり与えても乾きやすくする
リトープスは直根タイプ(ごぼう根)なので横にはあまり広がらず、下に長く伸びます。そのためある程度の深さのある鉢を使うことが多いです。
その場合、土の量が多くなり水やりしたとき土が底まで湿り鉢が重くなります。そうすると水はけが心配ですし、徒長の原因になることがあります。そこで土を水持ちのあまりよくない配合にすると、うまくいきます。
具体的にはパーライトやくん炭、軽石などを加えます。そうすると水やりしたときすぐに水が貫通して下から出てきますので、鉢の中に水が大量に残らず、底の方の土もすぐに乾きます。
鉢の選び方
鉢サイズについて
リトープスは大きくなっても5cm程度と小さな種類なので、毎年鉢サイズを大きくしていく必要はありません。それよりは1鉢に植える苗数を減らしていくという方法が一般的です。(同じ鉢で1年目16苗、2年目9苗、3年目4苗など)
陶器の鉢とプラ鉢
鉢には大きく分けて陶器の鉢(駄温鉢、素焼き鉢など)と、プラスチックでできたプラ鉢があり、それぞれ性質に差があります。
陶器の鉢は夏に鉢の温度を下げる効果がある、多孔質のため通気性がよいなどのメリットがあり、プラ鉢には適度に水持ちがよい、軽くて収納スペースを節約できるなどのメリットがあります。
どちらが向いている?
結論ですが、リトープスはどちらでも育てることはできますが、水やりのコントロールがしやすい、深鉢が選べる、収納性が高いなどの理由でプラスチック鉢がよく使われています。
またリトープスは種まきから育てる機会も多く、種まきには陶器の鉢は適さないため※2、新品のプラスチック鉢を使うことが多くそのままプラ鉢に植えているケースも多いようです。
おすすめなプラスチック鉢は日本ポリ鉢が販売している(旧アップルウェアー社)プレステラ90です。これは軽くて硬質で持ち運びしやすい他、使い捨てできるため清潔を保ちやすく、スリット鉢のため根の健全な伸長にも役立ちます。また百均のA4サイズカゴにぴったり12個入るため、収納性も抜群です。
プレステラ鉢については以下で解説しています。
※2 陶器の鉢はプラ鉢のように気軽に使い捨てできないので、種まきの時、底面吸水の時の清潔を保ちづらいです。また陶器の鉢は多孔質で病原菌が入り込んだりカビが発生したりしやすく、使い回すとプラ鉢より不潔になりがちです。
肥料
リトープスは普通の植物のような大量の肥料は必要としません。
ただリトープスにも肥料を与えた方が非常によく育ちますので、量は加減しますが与えることをおすすめします。
※自然界では生態系(降雨、動植物の死骸、土壌など)から肥料分、微量要素が供給されるのでヒトが与えなくても育つのですが、鉢内で人工的に栽培している場合はそれがないため、補ってあげることが必要になります。
特にリトープスは大きくさせるため、また開花にも肥料分が必要とされているため、しっかり育て花を咲かせるためにも肥料(施肥)は大切です。
成株(概ね3cm以上)の場合
成株を買った場合、植え替えの時期であれば新しい土に植え替え、そのとき土に緩効性化成肥料(マグァンプK小粒など)を1~3つまみ混ぜ込みます。もし植え替えに一番適した時期ではなかった場合で、生育期である場合は液体肥料(ハイポネックス原液の1,000倍希釈液など)を合計3回ほど与えます。
追肥・元肥はどちらか一方でよく、与えすぎになってしまいますので両方与える必要はありません。
種まき2年以内の場合
種まきから育てている場合は、月に1回ほど希釈した液肥をスプレーしたり、緩効性化成肥料をパラパラとまくなどして与えると早く大きくなります。特に種まきには無肥料の土を使うことが多いため、積極的に肥料を与えていくことをおすすめします。
ただ成株、幼苗(種まき数年以内)共に、肥料を与えすぎると徒長して軟弱な株になり、直せないあるいは直すのが大変になります。早く大きくしたいからと過度に与えすぎないようにしましょう。
花
リトープスは秋に花芽を付け、冬の12~1月頃に花を咲かせます。花はある程度生長した株(開花年齢に達する)でないと咲かないため、種まきから育てている場合は気長に待つ必要があります。
リトープスは花を咲くと交配させて種を採ることができます。また自然交配しやすいため、純粋な種を得るためには交雑しないよう、別種とは離した場所に置いておく必要があります。
花を咲かせるためには、開花年齢に達することはもちろんですが、可能な限り日に当てて光合成させること、めりはりをもって水をしっかり与えることが大切です。また秋に植え替えるとその年は花が咲きにくくなりますので、前年に充分株間を取って植え替えておくことが必要になります。
病害虫
リトープスはそれほど病害虫の心配がありません。ただ以下のような病害虫が付くことがあるので栽培時は注意して観察しましょう。
害虫
根にネジラミという白い虫が発生することがあります。根ジラミがつくとリトープスの体液を吸われて生育が悪くなるので、生育が悪いと感じたら植え替え時期ではなくても、鉢から抜き出して根を点検してみましょう。根のびっしりと白い粉のようなものがついていたら根ジラミの可能性が非常に高いです。
この場合はカットできる部分であれば切り捨て、そうでない場合は水で丁寧に洗い流します。その後速効性のある殺虫剤を散布しておきましょう。種まきでは新品の用土を使うため、根ジラミが出にくいのですが、ホームセンターや園芸店から持ち帰った鉢に付いていることは案外多いので、買ってきたら初めての植え替え時期に植え替えてチェックしましょう。
花やつぼみにはアブラムシが付きやすく、地面に近い所に置いている鉢にはナメクジが入り込み、花を食い荒らすこともあります。
病気
花がらや脱皮したカラカラの葉には黒カビが生えやすいので、ピンセットなどで早めに取り除きましょう。ただまだ水気のある皮を引っ張ると裂けてそこから腐敗菌などが入るため、皮(旧葉)の水分が完全にカラカラに乾く6月頃まで待ってから行うようにしましょう。
生理障害
夏は暑い時間帯に水をやると水分が熱されて蒸れて溶けたりします。また徒長して軟弱な株には腐敗菌が入りやすく突然枯れることがあります。いずれの場合も正しく栽培すれば多くを防げますので、夏場の水やりや日の当てすぎ・日光不足には特に注意しましょう。
※ただ弱い性質の種類はどれほど気をつけていても、夏場に溶ける現象を完全に防ぐことはできません。その場合はあらかじめたくさん蒔いておき、万一の枯死に備えておくと良いと思います。
販売店や値段など
苗の購入
リトープスはメセン類の中ではメジャーな種類で、大きめの園芸店やホームセンターなどでは時期によって取り扱っていることがあります。
リトープスには種類名がついて1苗ずつ販売しているものと、ミックス種子から育ててまとめて販売している商品があります。種類名がついているものは1鉢最低700円程度と高価ですが、まとめての販売では1鉢に小さな苗が5~30個程度植わっていて500円~2,000円程度で買えることが多いです。
大きめの開花株は花期の12~1月に出回ることが多いですが、小さなリトープスの群生や花の咲いていないリトープスは春・秋を中心に不定期で出回っていることが多いです。
ここまでは店舗での購入についてですが、それ以外にネット通販で入手することも可能です。探したところアマゾン、楽天市場、ヤフーショッピングなど大手通販サイトには少ないですが、取り扱いがありました。
また群仙園ではカタログから注文が可能です。
またフリマのメルカリやラクマ、ヤフオクなどにも多数の出品がありますので、お使いの方は検索してみてください。ネット通販では送料がかかるのがネックですが、フリマでは第四種郵便という73円から全国一律料金で配送できるサービスが使える場合がありますので、お得に購入できます。最安価格で購入したい場合は、フリマの選択がベストかと思います。
オンラインショップでも購入できますスポンサーリンク
種子の購入
リトープスの種子は一般的な園芸店やホームセンターでは販売されていないことが多いです。入手はネット通販(アマゾン、楽天市場、ヤフーショッピング、その他専門店)かフリマサイト(メルカリ、ラクマ、ヤフオクなど)または海外通販の個人輸入になると思います。
種子には色々な種類が入っているミックス種子と、種類(品種)ごとに販売されている種子があります。
初めて種を蒔く方はミックス種子がおすすめです。これは品種ごとの種子より安くて何回にも分けて蒔ける(実験ができる)ためです。ミックス種子を数回蒔いて、うまくいくようになってきたらご自身の好きな種類ごとの商品を購入して蒔くとよいと思います。
よくあるトラブルとQ&A
トラブル事例
株が消えてしまった(溶けた)
これはいわゆる「溶ける」現象で、葉の傷口などから腐敗菌が入ることで、枯れてしまうものです。また真夏のかんかん照りの時間に直射日光に当てたり、冬に0℃以下に凍結させてしまった後に起こることもあります。いずれの場合も、カラカラの皮を残して跡形もなくなってしまいます。徒長させないように育てる、真夏・真冬の環境整備に気をつけるなどで極力防いでいきましょう。
葉が割れてきた
葉が割れたり裂け目が入ったりするのは身割れといい、水やりのしすぎで体内に余分な水が溜まっていることを表しています。一度裂け目ができてしまうとその部分は治らず、そこから腐敗菌が入って腐ってくることがあります。予防方法は水やり頻度や量を適切な量に抑えることです。
側面にしわがよってきた
リトープスは夏場に水やりを控えてシワがよっても、秋に気温が下がり水やりすればすぐに水を吸収してシワが改善します。そのため少しのシワなら問題なく、普通にあることです。しかし小さな実生苗(種まきして2年以内)の苗は干からびて枯れてしまうことがあるので、シワがよらない程度に水やりをしたほうがよいようです。
葉の色が薄い
葉の色が薄くて緑色になっており、窓の色もぼんやりしていたら、水やりのしすぎか、日照不足が考えられます。一度伸びてしまうと次の脱皮までそのままなので、水やりをこれまでより減らし目にまたもう少し明るい所に移動させてあげましょう。
Q&A
水やりの量が分かりません
どのような土を使っているかでかなり変わってきて一概にはいえないのですが、暖地の場合目安として、多く与えてよい月順に10月、11月、12月、9月です。次にかなり控えるのが(脱皮のため)1月~5月です。非常に控える又はほとんど与えないのが6~8月です。一年間を通して充分水をやれるのは10月と11月しかないような印象です…。逆にこの時しっかり与えておかないと、大きくなりづらいです。
あまり大きくならない
水やりと日照時間、適度な温度が大きくなる秘訣です。10~12月はしっかり水を与えましょう。この時期は多少水やりが多くてリトープスが伸び気味になっても大丈夫です。(脱皮で再び締めることができます。)また10~3月まではできるだけ日に当てて光合成させましょう。また温度ですが、13~23℃程度が一番成長し、平年より暖かい冬、平年より涼しい春・初夏は非常によく大きくなります。
脱皮とは?
脱皮は通常1年に1回2~5月に新しい1対の葉が出て、旧葉が枯れていく現象のことです。脱皮では枯れた旧葉が殻のようなカサカサした状態になります。大きくなったリトープスは1年に1回の脱皮ですが、種まきから1年程度の時期までは、年に何回も脱皮が起こることもあります。脱皮直後が一番模様(窓)がはっきりしており、色も斑点も鮮やかです。先ほどのように脱皮には3ヶ月程度の時間がかかるため、あせらず待ちましょう。また旧葉の除去は完全に脱皮が終了する6月頃に行いましょう。
二重脱皮とは
二重脱皮は1対の葉が出てくる時に下からもう1対の葉が出てきてしまう現象を指します。こうなるとせっかく大きくなったリトープスが小さなサイズに戻ってしまうことがあるため、避けたほうがよいとされています。二重脱皮は脱皮時期の水のやり過ぎによって起こることが多いため、脱皮中の2~5月頃は水やりは少量を心がけましょう。
脱皮中に植え替えしていい?
植え替えでは根を切り、根が再生するのを促すため水を与えます。しかし脱皮中だと水をたくさん与えられないのであまり適していません。そのためリトープスの植え替えは9~11月の秋にすることをおすすめします。
根のない苗はどうすればよい?
購入した苗に根が生えていないことがあります。完全に根がないと復活は難しいですが、根の付け根が残っていてその中心部が白ければ、そこから根を出せることが可能な場合があります。根の中心部が茶色い時は、白くなるまで少しずつハサミで切り詰めていきます。全部茶色になってしまっていたら残念ながら復活はできません。
根が出るには水分が必要なので、かなり湿らせた土にやさしく挿して安静にしておきます。1週間ほど経って苗を少し触ってみて、わずかに抵抗を感じるようであれば根が出ている可能性が高いです。抜いて確認するとせっかく出た根が切れてしまいますので抜かないように、また土をカラカラに乾かさないようにしながら2~3週間ほど待ちましょう。
植物育成LEDライトで育てる場合何ルクス必要?
あくまで管理人の栽培下でのデータ(室温30℃程度を維持、5月から9月の5ヶ月間)ですが、8,000~12,000ルクス(を交代交代当てる)でほぼ徒長が見られませんでした。ただこれは徒長がみられないというだけで、開花・結実などのために充分なのかは不明です。