目次
パキフィツム属の写真
月美人・星美人 | 桃美人 | グラウクム |
紫麗殿(シレイデン) | 群雀 |
パキベリア属の写真
月下美人 | 霜の朝 | |
基本情報
科 | ベンケイソウ科 |
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属 | パキフィツム属(Pachyphytum) パキベリア属(Pachyveria) |
生育型 | 春秋型 |
育てやすさ | 育てやすい |
成長速度 | 遅い |
増やし方 | 葉挿し〇、挿し木〇、株分け〇 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | やや弱い |
耐寒温度 | 5℃ |
実測温度 | 0℃~40℃ |
原産地 | パキフィツム(メキシコ) |
※4段階評価
育てやすい–普通–やや難しい–難しい
成長が早い–普通–遅い–とても遅い
耐寒性-強い・普通・やや弱い・弱い
耐暑性-強い・普通・やや弱い・弱い
※耐寒温度は水やりを控えた場合の目安値(書籍などによる推奨値)で、状況によりこれより狭くなることがあります。
※実測値は半日陰の場合で直射日光下ではこれより低くなります。
特徴
多肉植物の中でも特に分厚い葉をもつグループで、メキシコの高さ600~1500mほどの地域に自生しています。原種はたった20数種類しかなく、国内でも流通している種類数もそう多くはありません。しかし星美人や月美人、オビフェルムなど人気の高い品種が多いです。名前のPachyphytumはギリシャ語の「厚いpachys」と「植物phyton」という語から来ています。近年も人気がありますが、実は明治時代から栽培されている歴史のある多肉植物です。
生育速度はゆっくり
パキフィツムは成長がかなり遅い方で一年に数枚しか葉が出ず、成長が止まっているようにさえ感じられます。葉挿しで育てるにも時間がかかり1年間で2cmくらいにしかなりません。寒くなる紅葉して白い粉を通して肌が赤色~紫などに変わって美しいですが、粉は取れてしまうと再生しないので植え替え時などにうっかり触らないように注意しましょう。
パキベリアについて
パキフィツムは自然界にもともと生息している原種です。いっぽうパキベリアはパキフィツムとエケベリアを人工的に交配して作られた交配種です。パキベリアは親のどちらかがパキフィツム(またはパキベリア)なので、パキフィツムの性質を受け継いでおり、パキフィツムとほぼ同じ要領で育てることができます。
育て方のコツ
- 真夏・真冬は水やりを月2回など少なめにする
- 春秋の生育期は土が乾いたら10日に1回程度たっぷり水を与える
- 冬は3℃を切ったら室内などに取り込む
- 一年を通して雨ざらしにせず、風通しを心がける
- 夏の暑さにやや弱いため、できるだけ涼しい所におく
育て方
日本では春と秋に成長する「春秋型」として栽培します。栽培上の注意点は大きく分けて2つあります。1つ目は高温と多湿に弱いことです。日本の夏は高温の上に湿気が多いので、水やり回数を減らし風に良く当てできるだけ涼しい所に避難させて蒸れ・根腐れを防ぎましょう。
2つ目は置き場所です。雨ざらしにすると多すぎる水分で徒長するほか、パキフィツムの粉の美しさが台無しになってしまいます。また夏は特に葉がもげやすくなっているので丁寧に取り扱いましょう。
年間栽培カレンダー
生育型 | 春秋型 |
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生育期 | 3~5月と9~11月 |
休眠期 | 12~2月 |
緩慢な時期 | 6~8月 |
水やり |
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置き場所 |
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植え替え |
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増やす |
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肥料 |
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開花 |
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※栽培カレンダーはあくまでも目安です。実際は土や鉢の種類、地域によって大きく異なります。この表は福岡県平野部で多肉植物用の棚を使って育てている場合の情報です。お住まいの地域や使っている土、置き場所によって適宜読み替えて下さい。
主な種類名
パキフィツムの種類
星美人 (ホシビジン) | Pachyphytum bracteosum |
月美人 (ツキビジン) | Pachyphytum oviferum cv. |
月花美人 (ゲッカビジン) | |
グラウクム | |
紫麗殿 (シレイデン) | |
フーケリー | |
桃美人 (モモビジン) | |
青星美人 (アオホシビジン) | |
ガンゾー | Pachyphytum ‘Ganzhou’ |
ベビーフィンガー | Pachyphytum ‘Baby Finger’ |
フレーベル | Pachyphytum glutinicaule |
ウェルデマニー | Pachyphytum werdermannii |
キムナッチー | Pachyphytum ‘Kimnachii’ |
コエルレウム | Pachyphytum coeruleum |
ビリデ | Pachyphytum viride |
千代田松 (チヨダノマツ) | Pachyphytum compactum |
パキベリアの種類
立田(タツタ) | Pachyveria scheideckeri |
霜の朝 (しものあした)(オビフェルム × カンテ) | Pachyveria ‘Powder Puff’ |
都踊り (みやこおどり) | Pachyveria ‘clavifolia’ |
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育て方のポイント
パキフィツム、パキベリアは普通に育てている限りでは正直なところ差は感じられません。どちらも分厚い葉を持ち、長い期間水やりをしなくても枯れない強さがあります。
反面、水のやり過ぎで身割れ(葉に裂け目が入る)を起こしたり、夏の暑い時期に蒸れて腐ったり、凍結で枯れやすい弱点があります。他のベンケイソウ科の多肉植物に比べ、水やりをさらに少なくするとうまくいきやすいと感じます。
水やり
パキフィツム、パキベリアは多肉植物の中でも乾燥に強いタイプなので水やり回数はとても少ないです。しかし植物ですから全く与えないと枯れてしまいます。そこで土が鉢の中までカラカラになり、鉢を持った感じもとても軽くなって、さらに数日経ってから水をやるようにします。鉢が乾いたらすぐ水を与えていると、葉に水分が溜まりすぎてしまいます。
また環境により水やりの頻度や1回当たりの量はかなり変動するため、以下の情報はあくまで目安としてお考えください。土が乾いていなければ無理に与えず、乾くまで待ってください。
生育期の水やり(3~5月、9~11月)
土が乾いたら目安は10日に1回ほど、鉢内が充分湿るぐらい水をやります。この時期は新しい葉を出すために他の時期より水分を多く必要とします。もし土が乾いていなければ無理に与えないでください。
梅雨・秋雨の時期
6月の梅雨時や秋雨の時期は多湿で土が乾きにくくなっているため、生育期より頻度と量を減らします。そこで概ね2週間に1回程度にします。
半休眠時の水やり(7~8月)
月に1~2回程度、鉢の深さの半分が湿るぐらいの量を与えます。この時期は暑さのため生育が鈍くなっていますし、土に水気が多い状態が続くと日中に根が煮えて根腐れ、茎腐れを起こしやすいです。水やりはできるだけ涼しい日に、夕方から夜間に行い1回の量も減らします。
休眠時の水やり(12~2月)
月1~2回程度、鉢内を軽く湿らせる程度にします。この時期は寒さで生育が止まっているので、ほとんど水やりが必要ありません。できるだけ暖かい日の暖かい時間帯(午前中~昼間)にごく少量を与えます。また5℃以下の日が続く時は冷害を避けるため水を与えないようにします。
夏と冬はかなり水やりが少なく、枯れてしまうのではないかと心配になってしまいます。しかしパキフィツムは分厚い葉の中に水を溜め込み、その水分を使って生き延びることができます。そのような時期に備えて生育期に水をしっかり与えているといってもよいほどです。
植物は体内の水分が少ないほうが寒さ・暑さに強くなる傾向があるため、夏場、冬場は耐寒性・耐暑性をあげるためにも水やりを減らすことが大切です。
冬に室内で育てる場合は?
パキフィツムは寒さにそれほど強くないため、寒冷地などでは冬の間ずっと室内にいれていることがあります。その場合、部屋が暖かいと水を吸い、土が乾きます。もし植物育成ライトがなく暗い環境に置いている場合は、水やりは少なめにしないと徒長してしまいます。植物育成ライトなどで充分明るさが確保できる場合は、2週間に1回など、頻度少なめで水やりを続けます。
置き場
パキフィツムは日本より気候が穏やかで温度変化の少ないメキシコの標高の高い所に棲息する多肉植物のため、日本では置き場所の工夫が必要です。原生地は雨がとても少ない所なので年間を通して雨ざらしにはしないようにします。そして風通しが悪くならないように気をつけましょう。
以下は屋外栽培の場合の方法です。
いずれも雨ざらしにせず、簡易ビニール温室などにいれて雨の日はビニールの窓を閉めるようにします。
4~5月
直射日光が強すぎるので30%遮光ネットを張り、4月も末になれば50%遮光ネットに張り替えないといけません。
6~9月
日差しが強すぎるため50%遮光ネットを張るか、明るい日陰(半日陰)に移動させます。
10月
その年の暑さや天候を加味して初旬~中旬に50%遮光ネットから30%遮光ネットに張り替えます。10月末には気温が低い場合遮光ネットは不要になってきます。
11~3月
11月にもなれば日差しは大変弱くなり、日なたでしっかり日にあてることが大切になります。そのまま2月まで直射日光下で栽培します。3月末には日差しが強くなるため、30%遮光ネットが必要になる年もあります。この間1℃(できれば3℃)を下回る場合は室内に取り込みます。
その他の注意点
外に置く場合はほとんど意識しなくてよいのですが、寒さなどで室内に長く置く場合は風通しに気をつけましょう。無風の状態が2週間以上続くと突然葉が腐って落ちたり、茎が根元から枯れて再生できなくなることがあります。
またあまり暖かすぎると徒長(ヒョロヒョロになる)するので暖房が効いた部屋(目安は15℃以上)にはなるべく置かないようにします。
耐暑性と最高気温・夏越しの方法
耐暑性は普通~やや弱いです。35℃以上の高温にさらされると葉が落ちやすくなり、実際にポロポロと取れてしまうことがあります。
しかし現在の日本の環境で夏35℃を超えさせないようにすることはかなり難しいです。そこで遮光ネットを張って置き場所の温度を下げ、直射日光を遮ります。そうすれば40℃程度はまずまず耐えることができます。ただ運悪く腐敗菌が根や茎の傷口などから入ると突然茎が青黒くなって枯れてしまいます。
夏の管理
安全な夏越しには水やりをかなり控えるのがポイントです。3~5月の生育期にしっかり水を与えていれば葉に水分が溜め込まれているので、月に1~2回程度の少ない水やりでも水不足になることはありません。
その他、遮光ネットを張るか明るい日陰に移動して、直射日光と同時に熱を遮ることが大切になります。残念ながら直射日光の当たる所にある簡易温室は上の段にいくほど温度が高くなり、最上段では最高40℃を超えます。そのため、なるべく下の方の段に置いて、ビニールカバーも全開にします。
また斑入り種は特に暑さに弱いので、場合によっては室内に一時的にいれないといけない場合もあります。室内でも突然腐ることがありますので、室内ではとにかく強制送風(扇風機で風を送る)を怠らないようにしましょう。
越冬最低温度と冬越し方法
寒さにもやや弱く、最低越冬温度は5℃とされます。しかし実測上、1℃~3℃も一応耐えています。(一晩夜に下がる場合で、寒冷地のように一日中0℃近くまで下がった場合の影響は未検証です。)
そこで1℃の予報が出たら室内に取り込むのを目安にしたらよいかと思います。
冬の管理
屋外の場合
外で育てる場合は、できるだけ簡易ビニール温室にいれて雪、冷たい雨、冷風を避けるようにしてください。寒風にさらすのと簡易ビニール温室でよけるのでは傷み具合がましになります。
ただ、簡易ビニール温室の極薄いビニールには保温効果はほとんどないため、1℃の予報が出たら室内にいれるようにしてください。(斑入り種は3℃程度)
※実際に簡易ビニール温室の庫内の温度を計測したところ、日没から1~2時間は数℃は外より温度が高かったですが、20:00にもなると外と全く同じになっていました。
室内の場合
関東以南で寒波の時に室内にいれるだけであれば、何も問題はないのですが、寒冷地などで月単位で室内で栽培する場合、深刻なのが日照不足です。暖かい室内では一日4時間は直射日光に当てたい所です。それが無理であれば植物育成ライトを当てないと日を求めて伸びる「徒長」を起こしてしまいます。
また暖房による温度の上がりすぎ(目安は15℃以上)、乾燥のしすぎに注意してください。パキフィツムともなると粉はげから葉水ができないので、できるだけ(温度・湿度が)外の状態に近く、かつ日が当たる部屋が望ましいです。
寒冷地での寒さ対策
寒冷地では夜間暖房のいれていない部屋では、室内が0℃以下になることがあります。
夜間に室温が下がりすぎてしまう場合は、植物ヒーターマットが役立つ可能性があります。植物用ヒーターマットとは、防水性があるホットカーペットのようなもので、上に鉢を置いて温めるものです。(室温プラス5℃~10℃)
夜間は特に温度が下がるため、段ボール箱をかぶせるなどすればダンボール箱内が暖かく保たれます。
参考までに植物ヒーターマットと植物育成ライトの詳細ページを掲載しています。
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増やし方
パキフィツム、パキベリアは挿し木、葉挿し、株分け、(原種は種まき)で殖やすことができます。
増やす時期は生育期の3~5月、9~11月が適しています。他の季節ははできないわけではありませんが、休眠中は根が出ないなどのトラブルが起きやすいため避けた方が無難です。
挿し芽(挿し木)
挿し木(場合によっては胴切りの形となることも)で増やすことができます。
挿し木は親株から茎をカットするか、根のない子株を取ってそこから根を出させて増やす方法です。
手順
まず親株から5cm程度茎を切り取り、下の方についている葉をもぎとり根が出やすいようにします。そして切り口、葉のもぎ口を3~4日乾かします。乾いたら乾燥した用土に挿します。
発根するまで2~3週間かかるので気長に待ち、根が数ミリ出たら水やりを開始します。いきなり鉢底から流れ出るまで与えたりせず、最初は少なめに徐々に増やしていきます。根が出るまで半日陰で管理し、直射日光に当てないようにします。挿し木から最低1ヶ月の根付くまでの期間は日に当てず、徐々に元の置き場所に戻していくようにします。
カットした親株からは葉の付け根付近から2ヶ月程度で脇芽が出てきます。
胴切りとの違い
※もし親株に1本しか茎がない場合は「胴切り」になります。胴切りとは、メインの幹を水平にばっさり切り、切り取った所はさし芽をして根を出させ、残った枝からは複数本の脇芽を出させる方法です。これは芯止め(これ以上長く伸びないようにてっぺんを切り取る)と同じです。
株が順調に生育しているのであれば、胴切りを行う必要はありませんが、徒長させて形が崩れてしまった場合などは胴切りで復活させることができます。
葉挿し
葉挿しもパキフィツム、パキベリアの一般的な増やし方です。
パキフィツムやパキベリアは葉がポロポロと取れやすいため、葉挿しに適しています。親株から葉をもぎとるほか、知らぬ間に落ちた葉が勝手に葉挿しになっていることもよくあります。
手順
まず親株から下の方の大きめの葉をもいで、トレイなどに並べて置いておきます。場所は直射日光が当たらない明るい日陰です。1ヶ月ほど経つと根や芽が出てきますので、そうしたら土の上に移動させます。もぎ口を土に埋める必要はありません。次第に新芽が大きくなり、親葉が薄く色も薄くなってきます。
新芽が5mm程度まで育つまで4ヶ月程度、完全に親葉の水分が子に移るまでに8ヶ月程度はかかります。最初の水やりは親葉がカリカリに乾いたときです。そのため葉挿し開始から半年間は水をやらないことになります。また完全に親葉が枯れるまで直射日光に当てず、明るい日陰(半日陰、50%遮光下)に置くようにします。
※斑入り種は葉挿しだと出た子株に斑が入らないなど、うまく親の形質が受け継がれないことがあります。
株分け
数年間育てて群生した株は株分けで増やすこともできます。
株元から脇芽が出てきた場合や、胴切り後に新芽が吹いてきた場合、それを取って土に挿すことで子株を増やすことができます。株分けでは、分けたい茎が土から出てきている場合は、一旦掘り起こして根をつけて分けますが、地上部から出てきている場合は掘り起こさずに茎をカットするだけで大丈夫です。
根をつけて株分けできた場合は、植えつけてすぐに水をやって構いません。ただ1週間程度は直射日光に当てずに日陰で養生させます。茎からカットした場合は、挿し木の要領で切り口を乾かしてから乾いた土に挿して、根が出てから水をやるようにします。
種まき(実生)
また原種では種まきもできます。
詳しい方法はエケベリアのページをご参照ください。
植え替え
株が大きくなり鉢が小さくなってきた場合や、根詰まりを起こした場合は植え替えを行ってきましょう。
植え替えも株分けと同様に生育期の3~5月、9~11月に行います。(ベストなのはこれから生育過程に入るという3~4月または9~10月で、暑い時期・寒い時期は根が伸びづらいので避けるようにしましょう。)
パキフィツム、パキベリアは生育がそれほど旺盛ではないので1~2年に1回ですみます。しかし小さな鉢のうちは(目安は口径9cm鉢以下)1年に1回は植え替えて鉢を段階的に大きくしていくことが大切です。
植え替えは鉢を大きくして苗を大きくするのはもちろんですが、枯れた根を除去したり、団粒構造が壊れたカチカチの土をやわらかい土に変えるなどの効果があり、大切な作業です。
手順
植え替えは水やりしたてだと土を落とすときに根が切れてしまうので、やや乾燥させた状態で行います。
株を鉢から抜きだして土を落としていきます。この過程で茶色く枯れた根は落とし、鉢底にへばりついている細い根なども取り除きます。そして根の長さの3分の1程度はハサミで切り詰めます。
引き続き大きく育てたい、群生させたいという場合は今まで植わっていた鉢より一回り大きな鉢に植え付けます。今までのサイズを維持するかあまり大きくしたくない場合は、これまで植わっていた鉢に植え戻します。
この時土には緩効性化成肥料を2つまみほど混ぜておくとよいです。
植え付けたらいつ水をやるかですが、悩むところですが、根を少々切った程度であればすぐに与えてしまって問題ありません。管理人は植え替え後、多くの種類ですぐ水をやりますが、それが原因で腐って枯れたということはほとんど無かったように思います。
土と鉢
パキフィツム、パキベリアは葉に水を溜め込む習性があるので、水はけがよく通気性がよい土が適しています。また土の細かさですが、細かいほど保水性が強まるので、適度に粗めのものが望ましいです。
花や野菜の土など通常の培養土では、水はけが悪く根腐れを起こしやすいので、避けた方がよいです。
市販の多肉植物用土
ホームセンター、園芸店、通販のアマゾンなどにはたくさんのメーカーの多肉植物・サボテン用土が販売されています。必要な量が少なかったり、手軽に栽培を始めたいという場合は、このような土を使うと良いと思います。
注意点は成分(土の素材)、粒の大きさ、土の重さなどです。土は複数素材が使われているものが望ましく、赤玉土、鹿沼土、日向土などがベースになっていて、適度に軽石や腐葉土などが入っているものがよいです。
粒サイズは小粒程度で細粒・大粒過ぎるのは避けましょう。また軽すぎる土は苗の重みでぐらぐらしやすく、重すぎる土は根を潰しがちになります。
参考までに、以下で市販の多肉植物・サボテン用土を比較・紹介しています。
オリジナルに配合する
自分でブレンドする場合は赤玉土、鹿沼土(いずれも小粒)、ボラ土、くん炭やピートモスなどを混ぜ合わせます。土には種類により特性(水はけ・水持ち、通気性、酸性度など)があります。全部鹿沼土などではなく3種類以上の土を混ぜ合わせるのが理想です。
(例)赤玉土1:軽石1:ピートモス1
(例)赤玉土2:鹿沼土2:ピートモスか腐葉土1:川砂1:くん炭1:パーライト1 など
また、パキフィツムにおすすめな配合というのは無く、ベンケイソウ科であれば(アエオニウム、エケベリア、セダムなど)毎回別の配合にするより、同じ配合の土を使った方が、水やりの頻度や量などが管理しやすいです。
みじんを抜く
また土を使う時は必ず「みじん」を取り除いてください。みじんとは細粒化した小麦粉のような細かい土のことで、根の呼吸を阻害したり水はけを悪くしてしまうデメリットがあります。通常、土袋の下の方に溜まっているので、そこを取り除けば大丈夫です。
鉢底石は必要か?
パキフィツム、パキベリアは小型の鉢(9cm以下)に植えることが多いので、正直そのサイズであれば鉢底石はなくても大丈夫です。また鉢底石をいれる場合は赤玉土、鹿沼土の大粒を利用するのではなく、軽石などみじん化しにくい材質のものを使うようにしてください。
鉢の選び方
苗サイズに応じて鉢サイズを変える
パキフィツムは特に鉢を選ばず、エケベリアやクラッスラと同じような鉢を流用できます。
鉢にはプラスチック鉢や陶器製の鉢などさまざまあり性質が異なりますが、正直どれにでも植えられます。ただ、プラスチック鉢に植えるのと陶器の鉢に植えるのでは、水やり頻度など扱いが少々異なります。(陶器製の鉢は多孔質で水分が乾きやすいので、水やり頻度はプラスチック鉢より多いです。)
それより大切なのが、その苗サイズにあった鉢サイズを選ぶことです。葉挿ししたてで極小さな苗には小さい鉢が適していますし、大きな苗にはそれなりの鉢サイズがないと根詰まりしてしまうことがあります。
生育段階に応じて、鉢サイズを変えていく(大きくしていく)ことが大切です。葉挿しでできた小さな苗を植えるのに大きな鉢敷かない場合は、1鉢に複数苗を植えることをおすすめします。
おすすめの鉢
家にある普通の植物用の鉢は5号鉢など(直径が15cm)大きなものが多いと思います。これはパキフィツムには少々大きすぎます。大きすぎると鉢の底の方に水分が溜まり、水はけが悪くなってしまいます。
そのため多肉植物用にプラ鉢を買うことになると思います。ご家庭に2~3号鉢(6~9cm)など多肉植物に適したサイズがない場合、日本ポリ鉢販売の「プレステラ」という鉢を準備しておくと良いと思います。これはスリット構造で多肉植物に適した7.5cm程度のサイズの鉢で、パキフィツム以外に色々な多肉植物に使い回すことができます。
肥料
パキフィツムは肥沃ではない山の乾燥地帯に育つため、普通の植物のような大量の肥料は要りません。しかし鉢植えでは天然成分(動植物の死骸や雨、土壌から補われる肥料分、ビタミン、ミネラルなど)が補われないので、微量要素や肥料分が不足する場合があります。
そこで植え替え時に土に緩効性化成肥料(マグアンプK小粒など)を混ぜ込んだり、生育期の3~5月、9~11月に月2回液肥(液体肥料)を与えます。
施肥の例
植え替えをする年には、植え替えの際に土にマグアンプK小粒などの緩効性化成肥料を2つまみほど混ぜ込んで元肥とします。
植え替えない年は、生育期にハイポネックスや花工場原液などの希釈水を、水やり代わりに与えて追肥とします。
どちらか一方でよく、両方与えると肥料の多すぎになってしまうことがあります。
また、ビタミンやミネラル、植物が育つのに必須の元素が不足する場合は、植物活力剤や微量要素入りの肥料を与えてあげましょう。
※元々肥料が入っている(元肥済み)多肉植物用の土に植える場合は、植え付けてから1年間は追肥する必要はありません。
パキフィツムの花
パキフィツムは冬に花芽がつき、春に花を咲かせます。だいたいエケベリアと同じような感じですが、12月~2月に成長点に近い部分から突然花芽がでてきて、じっくり時間をかけてつぼみを膨らませ、3~4月頃開花します。
花を咲かせる(つぼみをつける)コツは春・秋・冬にしっかり日光に当てることと適度に水やりすることです。日光不足で徒長した株には花芽がつきませんし、水やりをあまりにも減らしていると、花が咲かないことがあります。
病害虫
パキフィツムはあまり病害虫は心配ありません。しかし庭などでは他の植物についた害虫が飛んできたり、病気がうつってしまうことがあります。
害虫対策
比較的つきやすいのがカイガラムシ、ネジラミ、ナメクジなどです。葉の裏の付け根に白いものが付いていたらカイガラムシの可能性が高く、爪楊枝などで1つずつ取り除かないといけません。
生育が悪いと思ったら根にネジラミ(サボテン根コナカイガラムシ)がついていることがあるので鉢から抜き取って土をほぐし根を点検してみましょう。オルトランなどの一般的な殺虫剤が効きます。
病気対策
病気は特に心配ありませんが、他の種類が病気を起こしやすい5~9月は罹患した鉢から移らないように注意が必要です。
生理障害
生理障害は割と起こしやすいです。まず高温多湿環境では、根腐れや茎腐れを起こさないように注意しましょう。特に水やりをしすぎたときに起こしやすいです。風通しにも注意が必要です。
夏5月から9月の間は必ず遮光ネットを張るか、半日陰に移動させるなどして、直射日光と熱で溶けないように気をつけましょう。
また生育旺盛の時は、水やりによって身割れ(葉の水分が多くなると表皮の発達が追いつかなくなり、突然割れ目ができてすまう)が起こりやすいです。
一方冬には寒さに注意が必要で、夜間0℃を下回ったり、凍結させたりしないように温度管理を行いましょう。
販売店や値段など
パキフィツムやパキベリアは多肉植物の中でも特に人気の種類で、多肉植物専門店でない園芸店や、ホームセンターなどでも時折並んでいることがあります。
比較的よく見かけるのが、パキフィツムの星美人(月美人)、桃美人、群雀、パキベリアの霜の朝などです。
購入する際は、葉と葉の間隔が伸びて徒長していないもので、しっかり色づいているもの、締まった姿をしているものを選びましょう。逆に水やりでずっしりと重い鉢や、間延びしているもの、屋内なら色があせているもの、弱っているものは避けたほうが安全です。
価格帯は7.5cmポットで330円から550円程度から購入できます。購入する際は小さいかもしれませんが、家に持ち帰りきちんとお世話すれば1年でそれなりに成長するので、サイズよりはよい環境で育てられてきたかを見極めて選ぶことをおすすめします。
通販での購入
ホームセンターや園芸店などの店舗だけではなく、通販サイトでの購入も可能です。
ネット通販では、楽天市場・ヤフーショッピング、アマゾンなどで購入できるほか、フリマではありますがメルカリやヤフオクなどでも購入可能です。
ネット通販のメリットはいつでも好きなときに購入できること、色々な種類から選べることです。ただ配送の都合上、真夏・真冬の購入は避けて温暖冷涼な時期に注文することをおすすめします。(トラック等で数日間かけて輸送されるため、マイナス温度や高温時は苗がだめになってしまう心配があるためです。)
オンラインショップでも購入できますメルカリでも多肉植物・サボテン・エアプランツ、種子などを多数取り扱っています。 メルカリで新規登録する方は、お友達紹介コードの入力で、メルカリの購入で使える500円分ポイントがもらえます。 よろしければ、下記のコードをお使いください。(キャンペーン時は2,000円分相当ポイントがもらえます)
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よくあるトラブルとQ&A
トラブル事例
葉がポロポロ落ちてしまう
もともと葉が取れやすいタイプですが、夏はますます葉が落ちやすくなります。温度を下げることは難しいことですが、遮光などによってなるべく涼しいところで管理しましょう。
葉挿しからなかなか芽が出てこない
葉挿しの成長速度も遅くてなかなか芽が出てきません。しかしいつまで経っても芽や根が出ないのは失敗している可能性があります。葉挿しは100%成功するとは限りません。根だけ出て芽がでないということもあります。葉をもいでから3ヶ月以上根・芽が出ないものは諦めた方がよさそうです。
粉がはげてしまった
パキフィツムだけでなく、カランコエ、エケベリア、ダドレアなどでも一度取れてしまった粉は再生できません。ただ育て続けると新しい葉が中心から出てきて粉はげの葉は下葉になるのであまり気にならなくなります。
間延び(徒長)する
パキフィツム、パキベリアは成長速度が遅めですが、その割には徒長しやすい種類です。(真夏を除いて)できるだけ日に当てると間延びを抑えることができます。また、水やりが多めだと茎が伸びてしまいやすいので、他の多肉植物よりさらに水やり頻度、量共に減らしておくと徒長を防ぐことができます。また、夏は高温で徒長することがあるので、その場合は30℃以下の涼しい所に置けると最良です。
Q&A
紅葉させるには?
白い粉で覆われているので素肌の色は分かりにくいですが、夏は緑色っぽくなり秋から春にかけてはピンク、紫など素肌も紅葉しています。しっかり紅葉させるには、3~10℃程度の寒さにさらすこと、しっかり日に当てることがとても大切です。水やりを減らすとさらに紅葉させられますが、体力が弱くなり花が咲かないことがあるので、花を楽しみたい場合や子株をつけさせたい時は、減らしすぎには注意が必要です。