目次
多肉植物・メセン類の実生(みしょう)とは?
種から育てることを実生(みしょう)といいます。また種から育てた株自体を実生と呼ぶこともあります。
例:実生のリトープス=株分けではなく種から育てたリトープス
実生には他の育て方にはないメリットがあります。
実生のメリット
- ウイルス病に感染していない健康な株が育てられることが1点目です。葉挿しや株分け、挿し穂ではウイルスが伝染してしまいますが、種から育てると親株からのウイルスが移らなくてすみます。
- コーデックス(茎の下部が太くなる多肉植物)の本来の形が育ちます。挿し木では茎の下部の膨らみが出ないので、本来の形に育てたいなら種まきしか方法がありません。
- 1回の種まきで大量の株を育てることができます。
※デメリットとしては、大きくなるまでに数年など時間がかかること、種が小さくて扱いづらい、カビ対策や独特の水やりの難しさがあることなどがあげられます。
※生育が遅いというのは元々の生育が遅いメセン類やコーデックスだからであり、他の成長の早い多肉植物(例えばアナカンプセロスの桜吹雪)などでは1年でかなり成長します。
実生に必要なもの
- 種をまく鉢
- 鉢をすっぽりいれられる容器
- 土の消毒用の鉢
- 細かい種まき用の土
- カビ防止用の殺菌剤(ベンレート)
- 爪楊枝
- ラップ
- 消毒用の湯1L~
- 霧吹き
その他、土の消毒に使う鉢の底にしいて土が流れてしまうのを防止するための「鉢底網」、土のかき混ぜ・プレステラへの盛り付け用の「スプーン」、土を混ぜるための「丈夫で透明な袋」、お湯を注ぐ「オタマ」、ベンレートを水に混ぜるための「2L空きペットボトル」、土のph(酸性度)を測るための「PH試験紙」などが必要でした。
このページでは誰もが入手しやすく安価な器具として、1番の種を撒く鉢には「プレステラ90」というプラスチック鉢を、2番の鉢をすっぽりいれられる容器には2Lのペットボトル飲料の空きボトルを、3番の土の消毒用の鉢には「4~5号程度(直径12~15cm)の大きさの新品の素焼きか駄温鉢」を使っています。
また、管理人は適当な種まき用の土が入手できなかったので自分でブレンドしました。また鉢の上部と底部では異なる土を入れました。底部は3cmほどボラ土小粒を敷き、上部は細かくて水はけが良く、それほど重くない土として、ピートモス3:パーライト1:バーミキュライト1:くん炭2:鹿沼土1:ボラ土2をブレンドしました。
費用と入手先の参考
用具の解説
- 種をまく鉢は、土をいれてリトープスなどの種をまきます。
- 鉢をすっぽり入れられる鉢は腰水(鉢を水に浸ける)のために用意します。
- 土は種まき用などの細かい粒の土を用意します。普通の多肉植物・サボテン用の土では目が粗すぎで小さな芽が育ちにくいです。そして土は清潔である事が大事です。古い土の使い回しではなく必ず新品のものを使いましょう。
- カビ防止用の殺菌剤ベンレートは、湿った土にカビが生えないようにするための農薬で、粉を水に溶いて使います。
- 爪楊枝は小さな種をひとつひとつまくときに使います。
- ラップは土を入れた鉢を乾かないように上から覆うために使います。
- 霧吹きは途中で土の上から水やりをするために用意します。
種を採る方法(自分で種をとってまく場合)
花が咲いて果実がカリカリに乾燥したら茎から外します。果実は5角形の形の茶色い物体です。果実が採れたら容器に水を張ってその中に果実を入れます。皮が破れて細かい種がでてきたら、コーヒー用のフィルターやキッチンペーバをしいた味噌こしなどに水を濾過して種をとります。フィルターはそのまま乾かして乾いたらチャック付き袋などに入れ、まき時まで冷蔵庫で保管します。
メセン類の一般的な種まきの具体的な手順
【時期】9月中旬から10月、遅くても10月末までにまきます。
夏は高温多湿なので避けますが、寒くなりすぎるとその後の成長が遅れ夏が越しにくくなるので秋口がよいとされています。気温は20℃くらいに下がった頃が安全です。30℃近い9月暑い地方は、発芽した芽も溶けてしまうことがあります。なるべく1回目の夏越しまでに大きく成長させるため、秋になって気温が下がりしだい実生を開始した方が良いですね。
①準備
カビ防止のため、鉢や鉢を入れる容器など、洗えるものは全て洗いましょう。
②土を消毒する
とにかくカビが生えやすいので消毒できるものは全部消毒します。
土の消毒方法はいくつかありますが、割れない鉢に鉢底ネットを敷いて土をいれ上からお湯をかける、レンジ対応容器などに土をいれて湯気が出るまで加熱する、などのどちらかを行った後にベンレート1000倍溶液を使って消毒します。ベンレート1000倍溶液は土に水代わりに土にかけてよく、また鉢をつけるための腰水の水にそのまま使ってOKです。
③土を入れる
底から表面まで種まき用の土をいれてもいいですが、鉢底から中央ぐらいまでは、粗めの普通の多肉土を使ってもOKです。この場合も土を消毒します。重要なのは種が根を伸ばす表面の土には、目の細かい土を使うことです。そして土が入っている鉢を腰水用の鉢にいれ、鉢が1.5cmくらい水に浸かるようにします。
④種をまく
土が冷えたのを確認してから、種を土の表面にのせていきます。内部が熱いことがあるので土は充分に冷やします。日光がないと発芽しないので、種の上に土をかぶせません。このとき先を濡らしたつまようじを使って撒いてもバラまきしても大丈夫です。種を撒き終わったら表土が乾かないようにラップをかぶせます。
⑤発芽から小苗までの管理(0日~2ヶ月目)
発芽までの日数は種類によって異なり、また同じ種類の種でもばらつきがあり、最大1ヶ月ほどの幅が出ることもあります。採りまき(蒔く年に採取したもの)では2ヶ月かかることもあります。芽が出ないからといってすぐに諦めないようにしましょう。発芽するまで腰水の水を切らさず、途中表土に霧吹きをします。発芽後も腰水を絶やさないように気をつけましょう。発芽した幼い芽は乾燥に弱いので、最低1~2ヶ月はラップを外さず、始終土がしっとり濡れている状態にします。発芽したら鉢は半日陰(50%遮光)に置きます。暗い室内などに置いたままだと、ひょろひょろになってもやしのようになってしまいます。2ヶ月ほどして、苗が3-5mmくらいまで成長したらようやくラップを外し腰水も徐々にやめていきます。
⑥2ヶ月目~12ヶ月目
腰水をやめてラップを外したあとも霧吹きで湿度と水分を保ち、親のリトープスやコノフィツムのように断水したりしないようにします。そうして半年から1年くらい育てたら、普通の成苗と同じ管理に移ります。
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当サイトで行った方法
①準備
種撒き用のプラスチック鉢「プレステラ90」に今からまく種の名前ラベルを貼ります。
鉢を浸ける腰水用のペットボトルを腰水に使えるように加工します。2Lボトルを横にして、上部をカッターとはさみ切り取り、プレステラ90が入るかチェックします。
②③土の消毒と土入れ
4号の駄温鉢に鉢底ネットをしいてそこに底用のボラ土を入れます。
鍋で沸かしたお湯をオタマで注いで消毒します。湯気がでるまで何度も注ぎましょう。
湯気が出て充分消毒できたら、スプーンですくってそれぞれの種撒き用鉢(プレステラ90)に底から3cmほど入れていきます。
底用のボラ土が終わったら、上部用の土を消毒用鉢に入れます。
鍋で沸かしたお湯をオタマで注いで消毒します。
湯気が出て充分消毒できたら、スプーンですくってそれぞれの種撒き用鉢(プレステラ90)に上から1.5cmくらいまで入れていきます。
種撒き用のプレステラ90鉢を水につける用のペットボトルに入れ、ベンレート1000倍溶液を上からかけます。
最初に下から出てくる水は黒く濁っているので捨て、また上からベンレート1000倍溶液を入れます。今度は少しきれいになっています。鉢が1.5cmくらいつかるように水を調節します。
PHペーパーが心配なのでPH試験紙でチェックしましたがph7~8程度でOKでした。(中性)
④種をまく
土が冷えたのを確認してから、種を土の表面にのせていきます。
先をほんのり濡らした爪楊枝で1つずつ土の上に置いていきます。
このような形で撒きました。
そしてラップをかけました。
日光がないと発芽しないので種の上に土をかぶせません。
最初の3日は明るい窓辺に置きました。
実生のコツ
- 9月中旬以降の秋に種をまいて、1回目の休眠(翌年の6月頃)までにできるだけ大きく育てましょう。大きく育てることで一番難しい夏越しをしやすくなります。
- リトープスは勝手に受粉しやすいので色々な種類を雑多に植えておくと、色々な交配種ができてしまいます。純粋な種を採りたい場合は、それぞれを離して置きます。
- 成長した大きな株は夏6~9月完全に断水しますが、1回目の夏はまだ小さく乾燥に弱いので霧吹きで水をかけるなど、乾燥対策をします。
それぞれの実生記録(画像)は以下のページに記載しています。
種類別実生レポート
リトープスの実生(1回目2019年9月)
リトープスの実生(2回目2020年9月)
リトープスの実生(3回目2021年9月)
コノフィツムの実生(1回目2021年9月)
帝玉の実生(1回目2019年9月)
帝玉・紫帝玉の実生(2回目2021年9月)
リトープスの1回目の植え替え方法
実生から1年たったら最初の植え替えを行います。その方法についてはこちらで解説しています。上の写真のリトープスを実際に植え替えた例です。
種まき(実生)1年後のリトープスの植え替え方法は?