多肉植物は挿し木、株分け、葉挿しなどで簡単に増やすことができます。7通りの増やし方と向いている種類、代表種のおすすめの増やし方、作業時のポイントなどについて解説しています。
目次
多肉植物は簡単に増やせる
多肉植物は普通の植物と同じように、色々な方法で簡単に増やすことができます。
増やす方法には、株分け、挿し木、葉挿し、種まきなど様々な方法がありますが、種類によってできるやり方とできないやり方があります。
そこで代表的な増やし方とできる種類を紹介します。
多肉植物の6つの増やし方
- 株分け
- 挿し木
- 葉挿し
- 根ざし
- 胴切り
- 縦割り
- 実生(みしょう・種まき)
株分け
株分けとは、親株が群生したり子をたくさん出したとき、親株と子株を分割してそれぞれ植え付けることをいいます。多肉植物は株分けできるものが多く苗の数を増やすのに便利な方法です。
子株に根がある場合は「株分け」、根がない場合は「さし芽」の扱いになります。(挿し木との違いは子株に根があるかどうかです。)
多肉植物を育てていたら知らぬ間に子株がふえ群生したり、根元からたくさんの新芽がでてくることがあります。そんな場合は「株分け」をしてみましょう。
株分けの方法
株分けは種類によりやり方が全く違うので、一概にいうことができないのですが概ね
- 親株と子株を分割する
- 可能な種類は病害虫をチェックする
- それぞれを鉢に植え付ける
- 半日陰に移動させる
- 水やりを開始する
- 本来の置き場に戻す
となります。
※水やり開始のタイミングは、根の有無や根張りなどによって異なります。
株分けで増やせる種類
エケベリア属、グラプトペタルム属、グラプトセダム属、グラプトベリア属、セダム属、アドロミスクス属、ヒロテレフィウム属、ダドレア属、クラッスラ属、パキフィツム属、パキベリア属、センペルビウム属、オロスタキス属、アエオニウム属、セネシオ属、カランコエ属、コチレドン属、アロエ属、ガステリア属、スタペリア属、フェルニア属、アナカンプセロス属、など広い範囲で株分けが可能です。
また分頭した玉型メセン類(リトープス、コノフィツムなど)や子株を出すタイプのサボテンでも株分けが可能です。ハオルチアも株分けで増やせます。
詳しい方法については以下のページをご参照ください。
挿し木(さし木)
挿し木(さし木)は親株から茎を切り取って土にさし、根を出させて増やす方法のことです。多くの種類で行うことができ、多肉植物では葉から増やす葉挿しと並んで良く行われています。
挿し穂の例
※挿し木とさし芽は同じ意味で、挿し穂とは挿し木用のカットした苗のことです。
挿し木の方法
挿し木の方法は概ね以下の通りになります。
- 挿し穂を作る
- 挿し床を準備する
- 種類により乾かしてから植え付けるか、すぐに植え付ける
- 水やりを始める
メリットとデメリット
挿し木のメリットは徒長した(伸びすぎになった)株のカット苗や、剪定後に余った苗などを使って手軽に多肉植物を増やせることです。
また多肉植物の増やし方に葉挿しがありますが、葉挿しは最低2ヶ月~長いと1年近くの時間がかかります。挿して根が出るのを待つだけなので、ずっと速く増やすことができます。また葉挿しでは増やせない種類も挿し木なら増やせます。そしてカットした親株の枝からは新しい枝が出てくるので一石二鳥です。
もうひとつのメリットに斑入りがそのまま移行できるという点があります。葉挿しだと斑がうまく入らないことがあるのですが、挿し木ならそのままの斑の入り方で育ちます。
挿し木で増やせる種類
エケベリア属、グラプトペタルム属、グラプトセダム属、グラプトベリア属、セダム属、アドロミスクス属、オトンナ属、ヒロテレフィウム属、ダドレア属、クラッスラ属、パキフィツム属、パキベリア属、クセロシキオス属、センペルビウム属、オロスタキス属、アエオニウム属、セネシオ属、カランコエ属、コチレドン属、アロエ属、ガステリア属、セロペギア属、ポーチュラカリア属、スタペリア属、フェルニア属、アナカンプセロス属、など広い範囲で挿し木が可能です。
詳しい挿し木の方法は以下のページをご参照ください。
葉挿し(葉ざし)
葉挿しとは、親株から葉をもぎとりそこから芽や根を出させて、新しい株を作る増やし方の一つです。よくある植物の増やし方に「さし木」がありますが、多肉植物では「葉挿し」もよく行われています。
葉挿しの方法
葉挿しの方法は概ね以下の通りになります。
- 親株から手頃なサイズの葉をもぎとる
- トレイに並べる
- 発根してきたら土に植える
- 親葉が枯れたら鉢上げし水やりを開始
メリットとデメリット
葉挿しのメリットはたくさんの株を一気に作れることです。さし木より時間はかかりますが、例えば10枚の葉から10個の株を作れるので、たくさん増やしたい時におすすめです。
逆にデメリットとしては完成までに長めの時間がかかること、失敗してしまう葉も出ることが挙げられます。葉挿しの成功率は100%ではなく、もぎ取り方によっては芽や根が出ず枯れてしまうことがあります。そのため欲しい数より多めの葉を用意することが必要です。
葉挿しで増やせる種類
グラプトペタルム属、セダム属の一部、アドロミスクス属、エケベリア属、クラッスラ属の一部、パキフィツム属、ガステリア属、ハオルチア属(ハオルシア属)、グラプトベリア属、セデベリア属、グラプトセダム属などが葉挿し可能です。
葉挿しは葉の付け根に成長点がある種類のみが行えます。
たとえばグラプトペタルム、エケベリア、セダムの一部、パキフィツムなど。逆に葉のもぎ口に成長点がないカランコエの一部やセネシオ、コチレドン、ユーフォルビア、コーデックスなどでは行うことができません。
詳しい葉挿しの方法は以下のページをご参照ください。
根ざし
根ざしは親株から切り取った根から子株を作り出す方法で、ハオルチアの一部など、ごく一部の種類(根がとても太いもの)で可能です。
根から育てる画期的な方法ですが、取り過ぎると親株に負担がかかるので適度な量にとどめておきます。
根ざしの方法
根ざしの方法は概ね以下の通りになります。
- 親株から太い根を茎の部分をつけて切り取る
- 1cm程度地上に出して土に植える
- 発芽まで土がやや湿っている状態を保つ
- 芽が大きくなったら新しい鉢に植え直す
根ざしで増やせる種類
ハオルチアの一部(万象・玉扇)
詳しい根ざしの方法は以下のページをご参照ください。
胴切り
胴切りとは、柱サボテンなど茎が太いものを水平に切ってそこから発根させる増やし方です。
多肉植物の挿し木がありますが、茎が太い胴体になっただけで挿し木と変わりありません。そのため胴切りしたサボテンは、多肉植物の挿し木と同じようにカット面を乾かしてから土に挿し、発根後水をやるという流れです。(ただ切り口が広いため、挿し木よりよく乾燥させる必要があり、少し難易度が高いです。)
徒長して形が悪くなったり、長細くなったり複数の苗に分けたりしたい場合がありますが、そのようなときに胴切りを行います。
胴切りの方法
- (サボテンの場合はトゲをカットする)
- 水平に切る
- 周囲をそぐ
- 切り口を乾燥させる
- 土に挿す
- 発根したら水をやる
胴切りで増やせる種類
サボテン、アガベ、ハオルチア、エケベリアなど
詳しい胴切りの方法については以下のページをご参照ください。
縦割り
縦割りとは、アガベなど子株が出にくい種類を強制的に子吹きさせる方法です。
株の中心で真っ二つに切り、株の割れ目に小石やプラスチック片など硬いものを差し込み、割れ目が自然にくっついてしまわないようにします。
2つに分けた株は、成長点が残った一方はそのまま生育し、もう片方からは子株がたくさん出てきます。
縦割りの方法
- 株の中心にカッターなどで切れ目を入れる
- カッターで株元まで切り分ける
- 割れ目に清潔な小石やプラスチック片などを差し込む
- 半日陰で管理する
- 一方には新芽が吹き、元の株は成長点が動き出すのを待つ
※成長点を傷つけないようにするのにコツがいり、やや上級者向けの方法です。
縦割りで増やせる種類
アガベ、アロエ、エケベリアなど
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種まき(実生)という方法
ハオルチアのタネ
多肉植物の原種は基本的な種まきができます。種まきのことを園芸用語で「実生・みしょう」といいます。
上で紹介した葉挿しや挿し木、株分けなどは親と同じ性質(斑の入り方や形状など)を引き継ぎますが、種まきでは別々な個体が生み出されます。
実生は
- タネが微細で扱いが難しい
- 腰水(底面吸水)などが必要で管理が面倒
- 大きくなるまでに何年もかかってしまう
などのデメリットもありますが、とても楽しくやりがいがあります。
また
- ウイルス病が伝染しない、
- 塊根植物では茎を太くできる
- 株分けできない種類でも増やせる
- 一気にたくさんの苗が育てられる
など種まきならではのメリットもあります。
実生は多肉植物、サボテン、塊根植物(コーデックス)、メセン類、エケベリアなど種類によってやり方が異なるので、興味を持たれた方はぜひ、実生にも挑戦してみてください。
以下は種類ごとの種まきの方法と経過記録のページです。
代表的な種類の増やし方
エケベリア
エレガンス、エボニー、七福神、霜の朝(パキベリア)、シルバースター(パキベリア)、静夜、高砂の翁、チワワエンシス、薄氷(グラプトベリア)、ハムシー、花うらら、ファンファーレ(セデベリア)、桃太郎、大和錦、ラブリーローズ、ラズベリーアイス、リップスティック、ローラ、群月花、グスト、樹氷、デビー(グラプトベリア)、ブラックキング、ピンクルビー(グラプトベリア)、ピーチプリデ、プレリンゼ、プラチナドレスなど
グラプトペタルム
朧月(オボロヅキ)、オーロラ、虹の玉、桜牡丹、シュウレイ(秋麗・秀麗)、白牡丹(グラプトベリア)、姫秀麗、マクドガリー、だるま秀麗、ブルービーン
セダム
月の王子(オウレイ)、玉つづり、新玉つづり、スプリングワンダー、タイトゴメ、玉葉、天使の雫、春萌、マッコス(セデベリア)、マジョール、松姫、ミルキーウェイ、銘月、八千代、リトルビューティー、レッドベリー、ロッティー、ドラゴンズブラッド、ビアホップ、ブロンズ姫、パープルヘイズ、パリダム、トリカラー
ハオルチア
オブツーサ、十二の巻、万象、玉扇など
カランコエ
ウサギの耳(月兎耳、黒兎)、胡蝶の舞、子宝草、テディベア、不死鳥、フミリス、デザートローズ、紅提灯
サボテン
ロフォフォラ、アストロフィツム、ギムノカリキウム、セレウス、柱サボテン、ウチワサボテン、玉サボテン
コーデックス
アデニウム、パキポディウム、ペラルゴニウム、モンソニア、チレコドン、オトンナ、ユーフォルビア、ディオスコレアなど
アガベ
セネシオ
七宝樹、マサイの矢尻、万宝、美空鉾、三日月ネックレス、グリーンネックレス、銀月、ドルフィンネックレス、ピーチネックレスなど
クラッスラ
クラッスラ、火祭り、カクレイ、カネノナルキ、紀の川、もみじ祭り、玉稚児、星の王子、南十字星、リトルミッシー、ルペストリス、若緑、ゴーラム、五重塔、数珠星、ブロウメアナ、パステル、紅稚児など
アエオニウム、コチレドン
アエオニウム:黒法師(サンシモン)、夕映え、サンバースト、レモネード、ドドランタリス
コチレドン:熊童子(熊の手)、ふっくら娘、福娘、福だるま、ペンデンス
など
メセン類
コノフィツム、帝玉、リトープス、レーマニーなど
増やす時期(適期)
多肉植物を増やす時期は、その種類の生育型によります。
春秋に主に生育する春秋型は3~5月か9~11月頃に、夏を中心に生育するタイプは4~6月頃に、冬の涼しさで生育する冬型は9~11月頃か3~4月に行います。
夏型・冬型は真夏や真冬に株分けしたほうがうまくいきそうですが、実際には1~2月のような厳しい寒さの間や、7~8月の一番暑い時期は避けて行います。
また、できる期間はたとえば春秋型で3~5月というように長い期間ができますが、最適なのは生育期に入った頃か、その少し前がベストです。
ただ増やし方によって多少異なる場合があるので、詳しくは各増やし方ページをご参照ください。
増やす時に大切なポイント
- 時期を守る
- 清潔な土と道具を使う
- 発根まで水やりしない
- 茎をカットしたら原則乾かす
- 半日陰で管理する
時期を守る
多肉植物を増やす時はその多肉植物の生育期に行います。生育期は生育が旺盛で根が出やすく失敗が少ないですが、休眠期は根が出るのが遅かったり腐ってしまったりと、失敗する確率が高くなります。
清潔な土と道具を使う
根や茎をカットする際は切り口から病原菌が入るのを防ぐため、ハサミやピンセットなどを火であぶって殺菌しましょう。また病害虫が発生しないようにするため土は新品のさし芽用土など清潔なもの、雑草の種などが入っていないものを使いましょう。
茎をカットしたら原則乾かす
挿し穂用に茎をカットした場合は、一部例外があるものの基本はすぐ土に挿さないで切り口を乾かします。これは茎の切り口から細菌が入ったり腐ったりするのを避けるためです。
半日陰で管理
さし木の後はしっかり根が出るまで日なたに出したりせず半日陰で管理します。
病害虫をチェックする
根を分けていくタイプの株分けでは、株分けと同時に根に病気や害虫が発生していないかチェックしましょう。
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必要なもの
- 清潔な土(新品の用土か、使用済みならリサイクル処理済みの土)
- 鉢
- スコップ
- 割り箸
- ハサミ
- カッター
株分けに適した土
用土は日頃使っているものと同じで構いません。
元々植えていたような使い回しの土でも構いませんが、根ジラミなどの点検と、元肥を入れる、根のくずを取り除いておく、などのリサイクル処理は行ってから使いましょう。
もし適当な用土がないときは、水はけがよく適度な保水性がある「花ごころさぼてん・多肉植物の土」がおすすめです。
Q&A
葉や挿し穂はどこに置いたらよい?
葉挿し用の葉や挿し木用の挿し穂は強い日差しや乾燥に弱いので、必ず半日陰で管理します。また葉挿しは2ヶ月~半年程度の長期間かかるので、その間にカリカリに乾燥しやすいです。そこでできれば戸外の風通しの抜群な所より、室内の明るい窓辺などに置いておくほうがベターです。
直射日光下(元の置き場所)に置けるのは、根がしっかり付いてからになります。
だんだんシワがよったり乾燥してきた
多肉植物の枝や葉から根が出るまでには時間がかかり、その途中でシワがよったり乾燥が気になったりする場合があります。しかしシワシワになってくる頃に根が出て水をやれる時期が来ますのでほとんどの場合大丈夫です。
なかなか根や芽が出ない
多肉植物の中には成長速度が遅くなかなか根や芽が出ない種類もあります。しかし葉や茎に溜められた水分で発根してきますので、焦る必要はありません。ただし生育期以外(真冬・真夏)に行うと生育期より根や芽が出る速度が遅くなったり、最悪の場合力尽きて枯れてしまうことがあるので、適期に行うことが大切です。
カランコエは葉挿しできないと聞きましたが…
カランコエは実は葉挿しできる種類とできない種類があります。カランコエ属というくくりですが、個別の種類によって月兎耳や胡蝶の舞はできるがデザートローズやカクレイはできないなど違いがあります。
同様の違いはセダム、クラッスラ、ハオルチア、などでもみられます。
そのため、増やしたい種類が葉挿しできるかどうかは個別に調べる必要があります。
斑入り種を斑入りのまま増やしたい
斑入り種の繁殖は少し複雑で、葉挿しにすると斑が入らなかったり、挿し木すると元の株から出た新芽の斑の入り方が変わってしまう、など思い通りにならないことがあります。この対策方法は残念ながらありません。
また完全に斑入り(全斑)のものは挿し木や葉挿しにしても、長く育たないことがあります。
太根・細根タイプとは?
多肉植物は大きく分けて真っ白の太い根が生えるタイプと、髪の毛のような微細な根が生えるタイプがあります。以下はそれぞれの例です。
※属によっては種類によって同じ属でも、太根タイプと細根タイプが分かれることがあります。
太い根タイプ
セネシオ属やハオルチア属、アロエ属、アエオニウム属などは中心となる太い根をなるべく切らないように、またすぐ水を与えます。茎を切ったときも乾かさずにやや湿った用土に挿すことが多いです。
(太い根タイプの例)左からハートカズラ・セネシオ銀月・ハオルシア
細い根タイプ
エケベリア属、セダム属、カランコエの一部など多数の種類は根を切った場合、すぐ水やりをせず乾かすことが多いです。
(細い根タイプの例)左からセンペルビウム・カランコエ唐印・パキフィツム星美人
※どちらも枯れた根は取り除きます。枯れているか判別が難しい場合は、軽く引っ張ってみてください。枯れた根はすぐ取れたり中が空洞になってフカフカしています。
多肉植物の増やし方のまとめとコツ
- 多肉植物は主に株分け・挿し木・葉挿しで増やせる
- 種類によっては根ざし・胴切り・縦割りもできる
- 多肉植物は種まき(実生)という増やし方もできる
- 種類や目的に応じて最適な方法を選択しよう
多肉植物は普通の植物と同じように栽培の楽しみがありますが、さらに増やすという別な楽しみ方もあります。多肉植物は生命力が強く簡単に挿し木や葉挿しが可能です。お気に入りの種類はたくさんあると嬉しいもの、ぜひ色々な増やし方にチャレンジしてみてください。